LAO廃人名鑑 ➀クロノ 前編
キャラクターネーム:クロノ
種族:人間
性別:男性
所属ギルド:『アブソリュート』→『OceanRoad』
メインクラス:神槍騎士
サブクラス:聖騎士・守護神 等
EXクラス:極光の槍騎士
戦闘スタイル:近接アタッカー兼タンク
主な生活スキル:釣り、水泳、操船 等
ステータス評価:筋力S 耐久S 敏捷B 技巧A 魔力B
所有神器:
ブリューナク(片手槍)
イージス(盾)
【解説】
ガチガチに装甲を固めた近距離パワー型。防御がクッソ硬くて生半可な攻撃じゃビクともしない上に、ちょっとでも隙を見せるとブリューナクによる超反応カウンターが容赦なく飛んでくる。
堅実で、わかりやすく単純に強く、目立った弱点も無いLAO最強の一角。
【クロノの物語】
リアルネームは白崎 乃亜。18歳の女子高生である。
彼女は非常に容姿に恵まれており(APP18)、それゆえに思春期を迎えてからは様々な男達に言い寄られ、その中には強引に関係を持とうとしてくる者もいた。
更に同年代の少女達からの嫉妬による嫌がらせ等もあり、精神を病んだ彼女はやがて不登校になり、引きこもりになった。
幸いな事に優しく理解のある両親からは、
・学校には行かなくてもいいけど、勉強はちゃんとする事
・不健康にならないように、体も動かす事
・家族とは一緒にご飯を食べて、会話をする事
・外に出なくても、だらしない恰好をしないでちゃんとお洒落をする事
・できる限りでいいから、家事を手伝う事
を条件に引きこもりを許された。本編主人公との親ガチャの格差……!
そんな感じに引きこもり生活をして数ヶ月。少しずつ元気を取り戻した彼女は、知らない人と会うのは怖いけど、全く他人と関わらない事に寂しさを感じていた為、オンラインゲームを始めた。丁度その時期にサービスを開始したMMORPG、ロストアルカディアオンラインである。
過去のトラウマから、女である事を隠して男性キャラクターを作り、男性らしく振る舞った。
キャラクターネームの由来は、最初は苗字と名前の頭を取って(キ〇トさん方式)シロノ、としようと思ったが、少しひねって白→黒、でクロノ。
ゲームを始めて少し経った後に、全滅しかけていたパーティーのプレイヤー達を助けた縁で、彼らと固定PTを組む事になり、その後彼らと共にギルドを結成した。
そのギルドの名は、『アブソリュート』。
このゲームの中で最強になるという目的を掲げたギルド『アブソリュート』の仲間達は様々な強敵と戦い、幾多の冒険を繰り広げた。
その中で、クロノは厳しい試練を乗り越えて神器ブリューナクを入手する。神槍の力で強大な敵を打ち破り、クロノと仲間達はますます戦力を増強させていく。
その名声に惹かれて人が集まり、より大規模になったギルド『アブソリュート』はトップギルドへの道を駆け上がっていった。
しかし、栄光の日々は長くは続かなかった。
強さを求める者、最強の座に固執する者達が多く集まった事で、ギルド内には効率至上主義や、強ければ何をしても許されるといった傲慢な考えが、徐々に蔓延していった。
そんな時だった。一人のメンバーが、他ギルドとの戦争中に最悪なタイミングで判断ミスを犯し、戦闘不能に陥り……そこから一気に戦線が崩壊した。
それによってギルドの領地を失った事で、ミスをしたプレイヤーはギルドメンバー達から責められる。そのミスをしたプレイヤーは初期メンバーの一人であり、ずっとクロノと一緒に冒険をしてきた女性プレイヤーだった。
彼女を責める者達の中には、同じ初期からのメンバーもいた。それを目にして、クロノの中で何かが切れた。
「ふざけるな!」
一緒に冒険をして、共に笑い、負けた時でも励まし合ってきたギルドの姿は、もうそこには無かった。
「ミスをした仲間にかける言葉は……罵りじゃ責任の追及なんかじゃなく、励ましの言葉じゃなかったのか! 俺達はいつから、こんな風になってしまったんだ!」
クロノの訴えに、自分達の過ちを悟る者も確かに居た。前述の初期メンバーを中心に、主に古参の者達だ。
だが逆に、クロノに対して冷ややかな視線と言葉を投げかける者達もいた。
「はぁ? サブマス、何青臭い事言ってんの? 俺達は最強である事を求めてここに集まってるんだ。遊びでやってるんじゃねーんだよ。経験値! 金! そしてレアアイテム! それが欲しいからこうやって集まってんでしょうが。アンタだってそうだろ? なぁ、ブリューナク使いの最強騎士様よ?」
悪意をもって放たれたその言葉に、クロノを支えていた最後の一線が切れた。
「ふざけるな……! 遊びじゃなくなったゲームなんか、ただのクソゲーだろうが!」
仲間達と一緒に沢山の冒険をして集めたレアアイテム。強力な装備。そして、それによって強くなった己が分身。
乃亜にはそれらが唐突に色褪せて、醜悪なものに見えた。
「こんな物!」
アイテムストレージを開き、そこに入っているレアアイテムを、片っ端からその場に投げ捨てる。
「こんな物の為に、俺達は!」
泣きながらキーボードとマウスを操作し、クロノが身に纏っていた、仲間との冒険で集めた強力無比な装備をも放り投げる。
『非常に高価なアイテムをドロップしようとしています。本当によろしいですか?』
繰り返し表示されるそのシステムメッセージによる警告に対し、躊躇う事なくYESを押し続ける。
「いくら最強だからって……一緒に遊ぶ仲間を蔑ろにして……! こんな物が、何になるって言うんだよ、馬鹿野郎ぉーっ!」
そして最後に残った、神槍の所有権をも破棄する。クロノはその場で、地面にブリューナクを力いっぱい、深々と突き刺した。
そしてギルドメニューを操作し、ギルドを脱退したクロノは、その場を後にした。
「へっ、何熱くなってんだか。ばっかじゃねーの! ひひひ、要らねぇって言うなら、ブリューナクは俺が貰っておいてやるぜぇ」
クロノと言い争いをしていたそのプレイヤーが、汚い言葉を吐いて彼を揶揄しながら放棄されたブリューナクへと手を伸ばし、その所有権を主張しようとした。
だが、その瞬間。白き神槍がまるで意志を持ち、『汚ぇ手で触んじゃねーよカス』とでも言うように閃光と轟音を放ち、そのプレイヤーは凄まじい轟雷に打たれ、HPと全ての装備の耐久度を全損させたのだった。
その後すぐに、ギルド『アブソリュート』は解散した。
ギルドマスターをはじめとする初期メンバーからは、クロノに対して変わってしまっていくギルドを止められなかった事、いつのまにか大事なものを忘れてしまっていた事に対する謝罪のメッセージが届いた。
そして、ミスをして責められていた女性メンバーからは、小規模でもいいから気の合う仲間達と一緒に冒険できればそれでいいと思っていたけど、勇気が無くて言い出せなかった。クロノがあんな風に言ってくれて嬉しかった。クロノはたくさん傷ついただろうけど、あなたの勇気と優しさを心から尊敬している……というメッセージが届いていた。
彼らの言葉に少しだけ救われはしたが、強くなる事や、ゲーム自体に対するモチベーションを完全に失ったクロノは、あてもなく街やフィールドをふらふらと徘徊していた。
様々なプレイヤーを見た。自分よりもずっと弱いが、それでも仲間と一緒に楽しそうに遊ぶ彼らを眩しそうに眺めながら、歩いている内にいつのまにか、クロノは海岸へと辿り着いていた。
波の音と、水平線に、夕陽が沈む景色。強くなる事に夢中で、こんな綺麗な景色がある事も、ずっと忘れていた気がする。
いっそこのまま海に飛び込んで、呼吸ゲージが無くなって死んだらそのままログアウトして、二度とログインしないでおこうか。
そう考えた時……突然、沖の方から物凄いスピードで大型帆船が急接近してきて、クロノの目の前で停泊した。
そこで出会った奇妙なプレイヤー達に誘われ……そして、クロノの新しい冒険が始まった!
【余談】
ブリューナクは誰も手に取れなかった為、その場に放置されていたのだが、元アブソリュートのメンバーの一人が、クロノがブリューナクを突き刺した場所に祠を建てて、クロノが捨てていった他の装備と一緒に安置していた。
そして数ヶ月後、魔神将討伐イベントの際、魔神将の攻撃でクロノが瀕死になり、プレイヤー達も全滅の危機に陥った際に、ブリューナクがまるで意志を持ったようにひとりでに動き、他の装備と一緒にクロノのもとに帰還した。
再びブリューナクを手にしたクロノは、新たな仲間達と共に魔神将を討ち滅ぼしたのだった。なんだこいつ主人公か。
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