エイプリルフール短編


『エイプリルフール短編企画 もしもドスケベエルフの代わりに別の奴が来たら』



 ロイド=アストレアは激怒した。何に? 己の運命にだ。

 ロイドは長身でがっしりとした、いわゆる細マッチョ体型の男だ。茶髪に赤茶色の瞳、顔つきはなかなかの男前。年齢は26歳、そして職業は……海賊だ。


 20名ほどの部下を抱えながら海賊稼業を営むロイドは、縄張りにしている海域を通る交易商人から通行料として多少の金銭や交易品を頂戴して、生計を立てている。彼らが活動する海域から南東に行けばグランディーノ、南西にはテーベという大きな港町がある為、絶好の稼ぎ場だ。

 しかし最近は不景気なのか、あるいは噂が広がったのか、近くを通る船が少なくなってきた。いくら待っても商船がやって来ないので、そういう時は少々遠出をして、海に棲む魔物を狩る事にしている。海の魔物を狩るには船か、あるいは水中で戦う為の技術が必要不可欠になるので、その素材は希少であり、高く売れる。

 この日も海の魔物を狩る為に船を動かし、棲息海域へと移動していたのだが……


「クラーケンだと……! 冗談じゃねぇぞ……ッ!」


 突然、本来ここに居る筈もない巨大海洋魔獣、クラーケンが海中から現れて、ロイド達の船を襲ったのだ。

 クラーケンは、全長10メートルはあろうかという巨大なイカのような怪物だ。その巨体による体当たりや、極太の触手を叩き付ける攻撃によって、小さな海賊船は成す術もなくマストを叩き折られ、甲板が罅割れて航行不能。部下は約半分が意識不明、残りのもう半分が戦意喪失で使い物にならない。

 最早ここまでか、とロイドが己の運命を呪った、その時であった。


「ヒャッハー!!」


 突然、横合いからクラーケンの胴体に高速でぶつかり、その巨体を吹っ飛ばす者が現れた。

 それは違法改造武装大型水陸両用バイク『レッド・バーバリアン3号』を駆り、全速力(およそ280km/h)で轢き逃げタックルを敢行した、筋肉モリモリ・マッチョマンの変態だ。その身長は2メートルをゆうに超え、髪の毛やあごに生えた髭は、燃え盛る炎のように赤い。その赤い頭には髑髏マークが入った黒い船長帽を被り、炎の柄が入った黒いマントを風に靡かせている。


「くらいやがれぇ!」


 その巨漢はクラーケンを吹き飛ばした勢いそのままに、レッド・バーバリアン3号を巧みに操って水上でドリフト走行をしながら、背負っていたロケットランチャーを一切躊躇する事なく、クラーケンに向かってブッ放した。

 大爆発に巻き込まれ、木っ端微塵に爆散するクラーケンを見て高笑いしていたその巨漢は、ふとロイド達のほうを見た。そして、そのままレッド・バーバリアン3号を水上に停車させると、彼らが乗る船の甲板に、ひとっ跳びで乗り込んできた。


(で……“巨大デカ”い……ッ!)


 間近で見て、ロイドはその男の規格外のデカさに圧倒された。それは体格だけではなく、もっと根本的な……生物としての存在感。それが規格外である。思わず平伏しそうになりながら、ロイドは震える声で訊ねた。


「あ、貴方は一体……」


「ん? 俺か? 俺の名はバルバロッサ! 人は俺を『海賊王』と呼ぶッ!」


「か……海賊王……ッ!」


 仁王立ちして堂々と名乗りを上げる巨漢……バルバロッサを憧憬の目で見つめる海賊達。そんな彼らにバルバロッサは言った。


「てめえら、海賊だな?」


「は、はい!」


「よし。じゃあてめえら今日から俺の子分な」


「えっ!?」


「何だ? 文句でもあんのか?」


「いえ、滅相もありません! むしろ、俺達なんかがついて行っても、足手纏いになるんじゃあないかと……」


「構わねえ。知らねえ場所に一人で飛ばされたせいで困ってたところだしな。それに心配すんな。てめえらは今は大して強くねぇが、俺についてくれば責任持って、立派な海賊に鍛え上げてやるぜ。さあ、どうする?」


「……よろしくお願いします、ボス!」


「ようし。それじゃあ今日からよろしく頼むぜ、野郎共。さて、とりあえずは……こんな小せぇボロ船じゃあ恰好つかねぇし、俺の船を出すからそっちに移るとするか」


 そう言うと、バルバロッサは右腕を高々と挙げて、指を鳴らした。


「出ろおおおおおおおおおおッ! レッド・タイラントォォォォォォッ!!」


 主の雄叫びに応え、巨大な船が姿を現した。

 船体側面に大砲がズラリと並ぶ、大型船舶『戦列艦』をベースにバルバロッサが技術と資金を惜しみなく注ぎ込んで魔改造を繰り返した戦闘特化の巨船、レッド・タイラント号だ。


「乗り込め野郎共! “出航デッパツ”だ!」


「「「「「う……うおおおおおおおおおおお!!」」」」」


 そのあまりの威容に声を失っていた海賊達は、新たな船長の号令に鬨の声を上げて、船に乗り込んだ。


 そして彼らは瞬く間に付近の海域に存在する海賊団を吸収して巨大化し、周辺海域全てを縄張りにした。

 更にその後はグランディーノやテーベ、更に西にある帝国の港も全て傘下に収め、ローランド王国、自由都市同盟、アクロニア帝国といった大陸北部の大勢力からの攻撃を全て難なく退けると、彼らに活動資金を提供させる代わりに、海の治安維持を一手に引き受ける契約を(強引に)交わさせた。

 大国の海軍を遥かに凌ぐ大勢力となった彼らに逆らえる者はおらず、またバルバロッサは傘下の勢力同士が争う事を許さなかった為、海だけでなく大陸全体に恒久的な平和が齎された。

 そうやって争いが強制的に無くなった後に、彼ら海賊団が提供する最新鋭の大型高速輸送船によって海上交易が盛んになり、結果的に平和で豊かな時代が大陸に訪れた事で、最初は海賊に対して敵意や恐怖を抱いていた人々も、なんだかんだで満足した。今ではバルバロッサ海賊団に入って立派な海の漢になるのが、子供達の憧れである。

 あと魔神将とかその眷属は最強万能兵器ガトリングガンで撃たれて死んだ。

 めでたしめでたし。おわり。



 ◆以下、この時空における登場人物紹介


 【バルバロッサ】

 本編のアルティリアの代わりに異世界に召喚された。

 神様とかいう柄じゃないのでアルティリアと違って神にはならなかった。

 現地で大海賊団を作り上げて大陸を征服し、魔神将勢力を退け、暫くしたら満足したので地球に帰った。

 リアルでは妻子持ちなので帰るのは規定事項。


 【ロイド】

 本編のほうでシリアス真っ最中だがこっちではなんか良い空気吸ってる。

 バルバロッサ海賊団副首領。バルバロッサが帰った後は二代目として跡を継いだ。

 武器はバルバロッサ謹製のガンブレード。


 【本編の海神騎士団メンバー】

 この時空ではバルバロッサ海賊団のメンバーとして元気にヒャッハーしてる


 【アレックス&ニーナ】

 バルバロッサに助けられた後、海賊団に入った。三代目首領&副首領。


 【グランディーノ海上警備隊&冒険者の皆さん】

 グランディーノに来たバルバロッサを止めようとしたら単騎でボコボコにされて海賊団のメンバーになった。

 結果的に海を平和にする仕事をする事になったのでヨシ!


 【ケッヘル伯爵】

 有能なので率先してバルバロッサ海賊団と関係を結び、王国サイドの窓口になった


 【紅蓮の騎士スカーレット

 本編ではアルティリア不在のタイミングでグランディーノを襲撃したが、この時空では普通にバルバロッサが居た為、ワンパンでのされて捕らえられて手下になった。


 【魔神将フラウロス】

 なんだかんだで本編同様に本体が顕現した。

 うみきんぐのサポートで巨大化したバルバロッサと怪獣大決戦を繰り広げた後に、満足して逝った。


 【うみきんぐ】

 本編同様にバルバロッサを遠隔サポートして、魔神将との決戦の際は残った力を振り絞って彼に力を貸した。そしたら何故かウルトラマンみたいになったので流石のキングも宇宙猫みたいな顔になった。


 【■■■■(アルティリアのプレイヤー)】

 本編主人公。異世界に召喚される事が無かったので、ほどほどに仕事を頑張りつつLAO廃人をしている。

 ぱっと見、裸にしか見えない細部まで拘り抜いて染色した肌色水着を自キャラ(海産ドスケベエルフ)に着せて遊んでたら運営に怒られて、アカウントを一週間停止された(6ヶ月ぶり3回目)

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