Quanji-48:光臨デスネー(あるいは、あ、な~るほど!/ジ/阿鼻驚嘆ワールド)
♢
思わぬ邂逅に揺さぶられるばかりの情けない僕を、包括してくるようなその眼差し……懐かしさと、うずめておいたものが土中からうぞぞぞと出てきたかのような締め付けられ感を同時に鳩尾あたりにぶつけられたような……いやそれよりここは何処で、僕はやらなければならないことがあったのでは……? 根こそぎどうでも良くなってしまいそうな思考への「圧」が、先ほどの猫神発の「圧力」みたいに押し迫ってきている……
いやそうだ、猫神。僕、倒す。
拙い思考が僕を、どっちかは分からないけど「こっち側」へと引き戻す。けれど、
「……初恋は実らない厳然定説」
肝心のところは正体不明の「霞」が覆っていて何故か焦点を合わせることの出来ないその褐色の肢体の後ろから、その艶めく肩を白魚のような指が、おつかれ、みたいな体でとんと、と叩く。現れたのはその地の底から響く声で分かったものの、
「……目ぇ覚ませ。混沌から、自分の求めるものだけを引きずりだしゃあいいんだ、それだけ、それだけのこと」
ダリヤさん……も一糸纏ってない風体で、ああこれは夢の類いなんだろうかなと思いつつ、その言葉には脇腹につららを撫でつけられたかのように、脳までびっくりさせられた、で、冷静になれた。と、
「ま、マスター、考えてはダメです感じないと!! 妄想の中のこのカラダなら……サイズ的にいい感じでしっぽり超絶合体できるはずッ!! いやさ出来ると決めたんだァッ!!」
奏恵ちゃんと思とった人からそのような嗚呼……いきなりそんな「元」に戻られてもェ……でも無事なんだよね? 僕の「脳内」に出演できているってことは。いや無事だともう決めたよ。
「……おまえじゃあもう役不足ともう結果は出てたじゃあねえか……『アーク化』だなんだ言ってたが、それじゃあもう貫けねえんだ……」
ダリヤさんはまるで本物のように話してくるけど、これは僕の精神世界で起こっていることなんだよね? 違う? それとももうそんな事はどうでも良い?
意識が融合しているとでもいうのかな……いやもう、ものすごく頭の中のほど近くでありえないほどうるさくされとる……と、
「おー、ニートさん無事でしたのデスネー、助けていただきアリガトでしたねー」
真顔で佇んでいたら、遥か下の何も無い白空間からとても規則正しい平泳ぎで泳ぎ昇って来る人影が。ヅオンさんも……無事? とこの場で言っていいものか分からないですが、もう無事と決めましたからね?
「ふ……相棒……俺らは正に運命一心同体となったのかも知れねえな……」
かと思ったら何も無い空中を、顔だけニヒルに決めたというかそれ以上の何かが絶対キマっていそうな娑婆ではあまり出会いたくない表情でワケの分からない言の葉をひしゃげた唇から紡ぎ垂らし流しつつ、眼鏡坊主殿がこれでもかの
ともかく。
「みんなの、力を合わせる。みんなの『
それしか無いと、いやさそれこそが最適解だと、僕は思ってた。はからずもあの猫神も初っ端にそうのたまっていたじゃあないか……パーティを組むことで、いいとこ行ったとか何とか。真意は謎だけど。自分を不利に追い込もうとしてるその意図も謎だけれど。
もうやるしかない。
決意を込めた僕の顔を、いい笑顔で見返してくれる四つの顔。よし、いける、この精神世界から目覚めたのならば、いまのこのことは共有されているはず……いくぞ……ッ!!
「現実」へ回帰しようと、やり方は分からないながらも僕がそう強く思った。思えば何とかなる。そう強く心に念じた。
でも僕の目の前には、
「『アーク
螺鈿のような混沌への引き金を怖いほどに落ち着いたまま慎重にしかして確実に引き絞ろうとしている御仁が有無を言わさない感じでおったわけで……ダリヤさんはNO一糸状態で(でも肝心のところは見えない)そんな風に潤んだ瞳で見つめてくるのだけれど。これ僕の妄想内だよね? とか今更ながら困惑の二文字を身体に巻き付けているだけの僕……そして、
ファイナル刹那だった……
カナ「……そうはさせないカナこの泥棒猿ぅァッ!! ただの人間風情に超神聖なる『合身』がそうそう出来るわけないカナぁッ!! そいつはただのセクロスッ!! 曇りないただの性的営みに過ぎないカナッ!! それよりもマスター、私なら、今の私のこの大きさなら……ッ!! 『アーク』を超える一体感を生み出すこと、そそそれは可能と思われまするぞォゥッ!?」
ダリ「大脳が利己的遺伝子に則られ過ぎたことのたまってんじゃあねーぞッ!! 一言一句変わらねえじゃねえか、おまえのそれも、世界はセクロスと呼ぶんだよぉぉぉぉッ!!」
ニュ「ちょっと二人共落ち着いて!! おかしいでしょここに来てのその揉め方ッ!! いい感じでみんなで力合わせていきましょうって流れだったよね? ねえちょっとほんとに……」
ダリ「もういい、お前が選べ。どっちとその……むにゃむにゃしたいかを、良く考えてな? 生存を司る本能にもお伺いを立ててな? やまいだれたいのなら話は別だけどな?」
カナ「きょきょきょ脅迫にもほどがあるカナッ!! まままマスターすぐに私を迷わず選んで猫の奴のついでの巻き込み斬にてこの物騒人間を速やかにこの異世界の土に還した方がよいと思われウググググゥッ!? きょ強烈な締め付けるほどの”痛”みが全身にぁぁあああああッ!!」
タカ「おいおいおいおい……おだやかじゃねえなあ……すげぇよここまでの混沌が出せるたぁ、いやさらには愛も咲き誇ってるじゃあねえか
ヅオ「おー落ち着いてくださいのことネー、ニートさんの言う通りここは皆さんの力を合わせて……」
とんでもない混沌二重螺旋に組み絡みつかれながらも、傍観している眼鏡とは逆に、そのぶれない人柄の良さをいかんなく発揮しつつ何とか場をとりなすようにして、この異世界に咲いた唯一良心ことヅオンさんがその丸顔を困ったような笑みに保ったまま、掴み合いつつ僕の腕を左右に引っ張り体を真っ二つに裂かんとしていた
それが、いけなかった……
もみくちゃ状態の全裸の男女四人という阿鼻叫喚構図から、うまいことヅオンさんが僕を引き抜いてくれた、までは良かったのだけれど、勢い余ってヅオンさんがしりもちを突いて後ろに両脚を上げて引っくり返った、ところに勢いよくつんのめるようにして飛び出していった僕の身体が折り重なるようにしてこれ以上ない角度にて突っ込んでいってしまうのであった……
ヅオ・ニュ「「はうアッー!!」」
――ハイパボリック
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