▶EXIT:真実の物語は不幸のはじまりか?

 ”蓋”を開けて、二人で地上へ出る。夜空には雲一つなく、星空と月の光が崩れかけた街を照らしていた。どうやら、数百年の間にこの街にはもうほとんど人は住んでいないようだった。忘れ去られた都市を守るために、犠牲を強いられていたかと思うと、怒りすら湧いてくるようだった。こんな人類なら滅びても構いはしないと思えた。しばしの間街を眺めていると、街のど真ん中の”扉”がゆっくりと開くのが見えた。


「世界の終りの始まりだ…。」


 そよぎくんがそう呟く。優しい彼は少し悲しそうな表情をしている。この世界にまだ残っているかもしれない僅かなゴミが掃除されるだけのこと…だと思うのだけれど。


「たとえもし、そうだとしても…私たちの犠牲の上に数百年も平和が成り立ったのなら、もう充分じゃない。それに、本当に滅びるかどうかはこれから次第よ。」


 扉の隙間から真っ黒な塊が這い出ていくのが見える。わたしが握りしめた白刃が、月の光を受けて一層輝いた。

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