港町の女神編
第27話 戦いの後始末。それと風呂
その後の事を、軽く語ろうと思う。
地獄の道化師は俺の信者達にボコられて死に、その場に僅かに残っていた魔物達は四散して逃亡。それで神殿付近は安全になったが、まだ戦いは終わっていなかった。
港湾や街道ではまだ戦いが続いており、ロイド達はすぐさまそちらへ救援に向かおうとしたが、それには及ばぬと俺はそれを止めた。
「『
俺のメインクラスは精霊使い系の最上位職の一つ、
俺は召喚した8体の水精霊の半数を港に、残りの半分を街道へと向かわせた。
流石に地獄の道化師レベルのモンスターが相手だと荷が重いものの、雑魚の掃討ならばノーマル水精霊で十分だ。
俺の命令に従って水精霊達はそれぞれの戦場へと向かい、彼女らの活躍によって無事に街道や港の敵は殲滅された。
こうして戦いは終わった。
ロイド達が戦った、もう一体のボスモンスター……紅蓮の騎士が姿を現さなかったのは気になるところではあるが、これにて一件落着である。
戦後の処理だが、まず負傷者を俺や水精霊達が魔法で治療した。
死者は幸い一人も出なかったものの、負傷者の数はかなり多かった。中には放置すると命に関わるような重傷を負った者も居たため、彼らの治療は最優先だ。
最初に冒険者や軍人を治療し、力自慢の彼らが負傷者を運ぶのを手伝ってくれたおかげで、だいぶスムーズに治療を進める事ができたので助かったぜ。
やっぱり一箇所に集めて範囲回復で纏めて治療するのが一番効率がいいからね。
ちなみになんか偉そうな神官の人達が、女神様を讃える式典がどうたらとかいう話をしてきたが、それに対しては今はそのような場合ではないと一喝しておいた。怪我人放ってするような話じゃないだろうが。
そしたらなんか泣きながら土下座してきたんだが。いやそんな事しなくていいから手伝えやお前ら。神官なら回復魔法くらい使えるだろ!
その点、クリストフという若い男の神官は有能だった。奴はやるべき事や優先順位をちゃんと分かってる。
ただ、俺が怪我人を回復させる時に使った魔法に対する食いつきが尋常じゃなかった。あと俺の槍とかの装備を見る目に、妙に熱が篭もってる。
こいつはあれだ、レアな装備とかスキルに目がないオタクだな。間違いない。
だがロイドがいつも世話になっているようだし、こいつ自身も俺の熱烈な信者みたいなので、今度俺のレアアイテム・コレクションを見せてやろうと思った。
まあそんな感じで色々と後始末が終わって、すっかり日が沈んだ頃になってその日は解散。
ちなみに戦いの最中に従えたドラゴンは逃がしてやろうと思ったが、何故か俺に懐いたようで帰ろうとしなかったので、仕方がないので飼育する事にした。
今は神殿の周囲で放し飼いにしてあるが、近い内に犬小屋ならぬ竜小屋?竜舎?を作ってやる必要があるだろう。
さて、どうやら俺は神殿で暮らす事になるようで、神殿の奥には俺の居住スペースがあった。
やけに広い寝室には、なんか貴族が使うようなビッグサイズの豪華なベッドが置いてあったりしたのだが、一人で使うにはちょっと大きすぎやしないだろうか。
なんか女神とか呼ばれて奉られており、俺自身もその信仰に応えて神として振る舞うつもりはあるのだが、いかんせん俺は元々、一般庶民の小市民であるのでこういった豪華な家具には縁が無かったせいで、どうにも落ち着かない。
ついでに今はプレイヤーである俺と一体化している、アルティリアという
「まあいい。だったら俺に合うようにカスタマイズするだけの事よ」
「よっしゃー!やったるでぇ!」
水泳や釣りほどではないが、俺は木材や石材の加工、鍛冶などの生活スキルもかなり高い。俺がLAOで所有していた家や船舶は全て俺が自ら作ったものだ。神殿の増築やリフォームなど朝飯前だ。
幸い、神殿内の俺の居住スペースには多少の余裕がある。ここに色々と付け加えていくとしよう。
ただし、その為には当たり前だが、十分な量の建築用資材が必要だ。そこらへんは明日以降に調達する必要があるだろう。よって、本格的な増改築は後日という事になるのだが……どうしても、今日中に作っておきたい物がある。
それは、風呂だ。
この世界……というか、今俺がいる国ではどうも、入浴の文化が広まっていないようなのだ。これは由々しき事態である。
水浴びや体を拭く等して、なるべく清潔を保つようにしている他、水属性の初歩的な魔法の中には体の汚れを落とす『
俺も転移して以来、清潔の魔法や、魔法で水を生成してシャワーを浴びる等はしていたが……元日本人として、やはり風呂には入りたいのである。
「というわけで、ここに浴室を作ろう」
俺は良い感じの広さの空き部屋に移動し、そこに木材を取り出して並べた。
これは太古の精霊木板。
動きは遅いが防御力やHPが非常に高いタフなモンスターで、強力な魔法を使う侮れない敵だ。そいつが落とすこの木の板は、そこいらの金属よりもずっと頑丈だ。
最上位の木材である
何故俺がこれを都合よく持っているかというと、俺の持っている船の素材がコレだからだ。船を作るのに木材は必要不可欠であり、このエンシェントトレントの木材は船の製作や改造を行なう海洋民に大人気の品だ。船の改造にハマっていた時期は、俺も狂ったようにエンシェントトレントを狩りまくったものだ。
もちろん船舶用だけではなく、木工製品や家の建築素材としても、エンシェントトレントの木材は大人気であり、常に高値で取引されている。
そんな貴重な素材を使って、俺は浴槽を作った。檜風呂ならぬエントレ風呂だ。なんという贅沢か。
さっそく作った浴槽に魔法でお湯を張り、俺は羽織っていた水精霊王の羽衣と、身に着けていた水着を脱ぎ捨てて風呂にダイブした。
「あぁ^~」
温かい風呂が、疲れた体に染み渡る。
久しぶりという事もあって、実にたまらん。
やはり風呂は良い。この文化はこの世界にも広めねばならぬと強く確信した。
あと、おっぱいは本当にお湯に浮く事が判明した。
そんな感じにひとっ風呂浴びた後に良い気分で就寝した、次の日の朝。
朝早くから神殿の前には大勢の人が集まっており、俺が姿を現すと皆揃って跪き、祈りを捧げ始めた。いやそんな畏まらんでも、楽にしていいから……
そんな彼らを前に、俺は話をした。
内容は昨日の襲撃を見て分かるように、俺は魔神将に狙われているという事と、いずれ来る連中との戦いに力を貸してほしいという事だ。
配下の魔物であれば俺一人でも蹴散らせるが、幹部級が複数で来られると流石に苦戦せざるを得ないし、ましてや親玉の魔神将本体は俺一人ではどうやっても太刀打ちできるような敵ではない。
LAシリーズのナンバリング作品では英雄達が国や神々のバックアップを受けて、激戦の末にようやく倒したような相手だし、LAOでは世界中の廃人プレイヤーが束になってタコ殴りにするワールドレイドボスだ。
神の力を得て多少強くなったとはいえど、俺がタイマン張って勝てるような甘い相手じゃないという事だ。
なので、
戦える者は一人一人が一騎当千の英雄レベルにまで成長し、また戦えない者はそんな彼らの支援をして、一致団結して立ち向かわなければならない。その為に俺も最大限、君達の力になろう、と。
流石に魔神将と一緒に戦ってくれと言われて、尻込みされるか、最悪見放される事も覚悟していたが……信者達はそんな俺の願いに対して、有難い事に喝采をもって応えてくれた。
よし、じゃあ
とりあえず半年で全員、レベル100くらいになろうか。
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