第46話 これからも。
講義も終わって、サークルのチラシを見ながら。僕は一つの驚くべき事実に気がついた。この大学のサークルには軽音というものがない。ブラスバンドもアカペラも、ロックもサークルがあるのに軽音がなかった。
まじか… そう予想外な展開を目の当たりにしながら、大学の至る所で活動している学生を横目に見て大学内を歩いてく。
軽音なんて、音楽関係のサークルがあったとしたら真っ先にできるものだと思っていたが、そんなことはなかった。
そうか。軽音は少し古いのかな…
ちょっと、いやだいぶがっかりだ。別に軽音に似ているサークルに入ればいいだけの話なのだろうけれど、どうしても思い入れがあって気にしてしまう。
気分転換に一駅か二駅分歩いてから家に帰ろうか。そう思いたってチラシをカバンに突っ込んだ。そして、それを背負って歩き出す。
敷地から出ようとした時、ふと4階にある窓から視線を感じた。何か、どうしても確認しないといけないような、どこか懐かしいような感覚に襲われる…
まあ、僕みたいな人間にストーカーがついていくようなわけでもないし、別に明日でもいいか、と。気分も落ち込んでいたのも合間って、感覚を無視して歩き始めた。
いつもは階段を上がっていくはずの駅の横を通り過ぎて、車窓の奥に見ていた景色の中に溶け込んでいく。ぱっと見しかしていなかったカフェや古着屋。普通に通学していただけだったら絶対に寄らないような店や公園をいつもよりちょっと長い時間見ていることができる。たった二駅の間だけでも、意外とたくさんの暇つぶし場所があることに驚いた。たった5分もかからない二駅間を30分もかけて歩いて、二駅目手前に河原があることを思い出す。二駅目手前の線路がちょうど大きい川に比較的近付いていて、いわゆる河川敷というものが少しだけあるという感じになっている。実際に見てみて
「ここなら」
と、イメージ通りだという感想を抱けた。
この次の日から、荷物が少ない日はギターを背おって大学に行くようにして。そして、USBメモリのPWの開拓も再開した。
そういえば、あの時感じたみられているような感覚は、今でも時々感じるようになって、いよいよ原因を確認しないといけないなと思い始めた。感覚自体は大学にいるときにしか襲ってこないから、大したことじゃないんだろうけどやっぱりこういうのは気になるものだ。あのときみたいに、何か人生の転換点につながっていることもあるから。
君と奏でるこのメロディを 松風一 @Matsukaze_1234
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