第93.5話 ソファ戦争

ソファの上に寝転ぶという行為は、我が家においてはしばしば戦争の発端となる。


今日もそうだ。私がソファの上に寝転びスマホをいじっていると、同居人の秋沢とかいう小童(27歳)が私の頭を両手ですくい起こそうと試み始めた。

私としては別にそのまま起こされても良いのだが、この日は何故か虫の居所が悪かった。ゆえに私は寝転んだまま背筋をピンと伸ばし、つっかえ棒の如くソファの端から端に取りついた。

すると秋沢の中でも何やら火がついたようで、背もたれと私の間に手を入れて私を転げ落とそうとしてきた。私も負けじと背もたれを掴んで耐える。


そうしてしばらく攻防戦を繰り広げた後、ようやく秋沢がソファから離れていったので、私も背もたれから手を離し、仰向けになってスマホいじりを再開した。直後、私の胸元から腹にかけて突如として重みがかかる。


「そうまでしてソファに寝たいかオノレェ」


私は仰向けのまま首だけを動かし、腹にかかった重みの正体─秋沢を睨みつけた。


「僕だって疲れとんじゃい。そのかてェ身体の上で我慢してやるんだから寝かせろやァ」


そう返しながら秋沢は私の上でスマホをいじり始めたかと思うと、間もなく寝息を立ててしまった。

疲れているのは確からしい。不本意だがこのままにしておくか。私は秋沢がスマホを落とさないよう彼の手から抜き取り、私のスマホと一緒にそばのテーブルへ置いておいた。

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