(漢字イイネ!!>聖★漢闘士=ヅオンさん

gaction9969

Quanji-01:唐突デスネー(あるいは、始まりは/様式美に)


 何だ? 何が一体、いったい何が……?


 たしか。確かに僕は教室にいて。5時限目体育の後の6時限目の古文という、


「……」


 いちばんエキサイティングな授業を、前のめり込みながら受けていた、はずだ。


<これから……アナタたちには……殺し合いをしてもらいます……>


 だのに、何だッ!? 二学期も半ばになって、そろそろ愛着も湧いて来た自分の机と椅子はそのままだったにも関わらず。


「……」


 辺りは、昼下がりひだまりの教室からは、遥かにかけ離れた様相を呈してきているわけで。


 まず、足元に広がるのは桃色ピンクい雲だ……およそ現実味を殊更に排除してこようとせんばかりの、アクティブな非現実さを網膜に直で刺し込んでくるかのような、そのような鮮明ショッキングな色合いだよ何だよこれもう……


 今の今までそこに居たはずの、教室の窓とか壁とか天井とかは、いっそ潔いほどに取っ払われていて、見たこともないような、それこそ地平線の先まで見渡せるような、そんな大空間の中ほどに阿保のように腰かけている自分を自覚はしている。


「……」


 そして周りにも、この事態を僕と同じく1nmも理解は出来ていないだろう、ちょうど僕が存在をしていたはずの「横浜市立久里浜北高等学校」の「1年B組」の教室での配置と同じながら、見知った後ろ姿とは異なる人々の影が、うつろに僕の網膜には映り込んではいるのだけれど。


 あまりのことに、あ、これ夢かなあやっぱり持久走の後の授業ってどんなに中身興味深かろうと睡魔に打ち勝つ術はやはり無いよね……的な、夢で済ませてしまえよもう、という果敢ない祈りにも似た僕の切なる想いを、鋭利な鉈状のもので断ち切らんばかりに。


<かくゆー私はぁ、最強にて最カワワな、天上天下超絶★美女神こと、『ネコォル=不二田・キッドメン』ですニャン♪>


 教壇のあったとこ辺りに代わりに鎮座していた、優雅で豪奢な玉座みたいなのに座った輩から飛び出してきた、そんないきなり大トロのサシばしったところから供してくるような、江戸前の流儀を知らなそうな脂ぎったコテコテの自己紹介に、僕は真顔になる以外の反応リアクトを返せずにいるばかりなのだけれど。


<アナタたちは選ばれし勇者……『部首魂ラディカルソウル』を有した、この世界を救うべく招来された、正にの戦士……『聖★漢闘士セカント』なのです……>


 その、どう好意的に見積もっても、オーバーエイジ枠側のアラサーと思しき、しかして妖艶さをその全身に(特にその上半身に躍る双球に)宿した、猫の耳をした(頭に付いているのではなく、我々人類が耳殻の所在地たらんところにヒマラヤン然とした猫耳が生えているという規格外の)妙齢の女性が、招き猫を模したポーズで、これでもかのウインクをしながら言い放った、その意味を1μmも掴ませてこないかのような言葉が、全ての始まりだった。


 僕と、烏合の漢字戦士たちの、壮絶な戦いの幕開けだったのであった。


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