【Ⅵ】-1 指示

 耳の内側で乱れた息遣いが絶えず繰り返されている。不安定に揺れる世界は霞がかってどこか遠い。どうやら滑らかな絨毯が敷かれた階段を駆け上っている。知らない建物の中だった。


「こっちに!」


 鋭く響いた声は誰のものか判然としない。知っているような気もしたが、初めて聞くような気もした。


「まだ走れる?」


 視界がくるりと横に反転した。誰かの手を引いている。白くて華奢な、一目見ただけで女性のものと分かる腕だ。


「……私、あなたを巻き込んでばかり」


 声主の顔は視界の中央にあるはずなのに、一段と濃くなった霞に妨げられて少しも見えない。しかし分かる。この声はルノアだ。


「オレが好きでこうしてるんだって、何度も言ってる」


 ああ、そうか。ようやく納得する。これはランテ自身の声だったのだ。ランテがルノアを連れてどこかを走っている。一体どこを? 何のために? 自問は延々と繰り返され、一向に答えに近づけない。


「ごめんなさい」


「謝ってもらうためにやってるわけじゃないって、これもいつも言ってる」


「今からでもまだ間に合うわ。どうかあなただけでも」


「嫌だ」


「どうして」


 ごめんなさい。どうして。ルノアはこのときからそればかり口にしていた。悲しげに眉根を下げ、影が指した瞳を俯けて、震えを堪えた唇で切なげに言うのだ。耳にするたび心が痛んだものだ。覚えている。覚えていたはずだった。


「絶対、死なせない」


 返事の代わりに繋いだ手を握りこんだ。ルノアが思わず声を上げてしまうほどに強く、決して離さないと誓うつもりで。あの手は結局、離さないでいられたのだろうか? 敵兵の囲みの中を何度も戦って抜けていく様が駆け巡る、が、その先の記憶はどれだけ求めても蘇らない。どこへ行こうとしていたのか、何を果たそうとしていたのか、それは依然として闇の中だ。もどかしくて気ばかりが急く。




「ランテ?」


 はっと空気の塊を飲み込んだ。視界を占領していた映像がすっと影を潜め、瞬くと、テイトがランテを見上げていた。


「オレ、今どうしてた?」


「ちゃんと戦ってたよ。なんで?」


「あれ……」


 森を抜けたところまでは覚えている。それから後何が起こったのか、ランテたちの周辺では白い鎧を着込んだ兵たちが——おそらく中央兵だろう、洗礼の証をつけた兵ばかりだ——倒れていた。セトとユウラは武器を手にしている。一体いつ出くわして、いつ戦ったのだろう。


「普段と剣捌きが違ってたな。無意識だったか?」


「無意識というか、頭の中で何か違う映像が流れてたんだ。その中で敵と……戦ってた」


 セトに答えて、ランテは空いた左手を見下ろした。先ほどまでルノアの手を握っていた指だ。今なお柔らかくて温かい彼女の指の感覚が残っている。今度はユウラが聞いてきた。


「記憶?」


「たぶん。やっぱりオレ、セトが言うように王国の人間だったみたいだ」


「結論を急ぐなよ。王都を見ればまた何か思い出すかもしれないしさ」


 目を流して、右腕に握っていた剣に赤い汚れが附着していたのを発見する。


「ほんとだ、剣に血が……」


 ランテの足元に倒れる兵はぴくりとも動かない。白い鎧のあちこちにも血の斑点が散っていた。


「死んでないわよ。全部致命傷にならないように斬ってるわ。昔からそういう戦い方してたのね」


 ユウラはランテにそう告げてから、ぐるりと周囲を見渡した。


「三十ってとこかしら」


 セトも彼女に倣った。


「弱すぎるな」


「妙ね。てっきり人質の確保を狙ってくると思ったのに」


「ああ。この程度の戦力で真っ向から勝負を挑んできたのも気になるな。オレたちが王都に到達するまでは手出ししないつもりでも、わざわざ仕掛けてくる必要はないし……何か意図してのことなのか」


「上手く指令が行き渡ってないんじゃないの? 中央の指揮系統は元々お粗末なんだし」


「何か策があったとしても、並の兵と呪使い三十人でオレたちをどうにかできると思ってるなら、中央も相当甘い……が、さすがにそんなに簡単な話でもなさそうだ」


「何か分かったの?」


「三十人はたぶん囮だろうな。オレたちにあえて敵を見つけさせ油断を誘うのが目的だ。本命は今気配や呪力が拾えないレベルの兵で、闇討ちでも仕掛けるつもりでどこかに潜んでる、って考えるのが妥当か。手練には違いないだろうが、こういう小細工が必要ならそう実力差はないかもしれない」


「希望的観測?」


「後半は若干。どっちにしても、これで終わらせたりはしないはずさ」


 セトとユウラの会話はそこで終わる。辺りを確認すれば森はまだすぐ傍に見えた。ランテの意識がこちら側を離れたのは、ごくわずかな時間だったらしい。しかし戦いはこれで終わりではなく、むしろ王都の沈むエマリーユ湖が近づいてきたこれ以降はさらに激しさを増すだろう。今後は記憶を彷徨さまよわないようにしなければいずれ皆に迷惑をかけることになる。防ぐ方法は分からないが、とにかく注意せねばならない。


「さすがですね、白軍北支部副長セト殿。大方ご明察の通りです」


 唐突に響いた声があった。ランテたちが通ってきたはずの森から、人が一人姿を現す。装束から中央の人間だと分かった。ランテ以外の三人も気づけなかったということは、意図して気配と呪力を消して身を隠しつつ接近したのだろう。敵に違いない。


「どうしてあなたがここに?」


 下げていた剣を、セトが握り直したのが分かった。ランテは小声で傍らのユウラに問う。


「誰? あのマント、上級司令官みたいだけど」


「そうね、たぶんクスター副官よ」


 ユウラの声にもかすかに緊張が加わる。テイトも唇を引き結んで頷いた。


 クスターらしき人物は、若く——とは言ってもテイトよりいくつか年上だろう。二十五、六といったところか——白色の髪を腰の辺りまで伸ばして緩く束ねていた。肌も異常に白く服もまた白いため、どこか浮き上がって見える。姿かたちは人型をしていたが、それにしてはなにやら言い知れない違和感を覚えた。女性の如く細い身はどう考えても戦闘に向いているようには思えなかったが、呪使い用のローブではなく戦士用の制服を着込んでいる。武器を帯びている様子はないが。


「惜しいです。あなたがたは人間にしては非常に優秀だ。大聖者様に反旗を翻さなければ、ぜひ我が手駒となっていただきたかったのですが」


「リエタ聖者は北の陣にいる。あなたまで主戦場を離れていいんですか?」


 わずかに微笑んで、クスターは信じられないことを言い放った。


「聖戦には、もう負けてもいいんですよ」


 場を支配した沈黙を楽しむようにクスターは笑みを深め、陽気に声を高めて続ける。


「大聖者様は聖戦にお飽きになったのです。終わらせてしまえばよい、との仰せ。どう民に不満を抱かせないよう敗北しようかと頭を悩ましておりましたところ、あなたがたが全て引き受けてくださった。感謝の言葉もありませんよ」


「どういうことですか」


「お話したとおりですよ。そうですね、お分かりいただけないのなら一つ質問をしましょうか。アノレカでリエタ聖者の呪は既にご覧になったでしょう。あの方の呪は兵を傀儡にする。操られる個々人に微かとはいえ思考力が残る点では、洗礼よりも優れています。ではなぜ洗礼は必要なのか? 疑問には思われませんでしたか」


 クスターの相手をしていたセトが、半歩身を下げてランテたちに寄った。小声で囁く。


「囲まれてる」


 クスターに話をさせるよう促したのは、彼も、その連れも強敵だからだろう。どう出るべきか考える時間を稼いでいるのだ。


「今、おそらくあなたがたはこうお考えでしょう。あの呪はリエタ聖者特有のものゆえ、それのみに頼ってはあの方の力をいたずらに増大させることになる。そうさせないために洗礼を用いていると。そうですね、正しいです。が、それだけではありません」


 副官でありながら、クスターはリエタの腹心といった関係ではなさそうだ。ベイデルハルクの話をしているときとリエタの話をしているときでは表情の輝きがまるで違う。彼が真に忠義を尽くすのはベイデルハルクにであり、リエタにではない。おそらく目付け役としてリエタの副官となったのだろう。


「証持ちの兵は融通が利かず、不便です。そして指揮を執るにはかなりの手腕と経験が必要になります。兵を作るにも、指揮官を育てるのにも、双方とても手間がかかる。普通の兵を使った方が格段に効率はいいのです。しかし我々は証持ちの兵を要した。なぜだと思われます? 簡単ですよ。我々はどんな命令も決して拒まず従う兵を欲したからです。リエタ聖者の呪では兵に少しばかり理性が残り、意志の強い者は完全には従いません。例えばあなたがたなどはまさにそうなるでしょうね。数日経てば正気に戻ってしまうやもしれません。必要とあらば命を捨てることを厭わず、家族や友を斬ることも厭わない、完全確実に命令に服従する、そんな兵が必要なのです。ここでまた新たな疑問が生まれますね。ただ単に聖戦の戦力として利用するなら、我々が正義であるとする情報操作だけで十分です。どうして証持ちの兵が必要なのか。どう思われます?」


「口が過ぎるぞ、クスター」


 木霊するように響いた声に、誇らしげに嬉々と語るクスターが全身の動きを止めた。彼の足元に輝く円が刻まれる。文字で埋め尽くされていくその紋章には、ランテにも見覚えがあった。覚えがなくても分かったであろう。この感覚は、この予感は。胸が熾烈な炎に焼き焦がされる。相変わらず、理由はまだ分からない。


 分かっていたが動けなかった。皆も同じだったのだろう。立ち尽くしている。


「……ベイデルハルク」


 腕が震えるほどの力で拳を握り締め、ランテはその名を口にした。呼ばれた男は光の塊から姿を現すと、ランテを認め、目を見張り開いた口を歪めて笑った。


 瞬間、懸命に堪えていた何かが決壊した。抜き身の剣を携えて、憎くて堪らない敵へ向かって、ランテは強く地を蹴った。


「ランテ!」


 誰かに腕を掴まれた。力ずくで振り払う。憎悪に駆られるままに、ランテは視線の先にいる男に剣を突き立てたい一心でただ足を先へ先へと運んだ。が、突如前方から吹きつけた突風に身体を押し戻される。身を低くしてさらに進もうとしたが叶わなかった。元居た場所まで吹き飛ばされて尻餅をつく。


 触れた土に指を立てた。爪との狭間に小石が入り込んで食い込み、薄っすら血が滲んだ。目に映る仇敵はなおもランテを見据えて嘲笑い続けている。憎くて憎くて、けれども理由は分からない。あの男だけは消さなければならないと、それだけが頭の中で繰り返されている。再び立ち上がろうとしたランテを留めた者があった。セトだ。


「セト、オレは!」


「頭冷やせ。このままぶつかっても勝ち目はない」


 落ち着き払った声が、そう聞こえるように操作された声が、ランテの焦燥をいくらか緩める。この中の誰一人として力が及ばない圧倒的な敵を前にしての暴走は、一番避けねばならぬ事態だった。分かっていても衝動は止まらない。


「生きていたか、セト副長。あの傷で大したものだ。もっとも、あのまま死んでいたほうが幸福だったかもしれんが」


「ランテ。湿原でオレが言ったこと、覚えてるな? それからレベリアでの話も」


 ベイデルハルクには答えず、セトはランテに目を合わせると小さく言った。顔を上げて腕を離すと、敵に向き直る。


「聖戦には負けてもいいとは、どういう意味ですか?」


「問答で時を稼ぐつもりか? 稼いだところで何とする」


 大聖者がゆるりと進み出たところで、後ろにいたクスターが彼の前に素早く回りこんで恭しくひざまずいた。長い髪が地面を擦る。


「大聖者様、どうしてこのような場所へおいでに? 我々に任せてくだされば万事——」


「聞いたであろう。クレイドですら一度取り逃している。奴は始めからそうするつもりだったようだが、お前では万が一ということもある。もう待てんのでな」


「お待ちください、必ず——」


「くどい」


 差し伸ばされた人差し指から光が一線迸る。【光線】だ。無抵抗に胸の中央を貫かれたクスターは、身体を折って苦しげに呻き、か細い声を絞り出した。


「……も、申し訳ございません」


「私が来たからにはお前たちはもう必要ない。周囲の召喚士たちを本陣へ遣り、お前はアノレカを目指せ」


 止め処なく零れ出す血を手ですくいながら、クスターはどうにか頭を上げる。苦悶の表情の中に戸惑いがちらついた。


「アノレカへ……ですか?」


「アノレカは落ちる。折を見てリエタを殺すといい。最早用済みなのでな」


「かしこまり……まし……た」


 クスターがようやっと身体を起こした瞬間、淡い橙の光が彼を包み込んだ。光の粒子は傷口に集って痛々しい赤を覆い尽くす。光が去ったときには、あれほど重大だった傷は血糊の名残だけを残して完治していた。


「癒しの呪?」


 ランテが呟き、テイトは目を瞠った。


「永続呪だね。人に永続呪をかけるなんて、それも癒しの呪でなんて信じられないよ」


「まだ不完全でな。二、三度発動したら効果をなくす」


 ベイデルハルクの声を背中で聞きながら、クスターが覚束ない足取りで森の奥に消えていく。寸前まで彼が居た場所を凝視して、テイトが声を落とした。


「セト、この呪力、もしかして」


 セトも同じように地を見つめている。わずかに焦点の合わない目をしていた。


「……ああ」


 大聖者はかすかな嘲笑を湛えた。


「覚えていたか。君が母親と別れたのは、物心ついてそれほど経たぬ頃だと聞いていたが」


「中央に居るんですか」


「左様。おそらく最も優秀な癒し手だ。この技術も君の母親しか扱えぬ」


 セトの声に密やかな怒りが染みた。


「あなたたちは……どれだけあの人を弄べば」


「我々のその『弄び』で生まれた君が、何を語る」


 剣を握った指に関節が白く浮き上がったのが見えたが、今度もセトは大聖者の挑発には乗らなかった。自らを鎮めるためか、一度静かに息をつく。


「やはり怒らぬか。相変わらず部下思いの副長だ。だが、私を前にしてどうする?」


 意思表示のつもりか、セトは剣を持ち上げた。一度目に対峙したときとは違う、一切迷いのない動作だった。


「大方君がまた一人残るつもりでいるのだろう。それが意味あることか否かは腹の疼きが知っているはずだ。もう一度教えねばならぬかな?」


「物分かりが悪い方ですので」


「……セト」


 構えを取ったセトをユウラが呼ぶ。


「まあ待ちなさい。私も優秀な北の兵の中でもさらに優れた君たちを、できるなら殺めたくはない。互いに無益な戦いは避けようではないか。一つ提案があってな」


 大聖者は何も持たない手を左右へ大きく広げ、わざとらしい微笑をしてみせた。言葉にできないほど不快な嫌悪感が込み上がる。


「君たち三人は不問に付そう。北に帰るといい。その後何をしようと私は咎めぬ。ただし、そこの彼をこちらに渡してもらおう」


 セトは動じなかった。にべもなく断る。


「お断りします」


「よく考えたまえ。会って間もない一人の青年のために、長い間苦楽を共にした二人の仲間を殺すつもりか?」


 今度も即答だった。


「断ります」


「一人か全員か。どちらがより重いか、幼子でも分かろうに」


 ランテはここでようやく立ち上がった。血で汚れた剣を見、握り締め、ベイデルハルクを睨みつける。再び胸の内が燃え盛り、じっとしていられない気分になる。


「セト、オレは構わない」


 強く言い切ったが、期待した頷きは返って来なかった。


「お前の役目は敵に捕まらないことだって話したよな」


「オレはこいつを——」


 穏やかな声で、しかししっかりとセトはランテを遮った。


「お前はきっと、いつか大聖者と戦うことになる。だけどそれは今じゃない。そのときまで生き残らないとな」


 ユウラが、続いてテイトがランテを抜いてセトに並んだ。


「一人で戦うなんて馬鹿なこと言わないでよ?」


「僕たちも残るからね」


 さすがに躊躇して、だがセトは断らなかった。


「……そうだな。さすがに大聖者相手に一人じゃ、ランテが逃げ切るまでの時間は稼げない。ユウラ、テイト、援護頼む」


「任せなさい」


「もちろん」


 固い決意が認められる三人の背に、ランテを浮かしていた熱はすっと冷えた。敵うはずのない相手を前にしても怯まず、彼らはランテ一人のために命を賭して戦うつもりなのだ。


「ランテ、王都の方に逃げろ。ルノアがいる。他より安全だ」


 できるはずがない。そんなこと、できたくもない。


「できない。オレも一緒に戦う。今なら少しは戦力になれる」


「また飛ばされたいか?」


「今度は飛ばされたりなんかしない」


 ランテは気づいていない。このとき今までの自分とは明らかに異質な気配を纏ったのを。それに気づいた三人が、それぞれほんのわずかに身を引いたのを。


「ランテ」


「オレ、やっぱり一人だけ逃げるなんてできない。平原で目が覚めたとき、みんなが居てくれなかったら不安で不安でしかたなかったと思う。皆は得体の知れないオレを信じてくれて、仲間にしてくれて、こうして命懸けで守ってまでしてくれようとしてる。感謝してもしきれない」


 ふさわしい言葉をランテは知らない。ありがとうでは、そんな言葉ではとても足りない。


「もしもオレに本当に特別な力があるなら、オレはその力を皆のためにこそ使いたいと思う。オレはまだ白軍としても戦士としても半人前で、みんなみたいに世のため人のために戦ったりなんてできない。今、ここにいる人のことだけを考えるので精一杯だし、それが間違っているとも思えないんだ」


 何をどのように言えば過不足なく伝わるのか、少しも分からない。それでもランテは不自由な言葉を必死に操って、思いを吐露した。


「ごめん。でも、だから、オレは皆と一緒にここに残って戦う。いつ役に立つか分からない、それどころか本当にあるのかも分からない力のために、みんなを犠牲になんて絶対にできない」


 不器用ではあるがランテの精一杯の言を聞いて、最初にテイトが、次にユウラがおぼろげに微笑んだ。


「だって。どうする?」


「これは梃子でも動かないわね」


 二人の言葉を受けて、セトは少しの間黙った。やがてじわりと諦めたような笑みを浮かべて言う。


「ほんとにうちの連中は、隊長命令聞かないやつばっかだな」


 全員揃って敵へ目を向けると、ベイデルハルクは微動だにせず同じ場所に立っていた。不気味な笑みを浮かべた表情は変わらない。


「話は済んだか?」


 再び構えを取り直して、セトが言う。


「全員応戦体勢を。目標は敵の撃破、必ず全員生存すること」


 無謀に思える指示は、聞いた三人の士気を削ぐどころかかえって高める。


「了解、隊長」


 声をそろえて応じたユウラ、テイトに、ランテも倣った。

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