魔神の心臓

棚と酢

第1槍 プロローグ 『魔槍』

荒れ果てた大地。


「答えてよッ!………なんで…なんでお母さんを殺したの?! ねぇ…何で!?」

血濡れの少女が息も絶え絶えに力ない足取りで立ち上がる。



応えを受ける男はゆっくりと抱き抱えていた息絶えた女性を優しく地面に横たわらせると少女に背を向けたまま虚空を見つめたまま静かに語る。


「これより私が『魔王』となる、それはその礎よ……許せ 我が娘よ。

そして、すまないフレアを救う事が出来なかったいや守る事が出来なかった父を……では達者でな。」

己を『魔王』と名乗った一度少女に振り返り微笑むと飛び立って行った。



「待っでッ……待ってよ……お父さん…まってよ…やだよぉ…瑠璃を……るりを一人にしないでよ……おとぉさーんッ!!」


少女はただ涙を流しながら掴めるはずもなく遠ざかってゆく男の背を掴もうと手を必死に伸ばす。



荒野に残されたのは、少女と無惨な骸と成り果てた母。


泣きじゃくる少女にふと酷く濁って無機質な邪悪な囁きが聞こえてきた。

『辛いか?悲しいか?悔しいか?憎いか?』



少女はふと辺りを見渡すが人影の気配も姿も形もない。

「誰?…だれかいるの?」

少女は応える。


すると、酷く濁って無機質な邪悪な囁きが響く。

『あぁ 居るともお前の心にな。其れでさっきの質問のどうだ?まぁ言わずもがなわたしの心はお前でお前の心は私の心だ。ふふ 分かるがあえて聞こうでわないか。さぁお前はどうしたい?』


酷く濁って無機質な邪悪な囁きは嘲る様に段々と笑みを深くし問いかける。



少女は拳を血が出るほど握りしめ胸を掻き毟り声を引きずり出すように。


「瑠璃は……お父さんを……

いやッ!……『魔王』が憎いッ!!

瑠璃は…やつをッ! 『魔王』を殺すッ!!」


すると、

少女の胸が 否 心臓が光だし。再び声響く。


『フフ…いぃ憎悪だ。いいだろう……ならば抜け。お前が望む力お前の願い叶えてやろう対価は……まぁ自ずと分かるだろう……私は『魔槍サタナエル 』私はお前でお前が私だ まぁ仲良くやろうじゃないか フフ』

無機質な邪悪な声は嗤い、紅く輝く少女の胸からは剣の柄の様な物が飛び出ている。


それを少女は迷わず其れを引き抜き

其れは異形の槍

切っ先が王冠の様に鋭く山波を打った形状

紅黒く地獄を塗り固めたかの様な槍身。


其れを手に少女は狂った様にただ嗤う嗤う

母を殺した

仇『魔王』を討つ為に。













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