第33話 心の痛み

まこ「柚月ってば!!どうしたの?」

光希「柚月ちゃん?」


どうすればいい?

あたし視線が、廉から離れてくれない。


柚月「・・・ごめん、大丈夫。」


何人だろう?

廉を含めた男の子三人と、同じクラスメイトの顔ぶれではない、女の子二人。

あたし達から少しだけ離れた、コンクリートで出来た階段に座り、楽しそうに笑っていた。

それでけじゃない。

廉の隣に座っている浴衣姿の女の子。まるでまこが光希さんに向けていた笑顔の様に、廉だけに向けられている可愛らしい笑顔が、とてもキラキラとしていて・・・。

「恋」の感覚と似ている気がして仕方がなかった。


まこ「誰かいたの?」

譲 「彼氏?それとも・・・想い人?」

柚月「え?」

譲 「今にも泣きそうな顔、してる。」

柚月「ご、ごめんなさい!譲さん、具合いが悪いのに余計な事考えさせてしまって・・・。」

譲 「大丈夫。心臓をえぐり取られるような気持ち・・・今の俺だからこそ、柚月ちゃんの痛みを少しは理解出来ると思う。」

光希「まこちゃん。かき氷食べたくない?」

まこ「え?あ、あぁ!そうですね、買いに行きましょう!」

光希「決まり!じゃぁ、ちょっと行って来るね。」


「何か」を悟ってくれたのっだろう。

光希さんとまこがいなくなり、再びあたしと譲さんの二人が残った。

譲さんの言葉で金縛りが解けたあたしは、廉が視界に入らない様、ただ俯く事しか出来なかった。


譲 「不思議だよね。」

柚月「何がですか?」

譲 「転んで出来た傷や痛みは時が経てば消える。でも、心が転んで出来た傷や痛みはいつまでも痛いままでさ・・・。根深く残るんだよね。」


頑張って立ち上がってみれば、知らないうちにまた新しい傷が増えていく。

「答え行きの電車なんてない。」「でも、乗ってみなければ分からない。」


譲 「・・・俺だって、その中の一人なんだよ。」


学校なんかでは、決して学べない授業のようだった。

そして、二度と教えては貰えない、とても貴重な時間に思えた。


柚月「譲さん、ありがとう。」

譲 「え?何が?」

柚月「今日、来てくれて。」

譲 「どうして?俺は自分が来たくてここに来たんだよ?」

柚月「譲さんに会えて良かったです。だから・・・」


「生きて下さい」

自然と涙が流れてしまう。そして、連鎖反応なのだろうか・・・。

譲さんの目からも、同じ涙が流れていた。


譲 「柚月ちゃん。少しだけ・・・、肩を借りてもいいかな?」

柚月「・・・いいですよ。」

譲 「ありがとう。柚月ちゃん、俺・・・」


「俺、死と向き合うのが怖いんだ。」

泣きながらそう呟いた譲さんを、あたしはただ黙って立っている事しか出来なかった。

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