あとがき
ともかくも、皆さま、この作品を読んでくださり、まことに感謝にたえません。
十万字程度の小説ですが、書き終わっても、じつはまったく疲れておりません。とっても楽しく執筆してくることができました。
というのは、登場人物たち、特にシノブとトビタなんですが、このふたり、実に勝手に、いきいきと、動いてくれたからなのです。
戦闘中に勝手に悩みはじめたり、勝手にお互いを心配しだしたり、あげくのはてには、なに勝手にキッスなんぞしてるんだ、というくらいです。
この小説はほんらい、人間性をまったく廃した、酷薄な人物しか登場しないはずでした。それがこのふたりは、私達はそんな人間じゃない、とでも言いたげに、作者の構想を無視して勝手に動き回りました。私は、それをただ文章にしていただけでした。もはや作者というより、ただの筆者、と言った方が正確なくらいです。
おかげで、トビタは冷酷にシノブをコキ使っていたはずなのに、いつの間にかそれは、お互いの思い違いや行き違いの結果、ということになってしまいました。
シノブは十代の年頃らしい反抗心と経験の足りなさからくる思い違いとで、トビタは単に無神経な男で、歯車が食い違ったまま物語が進んでいきました。
ただ、こうなると、筆者として、ふたりとも可愛く思えてくるもので、シノブに過酷な過去を背負わせてしまったことを申し訳なく思えてきました。なので、終盤に追加した挿話(過去編)には、シノブが男性あいてに商売をしていたことは書けませんでした。
この物語自体は、もう十数年も前に、アドベンチャーゲームでも作ろうかと思い、学生時代に作った自主製作映画をもとに、ストーリを構成しなおしたものです。
当時はまだ、ライトノベルのジャンルがどれほど確立されていたのかは不明ですが、今でいう、チート、ざまあ、追放、無双などの要素を、物語中に、広義で含んでいる部分もあり、ジャンルの確立うんぬんの前に、物語の基本的要素というのは、今も昔も変わらないのだという気がします。
もともとがアドベンチャーゲーム用のストーリーだったこともあり、最後はバッドエンディングで終わっています。バッドエンディングらしく、謎要素が残るような、主人公の最期がはっきりしないような、ちょっともやっとする終わり方です。ハッピーエンディングやノーマルエンディングも構想としてはあるのですが、それらの結末は読者諸氏のご想像におまかせしたいと思います。
最終回に唐突に登場したハットリさんは、アルマイヤーに登場する服部さんと同一人物です。アルマイヤーもあわせてお読みくださるとうれしいです。ちなみに、謎が深まると思います。
名前といえば、固有名詞をカタカナにしたのは、世界観が現代日本とはかけ離れたものに感じられたからです。ちょっと別次元感をだしたかったのでカタカナになっています。
名前に関しては、敵組織のサバタリアン・ファーマスティカル。
アルファベット表記では、Sabbattarian Pharmaceuticalになります。
問題はこのPharmaceutical。
カタカナで書けない。
発音をネットで調べると、ファーマスィリコォと言っているように聞こえるのですが、そのままカタカナにすると、なんだかどうも、なにかが違う。現実の日本の製薬会社は、もう開きなおって、ファーマで切ってしまっているくらいです。
はてどうしたもんかと考えた末、もうどうしようもなくなり、ファーマスティカル、にしました。ですので、実際とは違う、物語中の造語くらいに思っていただいたほうがよさそうです。
さて、この小説は、読者を選ぶ、というより、読者に選り好みをされる小説だったと思っています。実のところ、あえて、そのような物語にしました。
本来の私の作風とは一線を画すようなところもあり、今後はもう、このようなバイオレンスとエロスの小説は書かないと思います。
アルマイヤーのような、ソフトタッチの格闘とエッチなのは書きます。
では、最後にあらためまして、読者諸氏、ツイッターでの告知を拡散していただいたフォロワー諸氏、応援してくださった方々、皆々様に感謝をささげたいと思います。
2020年12月17日。
さたんず☆きってんず −Satan's Kittens− 優木悠 @kasugaikomachi
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