第20話 このエロ装備を買った奴は誰だぁっ!
俺がそんな他力本願な決意をしてから、数日が経過した。
その間は平和そのもので、俺は魚を釣ってバフ料理を作り、それを信者達にお裾分けしたり、便利な消費アイテムを配ったりして彼らのレベリングをサポートしていた。
ちなみに先日、『生活強化:料理+』の加護を取ったので、配布した料理のレシピは
そしたらなんか信者がけっこう増えた。多分料理人とか主婦あたりだと思う。
さて、その間も信者達の窓口であるロイド=アストレア(26歳独身。最近Eランクに上がった冒険者)との定時連絡は欠かさず行なっており、今日も彼との通信でお互いの状況確認をしていたところ、
「アルティリア様、朗報です。神殿ですが、もう数日のうちに完成する見込みです」
「……それは大変結構な事ですが、随分と早いですね?」
俺の記憶が正しければ、建築に着手したのが数日前だった筈なんだが。
「領主様が全面的に協力してくださいまして、町中の商人・職人達のみならず、近くの町や村からも沢山の人が手伝いに来てくれたおかげで、予定よりも大幅に早く完成しそうですよ」
「……なるほど。皆に私が感謝していると伝えておいてください」
「勿体ないお言葉です」
予定よりだいぶ早くなってしまったが、これは好都合かもしれない。
魔神将の配下……地獄の道化師や、ロイドが戦ったという紅蓮の騎士は、俺がタイマンで戦えば普通に勝てるくらいの相手だが、信者達にとっては圧倒的に格上の相手に違いない。
俺だって、あの連中が束になってかかってくれば苦戦くらいはするだろう。
そして無いとは思うが、魔神将の本体が襲撃してきた場合はほぼ確実に死ぬ。まあ、あいつら自身が狭間から出てくる事自体が滅多に無い事なので、その可能性は限りなく低いのだが。
そういった次第で、ここはそろそろ信者達と合流して、彼らを鍛え上げ、強固にバックアップする体制を整えるべきだろう。
正直、神として祀り上げられるのは気が重いのだが、事ここに至っては覚悟を決めるべきだろう。
俺は神として信者達を導き、いつか来る魔神将との戦いに備えるのだ。
ロイドとの通信を終えた俺は、信者達との対面の準備をしなければと思い立った。
「……まずは服装か。流石に水着はまずいか?」
現在の俺の恰好は、白いビキニの水着の上に『水精霊王の羽衣』を羽織った格好である。自慢の爆乳の谷間を惜しげもなく晒した濡れスケ水着姿は大変眼福ではあるものの、流石にこの恰好で大勢の前に出るのは少々恥ずかしいものがある。
あと、初めての信者達との対面で男の信者達が軒並み前屈みになっているような事態は避けたい。絵面が最悪である。
というワケで、緊急ドスケベ禁止令を発令する。ここは女神らしい、清楚な服装をチョイスするべきであろう。
「とりあえず、持ってるアバター装備並べてみるか……」
アバター装備とは、通常の装備とは別に、キャラの見た目だけを変える事ができる装備品である。
性能を重視して装備を揃えたら見た目がゴッツい鎧姿になったり、とっ散らかったファッションになったりする事は、よくある事態だ。
装備の性能は大事だけど、オシャレもしたい。そんな要望に応えるためにあるのがアバター装備というわけだ。
アバター装備はプレイヤーが生産スキルで作るもの、クエストの報酬で入手できる物、そして課金してリアルマネーで購入する物、課金ガチャで出る物など様々である。
俺は心血を注いで作り、育てたアルティリアというキャラを着飾るために、そんなアバター装備を多数買い揃えていた。それらを道具袋から取り出し、ずらりと並べて見回してみる。
「とりあえず……着てみるか」
ゲームの時とは違い、ワンクリックで装備を変えるというのは出来ないので、俺は水精霊王の羽衣と水着を脱ぎ、一糸纏わぬ姿になった。
一人ファッションショーの始まりだ。
まずは下着だ。白いレースのブラとショーツのセットを手に取る。女物の下着を着る事に対する抵抗は最早無いに等しく、スムーズにそれらを身に着けていった。
そして、俺は一着目の服に手を伸ばした。
メイド服だった。
しかも胸の谷間を強調し、スカートはパンツがギリギリ見えるか見えないかくらいのミニスカートだ。
試しに着てみて、魔法で氷の鏡を作って自分の姿を正面から見てみる。
ドスケベメイドエルフがそこにいた。
「はい却下、次」
次のアバター装備を手に取る。セーラー服だった。
白いセーラー服に水色のスカーフ、紺色のプリーツスカート、白い二―ハイソックス、革靴のセットだ。
着てみた結果だが、まず上半身。豊かなおっぱいが制服を大きく押し上げており、そのせいで丈が足りず、おへそがチラ見えしている。
次に下半身。元々丈の短いスカートが、大きなお尻の盛り上がりのせいで更にギリギリだ。その下にむちむちの太ももが眩しい絶対領域を作っている。
ドスケベJKエルフがそこにいた。
「アウトォ!」
お次は金糸で刺繍された、真っ赤なチャイナドレスだ。
それに合わせて長い水色の髪をお団子状に纏めて、シニヨンキャップを付ける。
豊満な体のラインがくっきりと出て、下半身は深いスリットが入っており、健康的な脚がまる見えだ。
ドスケベチャイナエルフ爆誕である。
「はい次……ニンジャナンデ!?」
鎖帷子と、妙に露出度の高い和服のセットだ。首に赤いマフラーを巻き、腰には巻物や苦無が吊るされている。
確かこれは『忍者』の職業が実装された時に、ガチャの景品で出たやつだ。ガチャ産のアバターなので、忍者の技や術に対して若干のプラス補正がかかる、性能も兼ね備えた逸品である。俺は忍者は取っていないので意味は無いが。
ドーモ、読者=サン、ドスケベくのいちエルフです。
その他にもスクール水着や露出度の高いウェイトレスの服やら、海賊団のボスを倒した際に入手した女海賊の服、
それらの装備を着たお色気増し増しのアルティリアを眺めるのは大変楽しく、俺もノリノリでそれに着替えてみたりはしたのだが、まるで進展が無いのが問題だ。
「ええいエロ装備はもういい!今必要なのは清楚なやつだ!」
ちょっと大勢の人前に出るのに適さないやつを道具袋に押し込んで、俺は数少ない、残った服に手を伸ばした。
そこで、俺が手に取ったものは……
「アイドル……だと……?」
フリフリの装飾がたくさん付いた、可愛いアイドル衣装だった。
これも課金ガチャのレア景品で、音楽やダンス系の技能に補正がかかる品で、更に待機モーションが専用の物に変化し、衣装専用の
この衣装の専用エモーションは『アイドルポーズ』というもので、キラキラしたエフェクトを出しながら、くるっと一回転した後に
「キラッ☆」
と、顔の横でピースサインを決めるものだ。
……ハッ!?いつのまにか無意識のうちにアイドル衣装を着て、アイドルポーズをキメていた……だと……!?
俺は咄嗟に周囲を見回した。
視界には一面に広がる大海原が映っており、誰も居ないのは分かっているが、万が一にも今のを誰かに見られていたらと思うと、顔から火が出そうになる。
少しの間、顔を真っ赤にしながらうずくまってプルプル震えた後に、俺はアイドル衣装を永久封印する事に決めた。
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