チヒロ、花火大会へ行く

 1週間後、ナツキとチヒロは、チヒロの部屋で身体測定をしていた。


「ナツキの身長が一気に伸びたね」


「いい眺め。

 チヒロの抱き心地もとても良くなったよね。

 特に胸の発育がすごいね」


「胸が大きくなったのは嬉しいけど結構邪魔なんだね……。

 ナツキはすでに真っ平らだよね」


「もうトップレスでも大丈夫そうだね」


 チヒロがナツキに抱きつく。


「ナツキへの抱きつき心地がいいね。

 なんかとっても安心する」


 ナツキはチヒロを抱きしめる。

 

「何この柔らかい生物。

 すっかり女の子の匂いに変わってるね」


「そろそろ交換した服のサイズが合いそうだよね?

 予定より早くない?」


「エッチなことしすぎたせいかな?」


「私もそんな気がしてる。

 体型の変化を促進したのかな?」


「制服着てみなよ、僕も部屋に戻って着てみる」


 チヒロは制服を着てナツキをまつ。


「おまたせ、もうぴったりになってた。

 あとは微調整って感じなのだろうね。

 チヒロもにあってる。可愛いよ」


「ありがと。

 下着のサイズもほぼぴったりになってたよ。

 すっかり体型が入れ替わったんだね」


 二人で姿見をみる。

 普通の男子学生と女子学生が写っていた。

 少し前まで真逆の体型だったはずが、

 今ではすっかり馴染んでいた。

 声も完全に性別にあった声に変わっていた。


「なら、ビキニの水着も着られるわけか」


「アレを着るの?」


「うん、似合うと思うと。

 最初は恥ずかしいけど」


「よし、着てみるか」


「僕は、部屋着に着替え直してくる」


 チヒロは、ナツキにもらった水着に着替えた。

 ナツキが部屋着に着替えて戻ってきた。


「すごいじゃん。

 可愛いよ」


「とりあえず、着替えるね……」


「恥ずかしがり屋だね。

 夏が終わる前に二人でプールに行こうね」


「うん」


 チヒロは部屋着に着替えた。


「部屋着も完全にサイズが合うようになったね。

 入れ替わった気分だよ」


「だねー。でも、私はナツキみたいに強くないしな」


「チヒロはそれでいいの。それがチヒロの良さなんだから」


「甘やかしてくれるんだ。ありがとね」


「うん。僕の可愛い彼女だからね。

 さて、宿題も済ませちゃったし、今日はどうしよっか?

 服のサイズも落ち着いたから、外出でもする?」


「そっか、もらった靴もサイズが合うようになってるはずだよね。

 でもどこ行く?」


「声も変わったからカラオケでも行く?」


「あ、いいかも。

 女性ボーカルの曲歌ってみたい。

 可愛いやつ」


「僕も男性の曲歌いたい。

 そうだ、シノを誘おう。

 大丈夫?」


「うん、シノなら大丈夫」


 ナツキは、早速、シノに連絡を入れた。

 シノからはすぐにOKの返事が来た。

 

 チヒロは身支度を始めた。

 楽しそうに服を選び、メイクをする。

 

 すでに身支度を済ませたナツキはその様子を嬉しそうに眺めていた。


 

「おまたせ」


「じゃ、いこっか」



 ……



 カラオケ店の前で、シノと合流する。


 シノが嬉しそうにいう。

「ヤッホー、二人とも。

 誘ってくれてありがと。

 さらに見た目が変わったね。

 チヒロはもう私と身長同じくらいだよね?

 可愛いな。

 スタイルも抜群じゃん」


 チヒロが返す。

「ヤッホー、シノ。

 ようやく変化が安定してきたの。

 これで普通におしゃれができる。

 声もすっかり女性の声になったから、今日は楽しみなんだ」


 ナツキが言う。

「シノ、きてくれてありがと、今日はよろしくね。

 あと一人くるから、ちょっとまってね」


 チヒロが言う。

「え? 誰がくるの?」


「ミコト」


 シノが言う。

「本当に?」


「うん、友達として仕切り直したいんだってさ。

 イツキはカエデと一緒だから、暇してたみたい」


 しばらくおしゃべりを楽しんでいたら、ミコトがきた。


「おっす、誘ってくれてありがとね。

 マジで暇してたから助かった。

 今日はよろしく」


 4人は店内に入り、早速、歌い始めた。

 シノとチヒロは一緒に歌った。

 チヒロは、女性の声で歌えるのが想像以上に楽しくテンションが上がっていた。


 ミコトがナツキに言う。

「やっぱ、チヒロ可愛いな。

 体型の変化はもう落ち着いたの?

 ナツキの体格、昔のチヒロそっくりだし」


「うん。チヒロは可愛いよ。僕の自慢の彼女だし。

 体型の変化はほぼ終わってる。

 いまは、微調整中みたいな感じかな」


「いちいち釘を刺すなよ。

 わかってるって。

 まぁ、気持ちはわかるけどさ。

 しかし、ここまで可愛くなるとは驚いたよ。

 てか、お前らずっと家に引きこもって何してたの?

 今まで、出かける様子まるでなかったよね?」


「体の変化をまってた。

 宿題してたよ」


「まじ? 終わった?」


「うん。全部終わった」


「見せて」


「別にいいけど、自分でやらないと休み明けのテストがひどいことになるよ?」


「チヒロみたいなこと言うなよ。

 まぁ、そうだけどさ。

 前は、チヒロと図書館で一緒にやってたからな。

 今年は調子が来るちゃった」


「じゃ、図書館で勉強会でやる?」


「ありがたい、それは助かる」


 シノが言う。

「あ、それ、私も参加したい。

 まだ、宿題終わったないの」


 ナツキが言う。

「うん。じゃ、明日は病院だから明後日から午前中は4人で集まろっか?」


 ミコトが言う。

「了解」


 シノが言う。

「ありがとー」


 新しい4人グループは、カラオケで盛り上がった。


 意外なことに、4人の相性はとても良かった。

 カラオケのあと、ファミレスでお喋りしながら夕食をとって帰宅した。

 チヒロが属するチャットグループのメンバーは4人になった。

 ミコトとシノは試しに付き合ってみることになった。



……



 夏の終わりの花火大会。


 チヒロは浴衣姿で見物に来ていた。

 隣には男性用の浴衣姿のナツキがいる。


 人気のない公園のベンチに並んで座り、花火を眺める。


 綺麗な花火に見惚れるチヒロ。


 そんなチヒロに見惚れるナツキ。


 ナツキはチヒロを抱きしめる。


「チヒロ、綺麗だよ、愛してる」


 二人は、甘いキスを楽しんだ。



 ナツキは、チヒロの浴衣の脇から手を忍びこませ、チヒロの乳首を指で弄ぶ。


 チヒロは、恥ずかしげに俯いて何も言えず、されるがままになった。


 ナツキは突然、手を止め、浴衣の脇から引き抜いた。


 

「チヒロ、帰って続きしよ?」


「……うん。いじわる」



 その夜、二人は初めて結ばれた。



……

  

 

 夏休みが終わり、新学期が始まった。


 男女数のバランス調整のため、チヒロはナツキのクラスへ、ナツキはチヒロのクラスへ移ることになった。


 チヒロとナツキの変化は、皆を驚かせたが、すでにそれぞれの性別について自我が確立していた二人はすぐに学園生活にも溶け込んだ。


 休み時間、チヒロの元には隣のクラスからシノがやってきてくれたので、女子としての生活に困ることはなかった。体育はシノのクラスと合同なので、着替えも一緒にできたので困らなかった。

 チヒロとシノは友達から親友へと親交を深めていった。


 ミコトとシノは、正式に付き合うことになった。

 夏の終わりの花火大会で、ミコトがシノに告白したらしい。

 シノは裏表のない性格のことまり、ミコトの好みのタイプだったことに気づいたらしい。


 

 チヒロとナツキも順調に愛を育んでいる。

 


 長かった夏が終わり、季節は秋へと移り変わっていった。

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XP∅ キクイチ @kikuichi

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