0.5話 飼い猫から野良猫へ
「猫ちゃん、ばいばい」
いつも私の頭を撫でてくれる可愛らしい人間の女の子が手を振っている。
いつもはもっと近ずいて撫でてくれるのに、なぜだろう。今日は距離が遠い。
「あらまあ。お嬢様ったらいつもはあんなにべったりなのに。人間の姿の猫さんだと怖いんですかね。まあそれもそうですよね。フフフ。」
いつも私に美味しいご飯をくれる人間がくすくすと笑う。
この人間は長いこと一緒にいるが、好きになれない。なんか怖いし。
「うーん、ずっとこんな姿でいたら、誰かに通報されて終わりだな。…仕方ない、アイツと会えたらその日の夜以降から人間になれるように変えておくか」
いつも私を見てため息を吐く不気味で怖い人間の男がまたため息をはいた。
怖い人間だが何処か優しい目をしている。私はそんなに悪い奴ではないと、思う。
「さて、やっと準備ができた。あとは自力で頑張れよ。」
男が私を撫でた。男の手の大きさがいつもと違う気がする。まあいいや。
今日はなんだかとても眠い。私はふわぁ と伸びをしていつものように眠りについた。
起きたらいつもの美味しいご飯を食べて、女の子と遊んでまた眠りにつくんだ。そんな毎日をずっと過ごすんだ。
でも
本当は、その普通で幸せな日常が何処か物足りない気がするんだ。
「じゃあな、シザー」
男の声が聞こえた気がしたが、強い睡魔にかき消されて消えた。
青年と猫 とまと @tomato0717
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