Quanji-32:非情デスネー(あるいは、才能が淵/顕現しじまの/フラジャイリ)
♢
はっきり「罠」と言い切れなくも無い状況ではあったけれど、かと言ってそれを蹴っての肉弾戦、っていうのにも踏み切れない僕がいたわけで。
見渡しても周囲には誰もおらず、
<とりあえず乗る。ダメならのちボコす(十七文字)>
大脳直射メッセージが。物騒なその左隣の送り主の顔と機嫌を窺わんがため振り向こうとしたけれど、
ひょっとしたら/しなくても、この「何とかツイッター」が、切り札になる可能性があるからですよね。オヒキとか、そういったイカサマまがいなゴトが出来得るかも知れない。ダリヤさんはそのことをもう察知して、そしてそういう「意思疎通」が出来てない風を装おうとしている……そうだ、もう戦いは始まっているんだ。
先ほど「大富豪」という言葉が出た。「頭脳を使ったゲーム」とはっきり言った。そうだ考えろって。「力」が満足に使えない今、頼れるのは己の頭一本……のはず。
「……わかりました。そのゲームに、乗ります」
僕は一回息を吸い込んで落ち着いてみせてから、そんな言葉を緊張気味に放つ。横では怪訝そうな顔と、おい、と諫めるような言葉が飛んでくるけど、それは演技、ですよね? あくまでこっちは何も考え無しの、ほいほい
ぐっど、と言ったかどうかはアンニュイ
「……!!」
正にの鼻先。ずんという軽い振動をこちらの足底に与えて来ながらも、その
ポーカーテーブルみたいな感じだ……でもそこに走る真っ白の区画線のようなものは見慣れないものであり。
「ルールの御説明を。おかけくださいな。『一対一』で行う遊戯ゆえ、先に勝負される方が正面に座ってくださいまし」
きわめてゆるりと、しなを作りつつ目の前の妙齢さんはそう促してくる。でも何か、その物言いも意外と胡散臭く思えてきたぞ。油断禁物、それはもう基本の心構えだ。意を決し、表面上は御しやすそうな微妙な薄ら笑いを浮かべながらも、僕は鼻からの息を大脳に吹き込むように鋭く入れ込むと、少し横らへんにあった簡素ながら紅い革の張られた
座ってみると高さはちょうどよい感じで、小柄な僕でも肘がちょうど「台」にかかるくらい、緑白の「盤面」も支障なく見渡せる。
「……『
ジャニュアロさんの細い指が、いつの間に、だろうか、「台」の片隅にトランプのように
<冫>
墨痕鮮やかな……「にすい」か、が、縦長長方形のかたちの「カード」の左に寄るようにして記されていたわけで。うん、何となくそこに何かしらを書き入れて、それをお互いが出し合うんだろうな的なことは分かった。分かったけど、「勝敗」はどうつけるっていうんだろう……
「出したその『漢字』の……質は問いません、ただその『強さ』を説明できれば結構。相手よりも強いということを……言葉で証明し、相手をねじ伏せた方が勝ちという……これはある意味『魂のゲーム』ということになりますわね……ふふ」
だんだん、だんだんキナくさぁい……妙齢さんの銀色の瞳が怪しく金属的にぬるりとした光を発し始めておる……でも、まだ気になることはあるぞ、勝敗の
「……判定は、あくまで当事者同士で決めます。それは『平常心』を測定する
簡単じゃあないよ。なんだそれ、まったくもって初見のこっちが圧倒的不利じゃないか……でも。
<お前の漢字力信じる駄目でも骨は拾う(十七文字)>
ぷこりと浮かんで来た文字は、僕に凄まじいまでの落ち着きとやる気を与えてくるものであったわけで。
やってやる。やってやるんだぁぁぁぁぁ……ッ!!
急速に気合いの入った僕は、また思い切り鼻息を大脳方面へと送り込んでいく。
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