Quanji-02:強引デスネー(あるいは、金輪絶対/始まらない時空/光あれ)
ネコォルと名乗った、その華奢なりしも
刹那、だった……
「いやぃやいやいやいッ!! いやおい何だっつうんだよ!! おいこれ!! おおぽっつりイカれてやがんのかぁッ!? おいお前だよそこのサイコパスッ!! ととと早く俺らを解放して所轄に行」
僕の斜め右前で同じように学校の机椅子に腰掛けていた、ひょろ長い体躯の男子高校生(多分)が、思てたんのよりも大分イキれかたが堂に入った感じで、さらにイキレテンプレ集の第二巻冒頭くらいに記されていそうな、「椅子の上に立ち上がり、机の天板に片脚をだんと叩きつけるように踏み込みつつ怒鳴る」という様式美を踏襲しながら、それでもこの重苦しい空気を打ち破るかのようにそう、変声期は確実に終わっているもののテンション高まると素で金属質の裏声が金切ってしまう残念な声質ながらも果敢に斬り込んでいってくれたものの、突如としてその気障りな胴間声がふつりと途絶えるのであった。それは、
「……!!」
全てを見越したかのような「猫顔」のあざといほどにアンニュイな溜めを作ってからの長い右人差し指の先から放たれた一条の細い青白い光線が、怒鳴り散らすイキレ学生の心の臓辺りを即応で貫通していたからであって。無言で引っくり返り、よせば良かったのに一段高い所に登っていたもんだから、その昔の高校球児のような青々とした坊主の後頭部を、自分の椅子と後ろの女生徒の机の隙間に上手に挟み込ませるようにして、そのまん丸のレンズの眼鏡の奥の細い目を白剥かせながら、そのイキレくんは、果てた……そして、
「無礼者は……成敗。これ異世界の
先ほどまでの愛くるしい笑顔は吹き消され、ただただ対峙する者たちに平等に恐怖を表皮以深、真皮の中奥までつらりと刺し込んでこんばかりの、冷徹を通り越したかのような無感情のがらんどうな表情が、そこにはあった……
十六年間生きて来て初めてのどうあがいても呑み込んでくるだろう波濤が如きの恐怖感に、まばたきすらしたら殺られるかもくらいの慄きかたをしている自分を、さらに俯瞰するように見ている自分をも感じるばかりなのであるけれど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます