Quanji-35:美麗デスネー(あるいは、英雄鼓笛/吹き鳴らせよ/一擲旋律)
♢
根源的に困った。
例えるのならポーカーをやっていたはずなのに配られたのが千円分の使用済図書カードと定期にしている印字部が掠れに掠れたSuicaと歳末福引補助券十枚で一回引けますの奴を三枚そのどれもが違う商店街の奴のだよくらいのものだといった感覚……
そんな虚無一歩手前の心うちの僕を尻目に、対面の
考えろ。見た目の
これらは全部「部首」。そこの根源まではひっくり返してこないだろう多分。よく見れば札の上の方に偏って書かれているものもあれば、下、右に寄っているものもある。「へん」とか「つくり」とか「かんむり」とか。「その場所」での使用が限られているものなんだろう。そこにヒントは無いか?
「それでは私から。提示するのは<
妙齢さんがしゃなりといった感じでこちらにカードを示してくる。それと同時に台の上で本体と同じく妖艶さを振りまいていた「
それでも僕は呼吸を意図的に大きくゆっくりさせることで落ち着こうとしている。「平常心」云々もそうだけれど、まずは目の前のことに集中しなければ、道は開けないと、思うから。
「……」
似合わない真摯感に当の自分が凪ぎながらも困惑、という妙なメンタルパターンのままで、それでもひとつ、見いだせた事がある。
<
「……!!」
その意味が分からなくても、それを部首として使用する漢字が分からなくても、とりあえずは「提示」出来るカードってわけだ。「強さ」を示すこと……それはちょっとはぐらかしが必要だと思われるけれどね。意を決し、僕は<龠>のカードを摘まみ上げると、ばんと台に叩き置く。
「……その『普遍的な強さ』とやらを……かき消すがこいつ……」
思わせぶりなタメを込めつつそうニヒルに言い放った僕だったけれど。
「……」
瞬間、僕の
……それが全てだった。
うん、そうか……「笛」やったんやね。「笛」かーえらい画数多いわりには何と言うかのショボさだねどこかの
諦観が、ぶり返すしつこい風邪が如くに、僕の大脳周辺をじんめり覆い尽くすけど。自滅も自滅の平常心振り回され感が全身を襲った、次の瞬間、
じょせふろびねっとばいでんじゅにあぁぉん、のような叫びが、勝手に僕の喉奥から紡ぎ出される。薄れる視界の中で、妙齢さんの
どうやら
いやいやあかんてこれはあかん……と言葉が定まらなくなるほどにすんごいのを喰らわせられた僕の身体はぐらり背後向けて盛大に傾いてしまう。だめだこのまま意識をも失ってしまうよそうしたら「七番勝負」とか関係無しに即刻負けが決定してしまうよまずぅい……諦観はもう、とどめようもないほどに僕の力を失った全身に伝播していってしまうけど……しかし、
刹那、だった……
頸椎辺りに柔らかいながらほどよい弾力を持った何かが左右両側から押し付け挟んでくるよそして僕の身体をその場に留めてくれているよこれは一体なんだろう……? 同時に感じる甘い華のような香り……幾分かの
「……次に手を貸したのならば、反則負けにいたしますよ?」
「あ? 勝手にこのチビが倒れ込んできただけだぜ? それに見ての通り『手は貸して』ねぇよなぁー、ま、十代特有の張りはあるけどその一枚より内部は沈み込むくらいの超絶柔らかさを有したEカップは貸してないとは言い切れねぇけどなぁ」
またも女性陣の間で火の出る言葉の応酬が……ッ!! それより何よりまたしても僕の頭の中の
非常に名残惜しかったものの、僕はそのなまじのネックピローよりも快眠を誘うだろう超絶柔らか
ともかく一局目、負けは負けだけど、それを引きずっちゃあ駄目だ。後ろに少し目をやって、大丈夫か? と覗き込むようにして見てきた黒
まだ勝負は始まったばかり。心が折れない限り、まだまだ負けじゃあないぞッ!! 気合いを入れ直した僕は、姿勢を正して呼吸を落ち着けると、妙齢さんの促しのもと、「第二局」へ臨んでいく、まずはカードを
僕の魂の波動に呼応するかのように、
<
一陣の烈風が……!! これなら。これなら戦える……ッ!!
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