後日談10
アルティリアには二人の子供がいる。兄のアレックスと、妹のニーナだ。子供といっても養子であり、彼女は未婚で出産経験は無い。そもそも種族も違う。アルティリアはエルフであり、二人の子供は
そんな子供達は最近、よく街の外へと出かけている。アレックスは好奇心旺盛な冒険野郎としての片鱗を見せており、しばしば街の子供達と共に森に入って、日帰りの冒険や魔物退治をしていた。また時々、船に乗って遠くの島や港町に行って、数日間帰ってこない事もある。
監視役兼護衛役として
そして妹のニーナも、養子に迎えてここに連れてきた当初は、兄のアレックスの側を離れようとせず、いつもついて回っていたが、少しずつ自立心が芽生えてきたのか、一人で行動する事が増えてきた。アレックスが遠くに冒険に行くようになったのも、それを悟ったからというのが大きいだろう。
そんなニーナは朝早くに、ペットの飛竜(名前はツナマヨ)と共に、街の外へと飛び立っていった。アルティリアが作った、母子共に敬愛する兎先輩のキャラ弁を持ってだ。
そして夕方になって、ニーナが帰ってきた事を知らせる物音を、アルティリアの鋭敏な聴覚が捉えた。エルフは耳が大きく、聴力に優れる種族である。また種族的特徴として弓に長けている為、視力も良い。尤もアルティリアは生まれてこの方、弓など一度も使った事が無いが。そもそも彼女は胸が大きすぎて弓が引けないという、エルフとして致命的な欠陥を抱えている。
そんな爆乳エルフが帰ってきた娘を出迎えようと神殿の外へと出ると、そこには愛娘であるニーナと、彼女が飼育している一頭の飛竜、そして……見慣れない生き物が一頭いた。
より正確に言えば、アルティリアはその生物を知ってはいる。まだ宮田洋介という名の地球人だった頃に、写真で見た事もある。しかし生で、それも至近距離で見るのは初めての事であった。
白いモフモフとした体毛に覆われた、妙に首が長くて、つぶらな瞳に何とも言えない独特な表情をした、その生物の名は……
「アルパカじゃないか……。何でこんな所に……」
ニーナが連れてきたらしい一頭のアルパカが、ぬぼーっとした表情でアルティリアを見つめていた。
「山でひろった。ママ、この子飼っていい?」
「うーん……家じゃあ流石に飼えないから、牧場に預けて来なさい」
「ざんねんです」
その後、牧場に送られたアルパカは世にも珍しい動物として人気になり、多くの見物客が訪れるようになった。日本と同じように、異世界でも珍しいのは変わらないようだ。
「マジでどこから拾ってきたんだ……」
それからしばらく後に、ニーナが追加でアルパカを連れてきて繁殖し、牧場にアルパカ専用のエリアが出来た。また、アルパカの毛からは上質な生地が出来る為、グランディーノにまた新しい名産品が生まれたのだった。
そして、それからしばらく経ったある日の事。ニーナは兄のアレックスと共に船に乗って、エリュシオン島に遊びに行った。
エリュシオン島は、グランディーノからずっと北に行った場所にある大きな島であり、アルティリアの親友の一人、大海神マナナン=マク=リールが住む場所だ。
長らく留守にしていた主神が戻った事で、島を覆い隠していた嵐の結界は解かれ、エリュシオン島にはこの大陸、そして海を隔てた二つの別大陸から、少しずつ人が訪れるようになった。
また、島には小人族の為の港町が作られ、初代市長にはアルティリアに仕える神殿騎士にして小人族の王の末裔、そして魔神将ウェパルを討伐した英雄、ルーシー=マーゼットが圧倒的な支持を得て就任した。現在、ルーシーはアルティリアの下を離れ、市長として、小人族たちのまとめ役として頑張っている。
そんな忙しい日々の中、それでもルーシーは時間を見つけてはグランディーノを訪れ、アルティリアや海神騎士団の仲間達と交流を続けている。そんな彼女がエリュシオン島に戻る際に、アレックスとニーナもついて行ったのだった。
それから一週間、エリュシオン島で過ごした後に子供達は帰ってきた。
「キングとオベロンに稽古をつけて貰った。きつかったけど良い修行になった」
アレックスは妖精郷で修行漬けの日々を過ごしていたようで、たくましく成長して帰ってきた。それでも結構きつかったようで、帰ってくるなりベッドに横になり、寝息を立て始めた。
そしてもう一人の子供であるニーナも、一緒に帰ってきたのだが……
「にゃー、お邪魔しますにゃん」
「ここがニーナにゃんとアレックスにゃんの家にゃ?」
「広いにゃ」
ニーナの後ろに、ぞろぞろと服を着て二足歩行する猫がついて来ていた。ニーナのような猫の耳と尻尾を持つ獣人族とはまた違った、身長1メートルほどのモフモフした猫がそのまま人型になったような存在だ。
彼らの名は
「ママ、ただいま」
「お帰りニーナ。ところで、なんで猫妖精がここに……?」
ニーナの後ろをついてきた猫妖精が、アルティリアを見上げると、口々に言葉を発した。
「エルフにゃ」
「おっぱいにゃ」
「こいつ本当にエルフかにゃ? エルフはもっと細いにゃん」
なんだこいつら喧嘩売ってんのか、と考え、アルティリアは無意識の内に拳を握っていた。普段は比較的冷静だが、彼女の座右の銘は『
「おまえら無礼はやめるにゃ! この方はマナナンにゃまのお友達で、ニーナにゃんのママさんにゃ! 来る途中に船の中で説明したにゃ!」
他の個体よりも一回り大きなリーダー格の猫妖精がそう叫ぶと、他の猫妖精達は一斉に『マジで?』『やべっ』といった表情を浮かべ、床に平伏した。
妖精は一部の個体を除いて基本的に頭が悪く、記憶力が壊滅的である。恐らくその忠告を完全に忘れていたのだろう。
「失礼しましたにゃん」
「おゆるしくださいにゃん」
「マナナンにゃまにチクるのだけはどうか」
「オベロンにゃまにチクるのだけはどうか」
「ティターニアにゃまにチクるのだけはどうか」
「ご飯抜きは嫌にゃん」
アルティリアが呆れながら土下座する猫妖精達を見下ろしていると、ニーナがアルティリアが羽織っている透明な薄い羽衣――水精霊王の羽衣という名の神器であり、見た目とは裏腹に高い防御力と、数多くの有用な特殊効果を有している――の裾を引っ張って、訴えかけた。
「この子達、友達になった。ママ、一緒に住んでいい?」
「……
「えー……」
結局、猫妖精たちは家で飼う事は出来なかったが、街の近くに居住地を作って住みつく事になった。頻繁に子供達と遊ぶ為に訪問して来る為、アルティリアの周りはより一層騒がしくなるのだった。
「二足歩行する豚に続いて、猫まで増えたか……。しかしニーナは本当に、色んな動物に好かれるな。動物に限らず妖精や魔物にまで……。テイマーとしての才能……というには、あまりにも異質だ。あれは一体、どういった……」
そのアルティリアの疑問に対する答えは、まだ出ることはなかった。
【キャラクターデータ】
名前:ニーナ
種族:
性別:女性
年齢:9(LAⅦ)/13(LAⅧ)/17(LAⅨ)
所属勢力:冒険者
メインクラス:
サブクラス:
戦闘スタイル:後衛寄りオールラウンダー
主な生活スキル:調教、農業、料理
ステータス評価:
筋力E 耐久E 敏捷A 技巧D 魔力C(LAⅦ)
筋力C 耐久C 敏捷A 技巧C 魔力A(LAⅧ)
筋力B 耐久B 敏捷S 技巧B 魔力A(LAⅨ)
好きなプレゼント:『食材』『装飾品』
苦手なプレゼント:『酒』『武具』
特徴:『寡黙』『純粋』『慎重』『家庭的』『女王の器』
所有神器:
なし(LAⅦ)
『大自然の心(アクセサリ)』『咬竜金鞭(鞭)』(LAⅧ)
【概要】
ニーナは、ロストアルカディアシリーズの登場人物である。初登場はロストアルカディアⅦ。
序盤のイベントで兄のアレックス共々、女神アルティリアの養子として迎えられる。
性格はやや憶病で無口。家族や親しい人間の前では甘えたがり。
初登場となるⅦでは、幼い子供のため敏捷以外のステータスは軒並み低め。特に耐久が壊滅的な為、前線に出るとあっさりと沈む。安全な後方でサポート役をさせるべきだが、支援役としてもそれほど優秀とは言い難い。
そんな彼女の真価はテイマーとしての才能。捕獲や魔物の育成に関する能力が群を抜いており、基本職である魔物使いの時点で最上級職に匹敵する。魔物の捕獲・調教に興味があるなら、是非パーティーに誘ってみよう。
Ⅷ以降ではユニーク特徴『大器晩成』を持ち、近接格闘戦に特化した兄と比較すると魔力以外のステータスは全て負けており、アレックスのようなわかりやすい強さは無いが、目立った欠点が無く、また多くの武器や魔法に適性がある為、状況に応じて柔軟な立ち回りができるのが強み。また彼女自身のユニーク特徴『女王の器』の効果によって自分のレベル以上のペットモンスターを使役でき、同時に使役できるペットの数も多いのも大きな長所だ。
また、Ⅶでは幼かった彼女もⅧでは立派なロリ巨乳美少女に成長しており、前作をプレイした多くのプレイヤーを驚かせ、歓喜させた。
ロストアルカディアⅨでは兄のアレックスと共に主人公を務める。
母親であるアルティリアに匹敵する爆乳に成長するが、背は相変わらず小さいままなのが本人には不満そうである。
Ⅸでは序盤でどちらか一人を主人公に選択し、アレックス主人公のルート、ニーナ主人公のルートに分岐するのだが、発売当初は猫耳爆乳ロリ美少女に釣られてニーナを主人公に選び、泣きを見る新規プレイヤーの姿が跡を絶たなかった。役割がはっきりしており、必要なステータスが軒並みバカ高くてわかりやすいアレックスに対して、ニーナはやれる事の範囲多く、操作難易度が高いのが原因だ。
悪い事は言わないので、一周目は大人しくアレックス選んどけ、な?
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