第3話 変わらぬ朝

高校生活が始まって、かれこれ二週間が経とうとしていた。

毎日があっという間で、帰宅部を選択していたあたしと廉は、いつもと変わらず登下校を共にしていた。

あたしが毎朝廉を家まで迎えに行く。あたし達にとっては当たり前の日課で、小学校から今も変わらず続いているスタイルだった。

それが、普通の事だと思っていた。


結芽「あっ、柚月ちゃんおはよう。」

柚月「結芽さん、おはようございます。廉は・・・」

結芽「あ、今お父さんにお線香あげてたから、もう少しだけ待っててね。廉ーっ!柚月ちゃん迎えに来たから早くしろー!!」


あたしは、廉のお父さんの記憶があまり無い。

詳しく聞くつもりもないし、聞こうともして来なかった。何かの病気で亡くなってしまった事だけ・・・。それだけは知っている。

そして、結芽さんと廉のお父さんが大恋愛の末に結婚した事も、昔、結芽さんがお酒を飲んで酔っ払った時に延々と聞かされたのを覚えていた。

凄く凄く。今でも結芽さんは旦那さんを想っているのだろうと思わせられる場面を何度も見て来た。

もしかすると、未だに死を受け入れられていないのではないかと思う程に・・・。


廉 「うっす、行くぞ」

柚月「うん。じゃぁ、結芽さん行ってきます」

結芽「廉、ママにチューは?」

廉 「黙れババァ。いつもんな事しねーだろうが」

結芽「お、何だ?反抗期か?見た目も性格も、お父さんに似てくるもんだねぇ」

廉 「柚月、行くぞ」

柚月「あ、うん」

結芽「柚月ちゃん、今日も廉の事お願いねー!」


今日もいつもと変わらない朝。

でも、どんなに遅刻しそうになっても。廉は毎朝必ずお線香をあげている。


「見た目も性格もお父さんに似てきた」


結芽さんの口からたまに聞くこの台詞。

褒めるのは癪に触るが、廉は昔から男女問わず人気があった。

高校の入学時の自己紹介の際にも、カッコいいとクラスの女子が騒いでいた程。

彼女の一人位いてもおかしくないはずなのに、何故か作ろうとしない。

本人曰く「女は面倒臭い」らしい。


柚月「ねぇ」

廉 「何すか?」

柚月「廉って、ムカつくけどモテるじゃん」

廉 「知らねーし、別に嬉しくない」

柚月「彼女、作らないの?」

廉 「好きな奴いねーのにどうやって作んの?

柚月「好きなタイプとかいないの?」

廉 「ゴリゴリにマッチョな男」

柚月「・・・え」

廉 「本気にすんな!・・・俺さ、好きな奴とか恋とか愛とか。ましてや結婚だとか絶対しないって決めてんだよね」

柚月「どうして?」

廉 「俺のポリシー!!はい、この話題終わり!」


十人十色。勿論恋愛だってするしないは廉の自由。

まぁ、かく言うあたしも初恋すら未経験の女。廉にとやかく言える立場では無かった。





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