Quanji-18:拙速デスネー(あるいは、視点/四点/支店はじめました)
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……いや何でぇ、最近は意識を奪われるなんてレアなことがさも普通ですよみてえに起こりやがるけどよ。そいつが異世界流ってやつなのか? はた迷惑な話だが。
何とかっつう敵の親玉級の全体的に白い女に、何かしらの「攻撃」なんてぇもんを喰らった、までは何とか認識できたものの、まさか意識と一緒に、
「……」
身体まで飛ばされてるとは思わなかったぜ。どこだここ。
見上げれば青空。そして視点を落として周りを見りゃあ、ぐるりを黄ばんだ石造りの「観客席」みてえのに取り囲まれていることが分かる。俺らはさっきまでピラミッド的なところの内部へと踏み込んではいかなかったか……?
「……!! ……!!」
それより何より、えれぇ盛り上がりようだぜ。客席……というほど座席は無さそうだが、まあ野卑そげないかつい顔・顔・顔がずらとx軸y軸方向に鈴なりに連なり広がっていっていて、何事かを吠え叫ぶようにぶつけてきやがるが。
まあひとことで描写するなら「コロシアム」。あるいは「コロッセオ」、でもいいかも知れねえが。ともかく古代ローマ的な闘技場めいたところの坩堝ど真ん中に何故かいきなり俺は放り込まれていて。
「……随分、華奢なる者と手合うようだな……あまり興が乗らんが」
なまじハリウッドナイズはされてなさそうなところの品の無いグラデュエーターと表現したらいいか、縦幅二メートルは優にありそうな革鎧を身につけた筋骨隆々の大男がその屈強な肉体の上に乗るにふさわしいと言やあふさわしい人語を喋くってくることが逆に脅威と思わせてくるほどのホモサピエンス一個手前くらいで進化を諦めたかのような原人ズラを軋ませながらそんな野太い声を浴びせかけてくるんだが。
何か、いろいろメタメタだな……
転移してきて間もないってぇのに、また違う世界に来ているのか俺? との大丈夫かこれ、このすべて全部? 的な、いやな意味でいやな悪寒のようなものが俺の右半身にだけ侵食してくる気がして思わず痙攣するかのように身体を震わせちまうが。あんだけ漢字漢字言ってよぉ、ワケわかんねえうちに寿命を削られていた俺の砕身はよ?
とか思ってたら。
「……見ての通り、これより俺と貴様は一対一の『決闘』を行うと相成る。貴様らの力を測れというのが、我が主、『月』の御方の意であれば」
いや繋がってたわ。そしてよくよく五感を研ぎ澄ませてみると、何というか、目に入る汚え顔した群衆やら、何か変な反響をしてくる喧噪だとか、身体に感じる空気感も、何と表現したらいいかは何とも言えねえが、全部が全部、嘘くさい。
質のいいVRってとこだ。周りはただの舞台装置ってわけかい。手が込んでるっつーか、こういうとこに凝る奴って、肝心なとこが抜けてたりするよなぁ……此処はおそらくはあのピラミッドの内部のまま。何らかの「幻」とかを見させられているってセンが濃厚だよなぁ……
要は
それにあのイキれ姐ちゃんはともかく、相棒とか兄弟は大丈夫かよ。こんな物騒事に慣れてるとはとても思えねえが。て言うかあの猫、パーティ組めば何とかっつってたが、物の見事に掬われてんぞその肉球を……とは言え、
「……割と落ち着いているな、そして先ほど見させてもらったあの『剣撃』……素晴らしい威力であった、あれこそが『
うん……俺の相手は割とテンプレチックな奴でほっとした……「おっさん」「パワー系」「初っ端」「真っ向武人」「こちらを何故か一見で一目置いてくる」……噛ませ犬のフルハウスが出来そうな布陣を明白に突きつけられて、俺は凪いだ目で自分の黒玉から結構馴染んで来た得物を引きずり出してみせる。そして、
「<二“刀”流>……」
ぬらり出て来たその真剣を両手で保持すると見せかけて身体の前で左右に割り箸を割るが如くに分断させる。思った通り、「想像」出来たことなら何でも「創造」できるがこの謎能力よぉ……へっへっへ、しかも寿命が減らない「三文字」でっつぅ、これでもかの手練れ感……いやぁシブいねぇ……
俺もなあ……「こいつ」の使い道を考えてねえわけじゃあねえんだよ……いやむしろ常に考えを巡らせているゥッ!! それは!! それはいつか!! あの、体は百点/性格二点の性悪女をひれ伏させ、その服だけを切り刻み散らさんがためにぃぃィギヒィィアッ!!
「……何たる闘気……そうだ、見た目で判断するは俺の度し難き悪癖よぉッ!! ならばいざ尋常にだ……我が名『イチヴォ・ネロンギ』、『
分かりやす過ぎるメンタルではあったものの、反面、野郎の能力は……謎に過ぎる。「たてぼう」って何だよ何が該当するとかそもそも掴ませて来ねえよ……が、関係ねえッ!! 正にの真剣勝負ッ!! ぶぅっっった斬ったらぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああッ!!
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