第肆幕 侵攻

 尖閣諸島沖 漁船晴風

「船長!あれを見てください!」

 固定網を引っ張っている新米漁師が尻をつき、指を指す。

「あれは…」

 指の先には3隻の中国海警局警備艇が主砲を向け進行していた。

 船長は網を放棄するよう命じ、操舵室に飛び込む。

「操舵長!与那国へ急げ!中国海警局や!」

「しかし!ここは日本の領海内ですよね!」

「せや、けんど、とにかく急がんかえ!」

 船長は無線を取り海上保安庁石垣島基地に連絡をする。

「こちら漁船晴風!現在、魚釣島南西2キロのところで、中国海警局に追われとる!」

『こちら石垣島、了解した。安心して欲しい。現在、近くの艦艇を向かわせている。それまで逃げ切ってくれ!』

「わ、分かった!」

 晴風は速度を上げ石垣島に向け進路をとった。

 30分後、合流した海上保安庁巡視船「いしがき」「いらぶ」「なぐら」「よなくに」の4隻は晴風と海警局警備艇の間に入るように船を動かした。

「こちらは日本海上保安庁です。貴船は領海を侵犯しています。直ちに停船し、引き返しなさい!」

 いしがきが無線と発光信号を使い呼びかけるも返答がない。

 そしていたちごっこが30分ほど進んだ頃、海警局の警備艇一隻が先頭にいたいしがきに主砲を撃ち込む。

「船長!いしがきが被弾しました!尚も主砲旋回中!」

悲鳴にも近い船員の報告が各巡視船から挙がる。

「いしがきの救助を行う!ウェポンズフリー!」

 船長の一声に、いらぶがいしがきの乗員の救助に動き出し、それを守るように他2隻が警備艇を攻撃する。

「撃ち方始めー!」

 

 東京総理官邸

「何っ!中国海警局警備艇が海上保安庁巡視船を攻撃だとっ!」

「はい」

 熊沢は耳を疑った。

「それは確かなのか!」

 秘書官は静かに頷く。

「今どうなっているんだ」

 熊沢が尋ねると秘書官は声を震わせながら答える。

「はっ、現在…中国海警局が魚釣島を占拠、多数の海上保安官を拘束した模様です」

「なんと…」

「それだけではありません!」

 飛び込んできたのは防衛省情報本部情報官沖田である。

「現在、東海基地から尖閣に向け、東海艦隊が出撃したとの報告が!」

 熊沢はめまいがした。

「これより1時間後、安全保障理事会を開く。関係各者を集めておいてくれ。」

 熊沢は席を立った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

護衛艦やまと 天草ミカサ @Nemesis_La_Argol

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ