第22話 覚悟
廉 「寝起きの顔じゃねぇな。どうせ、出てくるタイミング逃してあたふたしてたんだろ?」
結芽 「体調、どう?もうこんな時間だし、夕飯食べて行ったら!?」
守る約束があるならば、優先順位をつければいい。
今、守るべきものはすぐにでも。後回しにできるものはゆっくりと。
後悔なんて気にしていたら、先に進めない。悩んでいても前に進めない。
走って歩いて立ち止まって。
それでもし疲れたら、今度はゆっくり歩いてみればいいだけ。
反省をして、また立ち上がればいい・・・。
柚月「廉。あたしは確かに脳みその容量が少ないかもしれない。」
廉 「・・・否定はしない。」
結芽「しなさいよ。」
柚月「でも、確実にこれは間違いなんかじゃないって思える事がある。」
いつも一緒にいたから。一緒に居過ぎたから、気が付かなかった?
それとも。
ただ隣に入れる事で満足してた?
そうじゃない。
「繋がってる。」・・・そう、勝手に思い込んでいただけだったんだ。
柚月「廉が好き。」
廉 「今の会話に流されんな。」
柚月「結芽さん!!廉をあたしに下さい!!まな板胸ですが、精一杯受け止めます!!」
結芽「・・・まな板なのね。」
マシンガンの如く、一人演説を繰り広げるあたし。
廉への想いにようやく気付いた今、あたしの口は暴走しだす。
柚月「廉が好き。明日も明後日も、この先もずっと好き。だから、廉がいないと困る!」
廉 「・・・柚月、お前マジで何があったの?」
柚月「それから、結芽さんの事も好き。部屋汚いし、料理も満足に作れないけど、何か不安や悩みがあるんだったら話して欲しい!」
結芽「・・・柚月ちゃんって、結構暴言吐くのね。」
廉 「もしかして、桂君から何か聞いたのか?」
柚月「どんな過去を抱えてたって、これからはあたしが二人を支えるって決めたんだから!これはお情けとか、おまけの優しさとか・・・、そんな生温い気持ちじゃないんだからね!!」
結芽「こりゃ、聞いたな。」
廉 「はい。クロですね。」
古川柚月、高校一年生。
この歳にして。ようやくアップデート完了。
「恋」という新しい機能が追加された。
この後も、射撃班柚月はガンガン暴発しまくり、見かねた廉が「二人で話がしたい」と、興奮状態だったあたしの手を掴んだ。
結芽さんも同意見だったのだろう・・・。ただ黙って頷いた。
こうして、あたしと廉は家を出て、行く当てのない道をぶらぶらと歩く事になった。
廉 「少しは落ち着きました?」
柚月「子供扱いしないで。」
茜色の空。
そんな黄昏時の中、突然立ち止まった廉はあたしの正面に立った。
柚月「な、何!?」
廉 「桂君から聞いたんだろ?俺がどうして嫌ってるか。」
柚月「別にっ・・・」
廉 「嘘や隠し事はするなって言っただろ?別に怒ってもいねぇし、責めるつもりもねぇからちゃんと話せよ。」
穏やかな表情の中に隠れて見えた、真剣な廉の眼差し。
あたしは桂太先生に大きな罪悪感を抱きながら小さく頷いた。
廉 「やっぱりな。」
柚月「ごめんなさい。」
廉 「別にお前は悪くない。でも、どうして桂君が柚月に話したのかが分からなない。」
柚月「言ってたの、桂太先生。あたしと廉は、昔の結芽さんと廉のお父さんに似てるって。」
廉 「俺とお前が?」
柚月「うん。それと、あたしなら廉の心の痛みを分かってあげれるからって。・・・そう言われた。」
廉 「心の痛み・・・か。」
柚月「今すぐ分かり合えるだなんて思ってない。支え足りないかもしれない。でも、廉の心の中のもの・・・、あたしも半分背負いたい。」
あたしと廉の視線が重なった。
ブレる事なく、真っ直ぐにあたしの目を見る廉の顔が、何故かとても悲しそうに感じ取れたあたしは、まるでその表情を隠すかの様に・・・。
廉にキスをしてしまった。
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