第27話 スーパーマン
柚月「いらっしゃいませ。何様ですか?」
まこ「・・・何で喧嘩売ってんのよ。「何名様ですか?」でしょ!!」
高校に入って初めての夏休み。
あたしとまこはバイトの求人雑誌から見付けた「夏休み限定、短期歓迎」
「高校生大歓迎」というファミレスの条件に惹かれ、すぐに面接をした所、簡単に採用されてしまった。
来店したお客様を空いてる席に案内し、注文を聞いた後出来上がった料理をお客様の席に提供するのが仕事の内容。
が、しかし。家の手伝いとはまるで違い、相手は全くの他人。各席に番号は付けられているものの、数が多すぎて覚えきれない。
どの料理をどの席に運べばいいのか・・・頭が噴火しそうだった。
効率良く、淡々と業務をこなしていく真琴は真逆で、あたしは一人あたふたとしながらなんとか踏ん張っていた。
まこ「柚月、落ち着いて。すぐに慣れるから大丈夫!」
柚月「慣れる前に夏休み終わっちゃうよ・・・。」
まこ「混んでる時は仕方ないよ。しかも、夏休み中だもん。頑張ろ!!」
柚月「そうだ。世間は夏休み中なんだった。」
昼食時。親子連れやサラリーマン、同世代と思われる群れの大群・・・。
あたしの頭はオーバーヒート。それでも唯一「廉」の存在を忘れられる貴重な時間でもあった。
まこ「柚月、あの番号の席に行ける?あたしは料理運ぶから。お願い!」
柚月「う、うん。分かった。」
向かった先は戦いの場。
部活の帰りだろうか?他校のジャージを来た男子生徒五人のお客様だった。
これぞ、あたしの苦手なタイプ・・・。後悔の念に駆られた。
柚月「ご注文の方、お伺い致します。」
言った途端、一斉に注文があちらこちらか飛び交い、戸惑いながらも必死にオーダー入力画面のボタンと格闘するあたし。
とにかく半端じゃない注文の量・・・。
焦るあたしを横に、男子達はニヤニヤしながらそれでも注文を続けて行く。
柚月(う、嘘でしょ?ほぼ全種類・・・。こんなに食べ切れるの?)
延々と続く注文。それに対して聞き漏れやミスがない様に聞き入るあたし。
既に五分は経過していたのではないだろうか・・・。
ようやくその中にいた一人の男子生徒が締めの言葉をあたしに放った。
学生「・・・て、言うのは冗談でぇー(笑)」
柚月「・・・え?」
学生「みんなドリンクバーで!(笑)ねぇ、学校どこ?バイト何時まで?終わったら俺らと花火しようよ!!」
男子生徒の高らかに笑う「ギャハハ」と言う声が、店内に響き渡る。
全神経を集中させて取ったオーダー全てが水の泡。
気負っていた緊張の糸が途切れたのだろう。無感情の中のあたしの目からボロボロと涙が溢れ出してしまった。
学生「えっ、泣いちゃった!?」
柚月「す、すみません。」
学生「ほらっ、ここに座りなよ!!」
柚月「大丈夫です、本当にごめんなさいっ・・・。」
やっぱり、あたしには向いていない。何の取り柄もない。
何をしても上手くいかない・・・。
学生「泣かせちゃったお詫びに何か奢るよ!!LINE交換しよっ!!ね!?」
男子生徒が立ち上がり、泣いているあたしを無理矢理座らせようとした。
・・・その時だった。
廉 「オメェら、女泣かせてナンパしてんじゃねぇよ。注文したやつ、責任持って全部食えよ!?」
柚月「・・・廉?」
ドスの効いた声がする方に目を向けると、そこには席案内をするまこの後ろに、廉と数人のクラスメイトの姿があった。
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