【Ⅳ】 本心
あれから、大精霊の制御は完全に取り戻せた。祠の修復も完了し、司たちも回復したため、ランテたちはエルティへの帰路についていた。
大精霊というものは、人に呪を扱う力を与え、その呪によって間接的に人々の生活を豊かにしている。しかしその一方で、制御を失えば人々の生活を破壊する脅威にもなる。今回は大事になる前に事を治められたが、次があったとしたら、どうなるか分からない。この世界は、ひどく不安定な均衡の上に成り立っているのかもしれない。もし世界の破壊を目論んだ者がいたとしたら、大精霊の坐す祠を壊して回れば、それが成ってしまうのではないだろうか。そうさせないために祠の傍に駐在軍もいるのだろうが、あれ以来ランテは少々不安になってしまっていた。
ランテの財布には、ネーテからもらった飾り紐が結わえてある。曰く、「お父ちゃんを救ってくれたお礼」なのだそうだ。力になれたこと自体は嬉しかったが、ランテ自身よく分からないうちに起こったことだったので、複雑な心境でもあった。やたらと不安を感じるのは、自分自身をつかみかねているせいでもあるのかもしれない。
「考え事してるだろ」
掛けられた声に顔を上げれば、セトがランテを振り返っていた。彼は自分の眉間を指して、「皺が寄ってた。お前は分かりやすいな」と軽く笑う。
「うん。何であんなことが起こったのか不思議で」
「それも記憶が戻ったら自然と分かるはずさ。今気にしたって仕方ないだろ? 最初お前が言ったように」
「うん……」
心遣いはありがたかったが、自分自身の得体が知れないという事実を、今回のように分かりやすく突きつけられたら、どうしたって不安になる。自分でさえそうなのだから、周りから見たらもっとではないだろうか。
「セトたちはオレのこと不気味だと思わない?」
「不気味?」
「だって、オレって得体が知れないし」
「いや、だからお前は分かりやすいよ。素性は知れないかもしれないけど、得体は知れてる。な?」
セトが隣にいたユウラに同意を求める。ユウラはすぐに「そうね」と応じた。
「感情がだだ漏れなのよね。読むまでもなく人となりが分かる。楽でいいわ」
テイトが続いた。
「確かにランテは、内側に何か大きな力を秘めているのは間違いないよ。それについては分からなくても、人間的に信頼できるからそれでいい。僕らはそう思ってる」
本当に、何とよい人たちに拾ってもらえたのだろうと、何度だって思わされる。心が軽くなって、ランテは微笑んで礼を言った。
「ただ」
それを受け取った後、セトが真面目な顔になって言う。
「これから、北は揺れる。これまで表立って中央につくべきだって言う人間は……最近はいなかった。だけど表に出さないだけで一定数いるのは確かだし、今までそうじゃなかった人間も先の一件で中央の脅威を思い知らされて、意見を変えるかもしれない。実際、町や町民たちを守るためには何が最善かは、難しい問題だ」
そこでセトは、これ以上続けるか否か葛藤したようだった。結局言うことに決めたらしいが、言葉をかなり慎重に選んでいるのが伝わってくる。逡巡しているからか、珍しく視線が合わない。
「基本的に……北は気のいいやつばかりなんだけど、さ。こういうことがあって……気のいいやつらばかりだからこそ、迷うかもしれない。町を守るにはどうするのが一番いいのかってな。……それで」
ようやく視線がランテに帰って来た。
「今回のことで、お前は大聖者に目をつけられた。あいつ自身が出てくることはそうないと思うけど、中央にはそれ以外にも手練が大勢いるし、エルティの人間を利用することだって出来る。つまり」
十分に間を取ってから、最後にセトはこう言った。
「気をつけろよ、ランテ」
気をつける。一体何を。いや、セトの言いたいことは分かる。分かるのだけれども、ダーフやハリアルたち支部のみんな、ノタナ、教会のシスター——皆いい人たちばかりで、到底中央とは結びつかない。しかし、ランテよりもずっとエルティに長くいるセトがそう言ったのだ。それはきっと、起こり得ることなのだろう。
「分かった」
ランテはゆっくりと確かめるように頷いた。セトも頷き返す。その後も彼は何かを言おうとしたが、声を出す前にやめた。そのまま前方に目を遣る。二人連れで歩いてくる者たちがいるようだ。片方が足を引きずっているように見える。
「二人きりで護衛もつけず、馬車にも乗らずに旅なんて、どうしたのかしら。危険なのは分かっているでしょうに」
「怪我してるみたいだし、治療がてら話を聞くか。あっちから来るなら、ほぼエルティに寄ってるはずだ。護衛も馬車もいくらでも頼めるのにな」
ユウラとセトが短く会話して、二人が早足になる。テイトも続いたので、ランテも追いかけた。近づいて姿が明らかになっていくにつれて、ランテはその二人を知っていたことに気づく。
「あ、あの人たち」
思わず声を上げると、三人分の視線が届いた。説明を求められているようだ。
「裏町の酒場に情報収集に行ったとき、会ったんだ。北の方へ逃げるとかなんとか言ってたような気がする」
「エルティから見て北ならこっちじゃないはずだけど、どうしたんだろう。でも、やっぱりエルティにはいたみたいだね」
酒場で見たあの男女の二人組だ。怪我をしているのは男の方らしい。片足が流血していたらしいのは、服に血が染みていることで分かった。
「黒獣ですか?」
あと十歩程度というところまで近づいたとき、セトが声を掛けた。女性の方は半ば泣いていて、男性の方は怪我のためか汗を幾筋も垂らしている。
「え、ええ……スンが、倒してくれたのだけど……私を庇ったせいで、怪我をしちゃって……」
「見せてください。オレは癒し手です」
セトは男性——名はスンらしい——を座らせると、足の怪我を確認する。太腿に何かで抉られたらしい傷があった。布で縛って止血してあったが、それでもかなり出血したらしいのは分かった。セトがすぐに治療する。青い光に照らされて、傷は瞬く間に塞がった。
「確かに黒獣から受けた傷のようですね。最近、北地方は黒獣が多く出ているのをご存知ですか? エルティにいらっしゃったのなら、護衛か馬車かを手配された方が良かったと思います。……それとも」
一度女性の顔をじっと見てから、セトは付け足した。
「そうできなかった理由があったのでしょうか」
直後、甲高い金属音が鳴り響いた。スンがセトに向けて振り上げた短剣を、ユウラが槍で防いだ結果のようだ。短剣はくるくると回転しながら高く弾き飛ばされる。そのままユウラは槍の切っ先を男の喉元へ向けた。女性が短く息を呑み、スンは観念したように息をつく。
「それが怪我を治してくれた相手にすること?」
口調こそ冷静だったが、ユウラは少々怒っているようだった。そのユウラを、セトがたしなめる。
「ユウラ。オレも言い方が悪かった。槍、もういいから」
ユウラは一瞬スンを睨みつけて、静かに槍を引く。スンはその対応に少々面食らったらしい。ユウラの槍が背中に戻されたのを見届けてから、口を開いた。
「捕まえないのか」
「オレたち北の人間には、あなたたちを捕まえる理由がない。まあ今のは逮捕案件だけど、目をつむるよ。さっきも言ったように、オレも探るような真似をして警戒させたし、町の外だし。……その分だと、追われているんだな。中央白軍にか?」
女性とスンは目を見交わした。二人してしばらく黙り込んだが、やがて女性の方が口を開く。
「……あなたは、私のことを知っておいでなの?」
「ええ、ルルファ家のご息女ですね」
「どうして分かったの?」
「あなたの失踪は有名な話ですし、以前総会に参加した折、幼い頃の肖像画を拝見したことがあります。モナーダ殿……父君には良くしていただきました」
そう、と呟いて女がうな垂れた。どうやら名門のお嬢様らしい。そのお嬢様が追われながら黒獣がうろつく平原を越えてここまでやってきたのだとしたら、それはどれだけ大変なことだったか。疲労が溜まっているように見えるが当然だろう。
「どうして家を出られたのか、教えてくださいますか?」
女は力なく頷いた。傍らで見守っていた男が、目を丸くする。
「ロア様」
「もういいわ、スン」
「しかし」
「ワグレよ」
スンの制止を振り切って、ロアは毅然と顔を上げた。続ける。
「ワグレに行って来たのよ」
「ワグレに? なぜ?」
セトの問いに、ロアは瞳を暗くした。ワグレの話になると、誰でも同じ目をする。痛みと悲しみと虚しさと脅えとを一緒に抱えた目だ。
「ワグレ壊滅が本当かどうか知りたくて。それから……中央がお父上に、ワグレ周辺の警護を命じたのよ。その理由が知りたかった。あそこは本来、北の管轄でしょ? それに壊滅した町をなぜ守る必要があるのか、疑問で」
「モナーダ殿は何か?」
「お父上は……父はこの頃……変わってしまったから」
ロアは膝元で拳を握った。スンがそれを見ている。セトはしばらく待ってから、話を進めた。
「あなたはワグレに行った、それから?」
「中には入れなかった。町をぐるりと囲うように白軍がいて……でも、外からでも惨状は良く分かったわ。とても恐ろしくて、だけど目を背けてはいけないと思った。夜までずっとそこにいて、そしたら、近くにお父上が来て……クレイド様と話していたわ。色々なことを。本当に……色々なことを……」
ロアの顔からさらに血の気が失せた。震えた深呼吸をして、瞼を落とす。その瞼もまた、震えていた。
「ワグレに【亡者】が居る。中央は彼を消そうとしている。おそらく彼が、すべてを知っている。あの日ワグレで何があったのか」
声を出せなくなったロアに代わって、スンが淡々と言った。セトが彼に目を移す。
「中央が今も兵を置いているのは、その【誓う者】が原因か」
「王国説の学者らしい。中央はてこずっているが、もはや時間の問題だろう」
「あなたがたが追われてるのは、それを知ったから?」
「そうだ。もう中央には戻れない」
セトとスンが感情を排したせいで事務的に聞こえる言葉を交す。その間ランテはずっとロアを見ていた。落ち着いたようだが、長い睫が落とす影のためか、瞳はまだ暗く写る。先日の酒場の様子とは何もかもが違って、とても同じ人間とは思えなかった。
「あなた方はこれからどうされるんです?」
「こちらが聞きたい。これを聞いて、そして先の襲撃を踏まえて、北はどう動く? 知らぬ存ぜぬを決め込み中央におもねるか、それとも完全に袂を分かつのか」
「それは」
途中で言葉を切って、セトが黙った。視線が落ちて、しばらく地面を横一線になぞる。
「支部長の判断を待つしかない……な」
「なるほど。総会に出席したということは、君が副長か?」
「だとしたら?」
「上手く動いてくれることを願う」
言って、スンは初めて表情を動かした。微かに笑んだのだ。
「危険を冒して北に寄って良かった。これでようやく肩の荷が下りる。どこに伝えたものか、悩んでいたものでな」
それをセトは胡散臭そうな目で見て、言った。
「それはどうもおめでとう。代わりにこっちは最大級の厄介事を押しつけられたけどな」
「そう言うな。ロア様はおそらく、君になら任せられると思われたのだろう」
「はいはい、ありがたく押しつけられますよ。厄介ではあるけど、知るべきことだったとは思うしさ」
ここでセトは一息つくと、自分たちが歩いてきた方を振り返った。
「このまま半日くらい進めば村がある。そこに駐在軍がいるから、施設を借りて数日休んで、その後は北の方を目指して進むといい。先にある村にはそれほど人が出入りしないから、身を隠すにはうってつけだ。人も親切だしさ。寒いから、防寒具は用意していった方がいいけど」
「すまんな」
「いーえ」
軽く答えて、セトが道を開けた。スンが立ち上がる。ロアもおろおろとしつつ続いた。テイトが寄ってきて、二人に向けて何やら呪を使う。防御呪の類だろうか。
「今、【氷結】という水属性の呪をお二人にかけました。持続時間は半日ほどです。触れたものを少しの間凍らせることができるので、もし黒獣に出会ったら、凍らせた隙に逃げてください。あくまで時間稼ぎのためのもので、倒すほどの威力はありません」
「ありがたい」
スンが頭を下げる。ロアも彼の真似をした。
「ここまでに遭遇した黒獣は討伐しています。ここからリュブレ村までは多分大丈夫でしょうけど、その次の村を目指すときは護衛をつけた方が良いかと。彼一人で、あなたを守りつつというのは中々難しいことですから」
最後にセトがロアに向けて言う。ロアは静かに泣いていたらしかった。指先で目尻をぬぐって、顔を上げて、それからゆっくりと頷く。
「ありがとう……ございました。スンの怪我の治療もしてくれて、本当にありがとう。……あの」
彼女はおずおずとセトを見上げ直して、言葉を継いだ。
「もし父と会ったら、……父をよろしくお願いします」
「……約束はしかねますが、できるだけ」
ロアはセトの答えに頷いてもう一度頭を下げ、それから二人はランテたちとすれ違った。何がどうなったのかほとんど分からなかったが、ランテは二人の背中を見送った。一言気をつけてと言うと、ロアは振り返ってありがとうと答えてくれた。疲れてはいたが、浮かべた笑みは少しだけ安らいでいた。
ロアとスンが行ってしまってから、歩き出しながらランテは分からなかったことを尋ねることにした。いつも尋ねてばかりで申し訳ないとは思うものの、分からないことを分からないままにしておくと、後から余計に迷惑をかけることになってしまうかもしれない。
「あの人たち、ワグレには亡者がいるって言ってたけど、亡者って何のこと?」
「亡者は、他にも誓う者って呼ばれたりもする。亡者は蔑称だから、できるだけこっちを使ったほうがいい。で、誓う者は、器を捨てて意識だけの存在になった者たちのことだ。まあ、幽霊みたいなものだって思ってれば分かりやすいかもな」
「幽霊? じゃあ、目には見えなかったりする感じ?」
「いや、そういうわけじゃない。誰にだって見える。誓う者は強力な呪使いであることが多いから、自らの呪で自身を実体化できる者もいたりする、というかほとんどそうかな」
「そっか。後は、なんで誓う者って呼ばれてるの?」
「文字通り誓うからさ。誓う者は身体を捨てるとき、各々一つ誓いを立てる。それを果たすか断念するかまでは死ねない。まあ、他の力によって消滅させられることもあるが、もちろん生身の人間を殺すよりか遥かに難しい。だから不死を欲してなりたがる奴もいるけど、生半可な決意で誓いを立てると……悲惨な末路を辿ることになる」
セトの声は最後だけ重くなった。詳しいことは聞かなくてもそれだけで十分に分かった。では、ワグレにいるらしい誓う者はどれだけの決意の下どんな誓いを立てたのだろうか。
「……滅んだ町で、たった一人でいるのだとしたら、どんな気持ちでいるのでしょうね。家族や知り合いもいたでしょうし」
「生半可な精神力じゃ、誓いを立てることはおろか、正気でいることも難しいくらいじゃないかな。立派な人なんだろうね。それだけ強い人じゃないと、誓いの呪は行使できないんだろうけど……」
ユウラ、そしてテイトが話した後、一行はしばらく沈黙した。全員、ワグレの誓う者について思いを馳せていたのだろう。ワグレの惨状を直接は知らないランテとて、心がひどく痛んだ。どうして中央のやることはいつでも残忍なのだろう。洗礼にしろ、ワグレにしろ。
「セト。あんたは、どうするつもりなの?」
「どうするって?」
「中央への対応よ。当然、支部長の判断が一番重いのは分かってる。だけどあたしは、あんた自身の意見を聞きたい。エルティに戻ってからじゃ、こんな話はしにくいと思うから、今聞かせて」
ユウラの問いに、セトはしばらく答えを寄越さなかった。十歩ほど進んでから、ゆっくりと答え始める。
「個人的な考えを言うのなら、中央に降るのはごめんだって思いが強い。誰だって、それはそうだろ?」
それには、全員が頷いた。
「ただ、立場も考えないとな。支部の人間として、町のことを考えると……もう一度白獣を呼び出されようとしたら……いや、今度は実際に呼び出されてしまったらどうなるか。そう考えると安易に対抗するって言えないのも、そうだ」
「……でもセト、中央と手を結んだら、兵たちが洗礼を受けさせられるかも」
ランテはどうしても洗礼を受け入れられない。あんな状態になってしまっては、生きていると言えなくなってしまうような気がする。セトはすぐ「ああ」と応じた。
「手を組むなら、そこは、上手く動いてどうにか回避するか……」
セトは黙って、また十歩ほど行った。それから、一つ溜息を落とす。
「それが失敗したら……町全体の人間の数と兵の数を天秤にかけて、……兵に分かってもらうかだな」
明らかに沈んだ声で、セト自身がそれを望んでいないのは明白だった。理解はしても、ランテはセトの口からその可能性の話が出るのが、悲しくて堪らなかった。皆はどうだろう。ちらりとユウラの顔を見る。彼女は、セトをじっと見つめていた。
「支部長がそれを選んだら、あんたも受け入れるの?」
長い間、答えはなかった。空気がすこぶる重い。ランテがどうしようかとあたふたし始めたときになって、ようやくセトは言う。
「……本当、向いてないんだよな」
「向いてない?」
脈絡がなくて、ランテは思わず聞き返してしまった。セトは静かに頷いて続ける。
「切り捨てができないんだ。頭では分かってる。一番安全で、一番多くの人間が助かる道はそれだろうってさ。支部の長ならそれを選ぶべきなのかもしれない。最終決定権を持つ人間として、責任と……洗礼を受ける兵の無念や、その身内の悲嘆を全部背負ってな。……だけどその決断は、オレにはできない。我ながら甘いって思うよ。上に立つ人間の考え方じゃない。ちゃんと分かってるんだけどさ。向いてないって言葉で片づけるのも逃げだろうけど……それでも、できないな」
それからすぐに、セトはいつものように笑う。誰にも、何かを言わせる隙は与えなかった。
「だけど支部長が何を選ぶかはまだ分からないんだし、考えても取り越し苦労かもしれないだろ? この辺にしておこう。暗くなってたって仕方ないしさ」
なんとなく気になって、ランテはもう一度ユウラを見た。ユウラはいつもと同じような表情をしていたように見えたが、よく観察すれば、目元にどことなく寂しさが漂っているようにも思われた。ランテの勝手な推測だが、ユウラはきっと、セトの本心と立場上の正解との乖離に気づいていて、少しでも何かがしたかったのではないだろうか。相談に乗ることも弱音を聞くこともできなかったのが寂しくて、あんな目をしたのかもしれない。
しかし、こうも思う。セトは人の感情に敏い。合っているかは分からないが、ランテでさえ感じたユウラの寂しさに気づかない、なんてことがあるだろうか。気づいていたとしたら、応えないのはなぜなのだろう。心配を掛けたくないのか?
「ランテ?」
テイトに呼ばれて気づいた。皆と離れかけてしまっている。考えている間に歩みが遅くなってしまったようだ。
「ごめん、大丈夫」
慌てて足を動かす。不安も不思議もあるにはあるが、こうしてランテを待ってくれる人たちがいることで、心は凪いでいた。この居場所を、大事にしていきたいと思った。
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