第二装 『魔装』

何処かのどこかしらの荒野。

其処に小さな村を背に

一人の少女が佇んでいる。



眼前には

砂煙を巻き上げながら

見渡す限り荒野を埋め尽くさんとばかりの魔族の群れ。

此らは、七魔柱が一人『魔装』グレゴリア率いる魔軍である。その数一万と五千。その隊列は進軍から歴戦の風格を感じられる。


一人の魔族が伝令の為に地龍に乗った煌びやかな天幕へと入ってゆく。

「閣下 お忙しいところ失礼致します。伝令が御座います。」

恐らく軍団長であろう魔族が先鋒に布陣している部隊からの映晶石からの通信を伝えに来た。


「何だ…。俺は今忙しいのだ先程の植民地にした村から攫ってきた女が上玉でな… クク」

牛の様な角を頭から生やし身の丈2メートル強といった酷く醜悪な姿かたちをした男は寝台にある供物達をを品定めする様に下卑た笑みを浮かべる。


「それは 申し訳御座いません。 フフ…然しながら 我らの次の進行方向の村の前に少女が1人立ちはだかってるのですがどう致しましょうか? 」

魔族の男は薄ら笑みを浮かべながら報告をする。


「ふむ。村の貢物か…まぁ少女一人で進行は止まらんがな ガハハ まぁ、そんな詮無き事どうでも良い して容姿は?」

グレゴリアは下卑た笑みを浮かべる。


「こちらの映晶石を フフ なかなかの上玉で御座いましょう閣下のお眼鏡にかなうかと。」

魔族の男は下品に笑う。


「良かろう。先鋒隊には褒美をやろう。俺が遊び終わった後に 血肉から愛玩にするなり好きにするが良い。俺は慈悲深く博愛だからな グハハ」

グレゴリアは盛大に笑いながら諸手を広げて下卑た笑みを浮かべながら映晶石へと目を移す。


「フフ 有り難き幸せ。必ずや迅速にお運び致しますので今暫くお待ち下さい。クク」

魔族の男は片膝をつきキザに一礼すると 踵を返す。


「おい 念話を繋いでおけよ。少女の恐怖に泣き叫ぶ声は何ものにも変え難い甘美なるものだからなぁ……グハハ 」

グレゴリアの声掛けに肯定し魔族の男は先鋒部隊へと飛び立って行った。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


グレゴリアからの指令により進軍を再開し

瞬く間に村の手前つまりは少女の目の前に先鋒部隊が到着した。


少女は俯いたまま

胸に手を当て動かずにいる。


先鋒部隊の醜悪な顔をした身の丈程の棍棒を担ぎながら一人の魔族が歩み出て下卑た笑みを浮かべながら。

「おい、お嬢ちゃん こんな所でどうした?迷子か可哀想によぉ おじさんがよ 手を繋いで一緒に親御さん探してやろうか?グヒヒ」


「ぅ…れ…しぇ…なぁ……」

少女は俯きながら何かを呟いている。


先程の魔族の男が 歩み寄り

「んっ?何だって?今なんて言ったんだい?この親切なおじさんになんでも言ってごらん…よッ? 」

少女に近づき耳打ちする様に掴みかかろうとする。周りの魔族はそれを見て手を叩いて笑いながら。


ズブり

何かが貫通する様な音と共に間欠泉の如く血が吹き出る。

「がッ!あ゙ぁあ゙ぁ」

魔族の男は短く断末魔をあげると息絶えた。

異形の槍が貫き酷く冷めた蓋が閉まるような乾いた音を立てると用済みとばかりに亡骸を投棄てると

少女がゆっくりと顔をあげ。

「おじさん達……るりと遊んでくれるの?! うれしいなぁ♪うれしいなぁ♪ 何して遊ぶ?! るりはねぇ るりはねぇ 『鬼ごっこ』がいいなぁ♪ 私が『鬼』ね?じゃあ すったぁーと だよッ!!」

楽しげにスキップをしながら遊びに興じる様に狂った笑みを満面に浮かべながら表情をコロコロ変えながら少女が 槍を片手に宣言と共に駆ける。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


煌びやかな天幕の中。

先程まで念話での連絡をとっていた魔族の部隊長からの連絡が途切れてから小一時間が経とうとしていた。

「早くだ!貴様ら早く俺に鎧を着せろ!!早くだ このウスノロめが!!」

グレゴリアは奴隷達を怒鳴り散らしながら酷く焦って鎧を着て出陣の準備をしていた。


グレゴリアは固唾を呑みながら天幕をくぐり表へと出る。

「なッ!?何だと…こ、これはどうゆう事だ…ッ!?」



グレゴリアの眼下には

かつて豪傑を誇り魔界随一の自分の軍隊の姿は無く、唯唯無惨に胸を穿かれて事切れた魔族の死骸が積み重なっていた。


「ばッ…莫迦な!!我が軍は精鋭中の精鋭 魔界随一の……認めはせぬ認めはせぬぞ…一体何者がこの様な事を…」

グレゴリアは目の前の状況が信じ切れずにただ焦燥し呟きを繰り返す。


しかし

それと同時に激しい怒りも感じた。

この状況を生み出し元凶 に

それは自分の軍の亡骸を重ねさながら山の様にした上に腰掛け楽しそうに此方に狂った瞳を爛々と向けながら笑みを浮かべながら身の丈以上の槍を背負い 眺めていた。


少女は一伸びし欠伸をしながら。

「ふわぁあ…なぁんだ つまんないの…おじさん達すぐ捕まっちゃってさぁ ぜんぜぇん楽しくなかったなぁ……ねぇ、おじさんは…おじさんならさぁ…るりと遊んでくれる?後これあげるね♪」

少女は笑いながら足をパタパタさせながら片手でグレゴリアの足元に 先鋒部隊の軍団長の首を放り投げた。


グレゴリアは『魔将』の二つ名を有し七魔柱随一の戦術・兵法に長け 他の七魔柱に恥じぬ強さを持っている強者である。

だが

しかし

グレゴリアは恐怖した。

身動ぎ一つ出来ずに、汗が額から背筋に駆け下がるが如く全身から警鐘を目の前の得体の知れない少女から感じた。


しかし

『魔将』の肩書きも伊達や酔狂で成れるものでは無い。


グレゴリアは口火を切る。

「き、貴様は 何者だ!俺は、七魔柱が一人グレゴリア=ゼガ=ファング 貴様が沈めた軍の王よ……何が目的だ?」

グレゴリアは腰に差した身の丈程の大剣を眼前へと抜き放ち構える。


すると

少女は俯いたかと思うと低く底冷える様に

「……用などない。ただ、死んでくれればね…あの男『魔王』の居場所を吐いて…ねッ!!」

少女はそう告げると異形の槍を抜き放ち獣の如く駆け グレゴリアとの間合いを一気に詰め 穿つ。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


しかし

それを、寸手で大剣にて受け止める。


「くッ!!……な、なんだと『魔王』だと?!貴様、最近魔界を騒がせる

魔族狩りの『魔槍』か?!」


ギリギリと鍔迫り合いをしながらもグレゴリアは膂力にて異形の槍を弾く。


大剣を構え直しながらグレゴリアは思考する。

魔界では、ここ最近にて魔族 特に力が強い魔族が奇妙に殺されるとゆう事件が多発していたどの遺体にも心臓が丸く綺麗にくり抜かれこの世の地獄に触れた様な苦悶の表情を浮かべ絶命した姿で発見されるとゆう様な見るも無惨な事件である。偶然居合わせた死霊術師は殺された者と会話することが出来たらしく こう聞いたそうだ。

「あれは魔神の化身 少女の姿を形取った悪魔 魔槍を携え死を纏う者『魔の王』討つまで終わらぬ死の行進曲 殺戮は続く 始まったのだ」と。


少女はくるりと身の丈よりも大きい異形の槍をバトンの様にくるくると回すと

「えっへへ♪えー、 おじさん今さらぁ?

気付くの遅すぎるんじゃないのぉ?おじさんの大事な大事な軍隊さんもさぁーるりを楽しませる事も出来ずに先におやすみしちゃったけどさぁー おじさん確か『魔将』だったよねぇ? 何処に指揮する部下がいるのかなぁ? ぷーくすくす!!」

少女はグレゴリアを煽る様に狂気じみた笑みを浮かべながら挑発する。


グレゴリアは青筋すら切れんばかりに憤慨する。

「きッ、貴様ぁぁあ!! 小娘風情が調子に乗りおってからに!!…いいだろう。貴様が『魔槍』だと分かったのなら手心など微塵もなく粉微塵にしてくれようッ!!集えぃ!!我が従順なる軍よ!!我が血となり肉となり我が剣と成れ 其、『魔成る将也て魔を纏う者也て魔装と為す』魔装タイラントデュラハンリオンッ!!」

グレゴリアは高らかに大剣を掲げると瑠璃によって無残な骸に成り果てた軍が一人でに浮き上がりグレゴリアに一挙にして吸い寄せられるように集い次々と大剣へと吸収しながらグレゴリアの姿を変貌させてゆく。


「」




















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔神の心臓 棚と酢 @kurono1224

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ