我輩は人間である。

貴音真

我輩は猫である。

 吾輩は猫である。


 そんなタイトルの小説を書いた人間がいるらしい。


 俺?

 俺はお前ら人間の言うところの猫だよ。

 名前?

 そんなもんねえよ。

 当たり前だろ。

 名前なんか人間しか使わねえよ。

 俺たち動物は名前なんか無くったって相手が誰なのか何となくわかるんだよ。


 それをわざわざ、吾輩は猫であるなんて宣言しやがってよ。

 全く、勝手に猫とか名乗んなよな。

 人間の言うところの猫である俺たちは一度も猫だなんて名乗ったことはねえし、猫って呼んでくれなんて頼んだこともねえ。

 わかるか?

 俺たちは俺たちなんだよ。

 他の何者でもねえ。

 俺たちは俺たちで、お前らが勝手に俺たちを猫って言ってるだけだ。


 ところで、お前らはこんな話を知ってるか?


 我輩は人間である。


 そう言って人間社会に紛れ込んだ猫がいるって話だよ。

 あ、いや俺たちは猫じゃねえよ。

 お前らからすれば猫なのかも知れねえが、俺たちは一度も自分が猫だなんて認めちゃいねえ。

 そもそもお前らは本当に人間か?

 お前らは本当に人間だと言えるのか?

 誰かが勝手にお前らを人間だと決めつけているだけなんじゃねえのか?

 俺が言いてえのはそういうことだよ。


 吾輩は猫である。

 我輩は人間である。


 これは同じことなんだよ。

 俺たちは自分が猫だなんて認めちゃいねえ。

 それでもお前らは俺たちを猫と呼ぶ。

 お前らは自分を人間と呼ぶが俺たちはお前らを人間だと認めちゃいねえ。

 それでもお前らは自分が人間だと決めつけている。

 わかるか?

 結局それは真実ではないんだよ。

 信じているだけだ。


 お前らは猫である。

 名前を持った猫である。


 お前ら人間も立場が変わればこうなるんだ。

 これが俺たちが言いたいことだ。

 覚えとけよ。


 人間も猫も結局は同じだ。

 それがそれであると信じているだけだ。


「みーちゃん、ご飯よー!」


 おっと、メシの時間だから失礼するぜ?

 あ?

 みーちゃん?

 さあな、人間が俺の飯を持ってくるときはいつもみーちゃんみーちゃん言うぜ。

 たぶん、メシのことだろ。


 じゃあな、自称人間ども!

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我輩は人間である。 貴音真 @ukas-uyK_noemuY

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