火の鳥
火の精霊の案内で移動した俺達。数時間程で火の大精霊がいるという場所に到着した。
「ここが火の大精霊様がいるヒノノキ火山です。この頂上のマグマの側に大精霊様はいらっしゃいます。大精霊様の暴走で火山が噴火してしまい近くにあった村は住民が避難する事態となっていまして。」
火の精霊の案内で火山に着いた俺達はその光景を見て固まっている。火山からはマグマが流れだし下まで来ている。人が歩ける様な場所じゃないだろ!?
「なあ。まさか俺にこの火山を登って行けって言うつもりじゃないだろうな?こんな所に登って行ける訳ないだろ?」
俺がそう言って火の精霊を見ると困った様に苦笑いしている。
「そうですか。勇者様なら平気かと思ったのですが、そうなると他の手段を考えないと駄目なようですね。どうしましょうか?」
そう言って考え込んでしまう。するとウェンディーが火の精霊に声をかける。
「ねえ、大精霊をここまで連れ出したらどうなの?」
ウェンディーがそう言うと火の精霊が顔を上げてウェンディーを見る。
「出来ない事はないですが誰かが囮になって連れてくる事になりますよ?ケント様は無理みたいですし、私は大精霊様に近付き過ぎると今の大精霊様に影響されて暴走してしまうんです。なので囮になるとしたらウェンディー様しか。」
火の精霊はそう言ってウェンディーを見る。俺もウェンディーを見る。
「じゃあ連れ出すのは止めましょう!」
「いやよ!?何で私が囮にならないといけないのよ!他に手があるでしょ?」
いや、他の手段が浮かばないから頼んでるんだけどな。
「大丈夫ですよ。大精霊様の動きは早くありません。ウェンディー様なら出来ますよ。」
火の精霊もそう言ってくれている。
「攻撃してきたらどうするのよ?大精霊の攻撃なんて当たったら死んじゃうじゃない!」
そう言って嫌だ嫌だと首を横に振るウェンディー。
「攻撃が怖いなら防御魔法をかけてやるから、それで良いだろ?直撃しなければ何とかなるから。多分。」
俺がそう言うとウェンディーが睨んでくる。
「多分?多分って何よ!」
ウェンディーがそう言って俺に文句をつけていると火の精霊がウェンディーに言う。
「攻撃なら大丈夫ですよ。大精霊様というか、我々精霊には攻撃手段は殆どありません。出来るのは自然を操る位です。水の精霊なら水、土の精霊なら土、風の精霊なら風、そして我々火の精霊は火、といった感じでそれぞれの属性の攻撃しか出来ないので私が火の加護を与えますのでケント様の防御魔法と合わせれば大丈夫です。」
なら大丈夫そうだな。
「こう言ってるんだし行って来いよ。な!それにウェンディーは優・秀・なサポートなんだろ?俺が大精霊を眠らせる為にはウェンディーが頑張るしかないんだから頼んだぞ!」
俺がそう言うとウェンディーが固まる。続けて満面の笑みを浮かべる。
「フフン。仕方ないわね。私は優・秀・なサポートだからね!ケントも分かってきたじゃない!任せなさい。やってやるわよ!」
そう言って胸を張るウェンディー。チョロい。
「じゃあ、行ってくるわよ。準備して待ってなさいよね。」
ウェンディーはそう言って火山を飛んで行く。戻ってくるまで時間がかかるだろうし火の精霊と話す。
「大精霊が暴走してる理由って何か心当たりはないのか?」
暴走なんて普通の事ではないだろう。しかも、火の精霊の話を聞く限り大精霊は他に後3体はいるはず。それが全て暴走してるなら大問題だ。火の大精霊でさえ、火山を噴火させたりしてるんだ。他の大精霊の所でも災害が起きているはず。
「いえ分かりません。他の大精霊様の事はよく知りませんが、火の大精霊様は普段は優しい方なのですが突然豹変してしまい近づく者には片っ端から攻撃する様になってしまい困っているんです。大精霊様に近付いた精霊達も影響されて凶暴になってしまいまして。まあ、大精霊様から離れると正常になるんですけどね。」
理由は分かんないか。てか、近づく者には片っ端から攻撃ってウェンディーの奴は大丈夫か?まあ、行かせたのは俺なんだけどな。
「そういえば、大精霊の見た目ってどんなの何だ?お前みたいに人間みたいなのか?」
大精霊も人間と同じ姿なら怖くはないだろう。
「いえ、大精霊様は大きな鳥の様な姿をしてますよ?その姿から人間には不死鳥と呼ばれてます。」
不死鳥。つまりフェニックスってことか?火の大精霊だし何となく想像が出来るな。
暫く、火の精霊と話していると頂上の方で音が聞こえてくる。
「どうやら、ウェンディー様が大精霊様と接触したようですね。私は離れてますので後はお願いします。」
そう言って姿を消してしまう火の精霊。まあ、近くにいたら暴走してしまうって言ってたし仕方ないか。
音の距離が段々と近付いてきた。暫くするとウェンディーの声が聞こえてくる。
「ギャアアアアア!!ケント!ケント!ケント!何よこれ!?全然大丈夫じゃないじゃない。騙したわね~!!」
俺の名前を連呼しながら飛んでくるウェンディーの後ろには大きな火の鳥が飛んでいる。火の玉をウェンディーに向けて放っているがウェンディーは上手く躱している。
「早く~!封印石を出してケント!」
俺の姿に気付いたウェンディーがそう言ってくる。
「ああ。えっと、何処にしまったかな?」
なかなか封印石が取り出せないでいるとウェンディーの泣き声が聞こえてくる。
「あった!」
だけど、封印石を見つけたが使い方がわからない。どうすれば良いんだ?そう思っていると封印石から光が飛び出し火の鳥を包み込む。やがて光が収まると火の鳥が消えていた。
「ケントのバカ~!何でもっと早く使わないのよ。凄く怖かったじゃない。」
光が収まった封印石を見てるとウェンディーがそう言って飛び掛かってくる。
「どうやら無事に終わった様ですね。大精霊様を止めて頂きありがとうございます。」
ウェンディーを宥めていると火の精霊が戻ってくる。
「ちょっと!あんた話が違うじゃない!何が攻撃は大丈夫よ、死ぬかと思ったじゃない!」
ウェンディーが火の精霊に向かって文句を言うが俺がそれを止める。
「別に怪我をした訳じゃないんだから文句を言うなよ?任せろって言って飛んでったのはウェンディーだろ?」
そう言うとウェンディーは納得がいかないのか不貞腐れるが無視して火の精霊に声をかける。
「これで大精霊は眠りについたのか?消えちゃったんだけど?」
俺がそう言うと火の精霊は笑っている。
「大丈夫ですよ。力が無くなり姿が見えないだけですので。今は眠りについていますが数十年も経てば復活しますので。ありがとうございました。」
そう言って頭を下げる火の精霊。
「なら良いんだが。それで?他の大精霊の所にもお前が案内してくれるのか?」
俺がそう聞くと火の精霊が首を横に振る。
「他の大精霊様の事は分からないので私はここまでです。それに土の精霊が既に来ている様ですよ。」
そう言って足元を指差す火の精霊。
「土の精霊が?」
火の精霊の言葉から足元を確認すると土の中からもぐらが顔を出す。
「次は私が土の大精霊様の元へ案内させて頂きますケント様。」
もぐらが喋った!?
『勇者になった俺は神様達から逃げる為に全力をつくす。~勇者がブラックすぎる件について~』 マサツカ @masatsuka
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。『勇者になった俺は神様達から逃げる為に全力をつくす。~勇者がブラックすぎる件について~』の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます