4人は長老の木で出会う
「やっぱり大きいですねー。それにいい匂いー――」
満開の白い花を咲かせた大木―長老の木―がそびえ立っている。木の周りは他よりも一段と暗く、木を中心とした20メートル周囲には下草しか生えていない。
「よしっ!到着だなっ!!木の穴に行くぞっ!」
「待ってくださいー。その前に休憩しましょー。ボブ君が疲れてますー」
ボブを見ると汗だくで呼吸も荒い様子だ。
「うむっ!そうしようかっ!!」
近くにあった木製のベンチに4人で掛け、ナツから水を貰い休憩する。
「あーっ、見てくださいー。小鳥さんですよー。あそこにもいますー!」
ふと見るとグレーがかった鳥が行ったり来たりして飛んでいる。鳥は常に長老の木を中心にして動いているようだ。
「よしっ!そろそろ行くぞっ!!」
ボブの様子を見計らいあっくんが動き出した。3人も続いて立ち上がる。
長老の木を半周したところで4人は木のウロを見つけた。中は子供4人が入れるぐらいの空洞になっており、基地っぽいものを作るには都合がよさそうだ。
「これはっ……!いいなっ!!。ここをきちとするっ!!!中に入るぞっ!!!!」
長老の木の中はまた一段と涼しく、居心地がよかった。
「すごいですね、これはっ!タイチョーっ!これからどうしましょうっ!」
「うむっ!そうだな……」
目的地で理想の場所を見つけ、2人は夢中になった。ふと、外を見ていたナツが口を開いた。
「また鳥さんたちがいますよー、ずっと歩いてますねー」
さっきのグレーの鳥だろうか、木のウロの前をあっくんたちを見ながら歩いていた。よく見てみると虫を咥えている。少しするともう1羽飛んできて、同じようにウロウロするのだった。
「むっ!ほんとだっ!!どうしたんだろうっ!!!」
普段は見ない異様な鳥の行動に、あっくんたちも鳥を観察する。
「どうしたんですかねー。……って、きゃっ!」
意を決したように1羽が木のウロへと飛び込んできた。素早くあっくんたちの頭上を抜け、天井付近に作っていた巣にとまる。鳥はここで子育てをしていたのだ。よくよく天井を見れば、まだほかにも鳥の巣がある。
「なにっ!ここには鳥の巣があったのかっ!!」
「わぁ、とりさん、とりさん」
思わぬ先客に、あっくんをはじめ一同は驚いた。
「うーん、鳥さんたちは私たちに怖がって、入ってこれなかったんですねー」
「どうしますっ!?タイチョーっ!」
よっしーがあっくんに決断をうながす。この問いかけにナツは口を挟まなかった。
今のあっくんなら心配はない、正しい決断ができるという信頼が、2人から伝わってくる。
「きち作りはやめるっ!鳥たちにここをあけわたすぞっ!!」
「そうですねー鳥さんがいたんじゃ、作れませんもんねー」
「とりあえず出ますかっ!グレーの鳥にジャマなようですしっ!」
4人が長老の木を後にすると、グレーの親鳥たちは一斉にわが子のところへと行き、ヒナたちへエサを渡した。
気付けばもう昼になるぐらいか。4人のお腹の虫も鳴きだした。
「あのね、ボブね、おなかすいたぁ」
「ボブくんお腹すいたんですかー。じゃあー、そこのベンチでごはんにしましょー。ママの特製ですよー」
じゃーん、と出てきた弁当にみんなでかじりつく。3人の笑顔にナツもご満悦だ。
お腹もふくれ、長老の木の下でのんびりと過ごす。吹く風に乗ってくる肥えた土の匂い、長老の木の花の匂いが心地よい。とても敵が来るなんて思えない昼下がり。
「帰るかっ!」
4人は山を下りるのだった。
小学生4人、休みの日に山へ行く hiroshi @tonnjinn
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