第1話

 ジリリリン.....





 --黒電話の着信音--




 毎日かかってくる彼からの電話...





「もしもし」




「じゃじゃじゃーん!」




「べべちゃん!





 いま、どこいるの?」






「どこにいると思いようと?」





「ふぅむ、今日は東京?」




「違いようと!



今日はなにをかくそう、福岡と!」




「あ、そっかそっか、おつかれさま。




今日も買収の件で?」





「そーなんだよぉ、




またまた デューデリと!




もぉつかれたよぉぉぉ」





「はいはい、



 おつかれさま。



 こんど会えたら、


 

 たくさん、マッサージしてあげるね。」




「お?」




「あたらしい、



 エッセンシャルオイル

 


 たくさん、仕入れたから、



 試験台になってね」





「いつも、わるいねぇ。



 楽しみにしてるよ」



「うん。



 それで、食事はちゃんと



 してるのぉ?」





「今夜は相手先から



 一貫2千円の寿司を

 


 おごってもらった。 


 

 んで、昼間は牛丼かきこんで…」





「よかった。じゃ、



 ご飯はちゃんと食べてるのね」




「疲れていても、


 

 食欲は 旺盛と!」





「そうだよぉ。



 忙しい身なんだから、



 食事だけは


 しっかりとらなきゃね。



 

 また明日も早いんだから、


 

 へんなビデオとか見ないで



 早めに休むんですよ!」





「わかったよぉぉぉ!



 じゃあ、お休みと!



 百合もよく寝るんだよ!」




「はぁい、



 おやすみ、べべちゃん」



ーーーーーーーーーーーーー



こんな会話がふつうになるなんて、



想像だにできなかった。


彼、春之助は、中堅製造業の代表取締役。



米国でMBAを取得して、



華麗なキャリア



を重ねてきた、



エリート中のエリート。




おまけに、端正で甘いマスク。



それにつけて、物腰が柔らかく、



腰が低い…



なんて、現実離れしている。




それにひきかえ、



私、百合は繊維関係の会社で



経理をしている一般のOL。




だから、



最初はからかわれているだけ



とおもっていた。




まさか、あの晩、



彼から



あんな風に、



電話がはいるなんて、



おもいもよらなかった。




一瞬、耳を疑った。



とは言っても、私自身へあてた



電話ではなかったけれど……




彼は、私の勤める会社の買収の件で



査定のために数日訪れていたのだ。



会社の上層部とのやりとりは



夜遅くまで数日続いた。







あいにく電話がなったとき



私はシャワー中で、



応答ができなかった。





自宅待機を命ぜられていて、



急いでシャワーから出たときだった。




2度目の電話が鳴った。





----聞きなれない声だった----





「あ、こんばんは、



勤務時間外にお呼び出ししてしまい



大変申し訳ありませんが…」





丁重な声の主は、、



相手先の社長自身だった。




― は?



  なんで?




資料の準備は万全。



のはず、だったのに?




まさか…..




それよりもなんで、なんで




社長みずから??




半ば思考停止のまま、




わたしは、会社へと




急いだ…





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ミスター・プレジデント ルゼッタ・ガイア @annnamai

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