5-⑤
* * *
「最近
ダルに手引きしてもらって黒服から王太子の服に
「
クレシェンに文句を言われ、アルトは
実際には黒服の騎士として動き回っていて、六時間睡眠がいいところなのだが。
特に昨夜から今日にかけては、何度も黒服の騎士になって
「ずっと部屋に
モレンド
「国王陛下の
実は後宮の黒い噂を解明する一方で、アルト達はクーデターの動きにも気づいていた。現国王の側近でもあるクレシェンの父、モレンド
ただでさえ三貴妃の実家が権力を
「私の問題なのに、隠れて
不満を
「隠れて震えるような大人しい主君なら私もこれほど過保護になりませんよ。自由にさせたら敵の最前線に飛び出るような
アルトがダルを
「あちらもこちらも、問題が山積みなのです。せめて後宮の黒幕だけでも
「そういえば、占い師に新しい侍女がついたそうだな」
「ああ。ブレス女官長が親戚の娘を呼んだようですね」
「どこの娘だ?」
「確かブレスの
「田舎貴族……。それにしては……」
言葉使いといい、所作といい洗練されたものだったとアルトは思った。
こっそり立ち去ることもできたのに、思わず声をかけてしまった。深窓の姫君を思わせる
母のことはクレシェンにもダルにも相談したことはなかったのに。
それをどうして初対面の彼女に言ってしまったのか。自分でも分からなかった。
「何か気になるのですか? ブレスの親戚なら怪しい者ではないと思いますが」
「いや、怪しんでいるわけじゃない」
「念のため素性を調べておきましょう。ベルニーニの息がかかっているかもしれません」
「ベルニーニ?」
「ええ。最近台頭してきた
「肩入れする貴族?」
「一番あからさまなのがヴィンチ公爵家でございます」
「ヴィンチ家? 確か五年ほど前に公爵が亡くなられて、幼い娘に代わって後見人が家を管理していると聞いたが?」
「その娘がベルニーニに取り込まれているのかもしれません。重臣達が陛下に調べてみるよう進言しているのですが、最近はますます気弱になられて公務にも無関心のご様子でして……」
はっきり言わないが、年老いた父は最近言動がおかしくなっていた。
先日は、久しぶりに会ったアルトのこともよく分からないようだった。そのためなんとか譲位の証書を作り大急ぎでアルトの即位を進めている。
しかし王が機能しないことによって国の政治は混乱を
だからクレシェン親子を中心に、王派の重臣達が少しでも
「陛下の側近は今では
「そうだな。ヴィンチ家の所領は重要な場所だ。怪しい者に奪われるわけにいかない」
「ベルニーニ派の男と
「できればそんな気の毒なことはしたくないが……」
「アルト様、これは同情で保留にできる話ではありません。甘いことを言っていたら国が傾きます。ひいては
「分かっている。国を安定させるためなら
アルトは
王太子殿下は後宮に占い師をご所望です 夢見るライオン/ビーズログ文庫 @bslog
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