第2話 出逢い

学校に到着し、クラスも廉と一緒のあたしは、それぞれ自分の席に付いた。

朝のHRが終わり、一時間目の授業が始まる。あたしの中で、最も嫌いな授業第一位に認定される程苦手な科目「数学」。苦痛で仕方がなかったあたしは、ブレザーから携帯を取り出し、顔を伏せて寝ている廉にメールを打った。


柚月「元気?」


廉がモゾモゾと身体を起こし、携帯取り出し画面を確認した後、返信メールを打ち始めた。


廉 「あのさぁ。」

柚月「何?」

廉 「後ろ。」

柚月「え?」

廉 「先生という名の背後霊が取り付いてるぞ」


振り返ると、数学と同じ位に苦手な先生が、教科書の角をあたしに振り落とす瞬間だった。


先生「何をしてるんですか?」

柚月「計算が分からないので、携帯という便利な物を使って答えを出してました。」

先生「そうかぁ。でも、古川の画面は電卓じゃないよな?」

柚月「・・・あっ、今国語じゃなかったですね!失礼しました。」

先生「授業中にメールなんて言語道断!」


途中まで振り落とされたままだった教科書の角が、あたしのつむじ目掛けて落下。


柚月「痛い・・・。」


頭を押さえながら廉の方を見ると、胡散臭い笑いをあたしに向けた後、再び両腕を机の腕で組み、顔を埋め始めた。

口をタコにしながら、仕方なく数学の授業に取り組もうとしていると、後ろからポンと背中を叩かれた。


まこ「柚月っ、先生に怒られちゃったね(笑)

柚月「まこ、あのバーコード、教科書であたしの頭小突いたんだけど。」


陣内まこ(じんないまこ)。

高校に入学し、初めて出来た友達。まだ知り合って間もないけれど、性格も陽気で笑顔が可愛い、良くも悪くも素直に答えてくれる付き合いやすい女の子。


まこ「先生に聞こえちゃうよ(笑)でもさ、柚月小突かれた時おならしなかった?」

柚月「したっていうか、叩かれたせいで出た。」

まこ「やっぱり!あはははっ!」

柚月「おならっていうか、バーコードがあたしを読み取った音です。」

まこ「訳分かんない言い訳しないでよ(笑)」


何をしても楽しくて。

くだらない事でも笑えて。

視線を廉に向けると、寝てたはずの廉にもあたし達の声が届いていたらしく、苦笑いをしてて。

思い描いていた通り、このままこんな生活が続けばいいと思っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る