第78話 戦いの基本は囲んで叩く※

「スカーレット、クリストフ。あれをやるぞ!」


 敵の親玉である巨大骸骨船長ヒュージ・スケルトン・キャプテンを前にしたロイドは、仲間の二人に向かってそう叫んだ。

 呼ばれた二人は、すぐに彼の意図を察知して横に並び立つ。


「いいだろう」


「ええ、いつでも行けますよ」


 スカーレットが赤い大剣を肩に担ぐようにして構え、クリストフが世界樹ユグドラシルの枝を削り出して作られた長棒を、錫杖のように掲げる。

 彼らの武器は、どちらもアルティリアが彼らの為に作った逸品だ。特にスカーレットの剣は、彼の亡き旧主である魔神将フラウロスの力と、現在の主である女神アルティリアの力が込められた唯一無二の神器だ。

 ロイドもまた、刀を両手でしっかりと持って正眼の構えを取る。彼の刀もまた、かつての戦いで折れてしまった愛刀をアルティリアが鍛え直し、彼女の力が込められた神器である。


 三人は構えた武器を、それぞれ同じタイミングで……床に向かって、勢いよく突き刺した。


「「「凍りつけ! 『氷結波動フローズン・ドライブ』!!」」」


 その瞬間、彼ら三人の武器が刺さった場所から、一直線に冷気の波が敵に向かって迸る。それによってボスの足元から膝のあたりまでが、一瞬にして氷漬けになった。

 しかし、彼らの連携技はそれで終わりではなく、むしろここからが本番である。


「ロイドさん!」


「おうッ!」


 続いて、ロイドとクリストフがそれぞれの武器を振るい、巨大な氷の刃を放った。Xの字を描く氷刃が敵の胴体を深く切り裂き、命中した体と両腕を凍結させて動きを封じる。

 ボスは身体と四肢が凍結し、頭部以外の動きを完全に封じられた。


「ぬおおおおおっ! 『業炎撃インフェルノ・ブレイク』ッ!」


 直後、爆炎を纏う大剣を大上段に構えたスカーレットが、ボスに向かって飛びこんだ。対する巨大骸骨船長は凍結によって動きを完全に封じられている為、防御も回避も不可能だが、


「グゴオオオオオオッ!」


 体は完全に動きを封じられようと、唯一自由に動かせる頭部を突進してくるスカーレットへと向けると、骨だけの口を大きく開いておぞましい叫び声を上げた。すると空洞の口腔内に燃え盛る黒い炎が生じ、それがスカーレットに向かって勢いよく放たれる。『地獄の炎ヘルブレイズ』による反撃だ。

 だがそれは、目の前の相手に対しては悪手であった。


「効かぬ! 我は炎の騎士、炎は我が力の源よ!」


 スカーレットは大剣のブ厚い刀身の腹で、飛来する地獄の炎を受け止めると、それを自らの剣に取り込んだ。それによって一層火力を増したスカーレットの大剣による一撃が、真正面から襲いかかる。

 体の動きを封じられ、反撃の魔法も敵をパワーアップさせる結果に終わり、無防備な状態で敵の全力攻撃を受けざるをえない状況に追い込まれた巨大骸骨船長は、


「何だよこれ、ふざけんなよお前……」


 とでも言いたそうな表情を浮かべながら、脳天に必殺の一撃を受け、ダウンした。


「今です!」


 更に次の瞬間、クリストフの号令と共に、待機していた団員達が動き出した。


水属性誘導魔弾アクアマジックミサイル、全弾発射!」


 魔導士の少女、リンがチャージしていた誘導ホーミング性能付きの魔力弾を一斉に放つ。それを皮切りに、団員達が一斉攻撃に移った。

 後はもう、一方的にボッコボコにするだけの簡単なお仕事である。


「最後まで油断するなよ! 反撃の隙を与えず、徹底的に囲んで叩け!」


 有利な状況にあっても決して慢心する事なく、彼らは敵が完全に倒れるまで万全の構えで戦いに臨んだ。


「フザケルナ貴様等……渡サンゾ……俺ノ……財宝……ォォ……!」


 怨嗟の声を上げる船長とその取り巻きのモンスター達も必死の抵抗をしたものの、士気がMAXの彼らの勢い押し切られ、あえなく撃沈するのだった。

 冒険者や海上警備隊、それにアレックスら少年達といった者達もまた、ボスが召喚した手下のモンスター……海賊骸骨パイレーツスケルトン骸骨狼ボーンウルフ死霊レイスといったアンデッドモンスターを次々と撃破していき……戦いは、彼らの完全勝利に終わった。

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