第28話 まこの恋
まこ「柚月、大丈夫?ごめんね、気付かなくて・・・。」
廉 「大食い選手権の練習、早くしろよ。こんな混雑した場所で店員泣かせて・・・オメェらアホなの?」
学生「は?て言うか、お前なんなの?調子こいてんじゃねぇぞ?」
廉 「俺はスーパーマンだ。」
柚月「え。」
まこ「廉君!ウケ狙う所じゃないでしょ!!」
廉 「調子こいてんのはテメェらだろ?待ってる客がいっぱいいるんだよ!!くだんねぇ雑談すんなら外でやれよ。」
まこ「柚月!今のうちにこっちにおいで!早く!」
一触即発の状態。
あたしはまこに腕を掴まれ、店の奥へと連れ戻された。
その後、この現状に気付いた店長が廉達の場所へと向かい、どう治まったのかは分からないが、男子軍団は何やら文句を言いながら店から姿を消した。
まこ「しかし、廉君のタイミングの良さ!!本当にスーパーマンだね!!」
柚月「でも、迷惑かけちゃった・・・。」
まこ「本当はね、あの時実は満席で廉君達待ってたの。空いてる席なんて無かったんだよ。」
柚月「そうなの?だって、まこメニュー表持って案内してたんじゃ・・・。」
まこ「廉君に呼び止められてさ。柚月が絡まれてるの、ずっと見てたみたいで。我慢の限界だったんだろうね。」
「陣内、あの席まで案内して欲しいんだけど。」
廉がまこにそう頼んだらしい。
たまたまかもしれない。絡まれていた相手があたしじゃ無かったとしても、廉は同じ行動を取っていたかもしれない。
でも、それでも嬉しいと素直に思えるこの気持ち。
「あたしはやっぱり廉が好き。」
この想いを、あたしは心の奥にそっと仕舞い込む事にした。
まこ「廉君にお礼、言いにいかなくていいの?」
柚月「うん、いいの。」
まこ「・・・そっか。まぁ、柚月にはあたしがいるからいいでしょ!?」
柚月「勿論!!まこの事、大好きです!!」
クラスメイトと楽しそうにしている廉の姿。
廉の笑顔が見れた。今はそれだけで充分。
いつか、廉が自らあたしと向き合おうと思う日が来るまできっとこの日々が続いていくのだろう・・・。
あたしは深呼吸をした後、ゆっくりと目を閉じ「大丈夫」。
そう、自分に言い聞かせた。
まこ「ところでさ、柚月にお願いがあるんだけど・・・。」
柚月「どうしたの?」
まこ「ここで働いている大学生がいるの。」
柚月「大学生?」
自分の事に必死になり過ぎて、実際バイト先の人達の顔も名前もまだ全然把握しきれて無かった。
でも、いつもまこがやたらと話し掛けている男の人がいるのだけは何となく覚えていた。誰かに似ているが、それが誰なのか確信が持てずにいた人・・・。
柚月「今日、その人いる?」
まこ「まだ。でも、一時間だけ一緒に重なるんだけど・・・。あたしね、その人の事好きになっちゃった!!」
柚月「えっ!!だってこのバイト始めてまだ三回目だよ?」
まこ「人を好きになるのに、時間なんて関係ないの!!凄くカッコ良くて優しいの。柚月お願い!!協力して!!」
柚月「協力って・・・。何をすればいいの?」
まこ「来月の頭に花火大会あるじゃない?それに三人で行きたいの。だから、上手く柚月から誘って!!」
柚月「えっ!あたしから!?そう言うのはちゃんとまこが自分で・・・」
まこ「あたし、自分から好きになった人との恋って絶対実らないの。他に好きな人がいたり、彼女がいたり。いつもその繰り返し・・・。」
「あたしだって、恋に臆病になったりもするんだよ。」
まこはいつもあたしの事を気遣ってくれる。
廉との時だって、普通を装っていてもすぐにまこはそれを見抜いてあたしに寄り添ってくれた。
いつも、どんな時もあたしの味方でいてくれる。
それなのに、あたしは自分の事にかまけてばかりで今までまこの気持ちに寄り添えてあげれていなかった。
「自分を大切にしてくれる人を大切にする。」
とても簡単な事を、あたしは何一つ出来ていなかった。
柚月「分かった!!役不足かもしれないけど、是非とも協力させて頂きます!」
まこ「本当っ!?ありがとう柚月っ!!」
柚月「で、その人の名前は?」
「中山光希」
なかやまこうき。この人物がどんな人なのか。果たして、上手く誘いだせるのか・・・。
こうして、あたしは不出来な恋のキューピット役として、一肌脱ぐ事に決めた。
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