ノット・エレクトリック・ガール
「へぇ、おもしろそうだね。私も今度借りてみようかな」
そう言って、
放課後の図書室は空いていて、ほとんど貸切状態だ。彼女と初めて話したときも、同じような状況だった。
ブラックアウト以降、あのソフトは読み込み不可能になってしまった。ルイにはもう会えない。攻略できていたのか、そうでなかったのかは判然としない。
最後に見たルイの笑顔と、最後に聞いた言葉。僕はもう何度も、頭の中で反芻した。
寂しいけれど、悲しいけれど。僕が生きているのはあくまで
ルイは、
同じソフトを新しく購入しても、僕の知っているルイには会えないだろう。
もう使えなくなってしまったソフトは丁寧にケースに戻して、机の引き出しに仕舞っている。
確認することは叶わないが今もまだ、そしてこの先もずっと、ルイはこのソフトの中に生きているのだろうと思う。
再び会うことはなくても、僕はルイの生きている世界をなくしたくはないと思う。
「前川くん、今度これ読んでみて」
高砂さんが一冊の本を僕に差し出す。
「エレクトリック・ガール」とある。
「おもしろいの?」
「とても」
彼女はまた、ふわりと笑った。
電脳彼女 識織しの木 @cala
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