丸尾優希の変な高校生活

大きな胡桃

第1話 スタイリッシュな正露丸

 修学旅行2日めの朝だった。

「優希、それくらいにしとけって。それ何本目の牛乳だ。お前絶対腹壊すぞ。」


「大丈夫さ。牛乳は健康にいいんだ。最近は牛乳ばかり飲んでいるおかげで、毎日健康だよ。」


「お前は何かにハマると抜け出せなくなる癖があるよな、、、この前はタピオカの飲み過ぎで腹壊してたじじゃねーか。」


「フッ、、そんな昔のこと忘れたよ。秋山もわすれたまえ。」


「お前まじどうなっても知らねーからな。」


 あのときしっかり秋山の忠告聞いとけばよかった。現在修学旅行二日目の昼、グループで遊園地観光の時間である。そしてお察しの通り私はすこぶる体調が悪い。そう、迫りくる大きい方の便意で



今、皆さんはこう思っただろう。「普通にトイレ行けばいいじゃん」と。しかし、私にはトイレに行けない確固たる理由がある。


それは、



今、このグループに俺の大好きな花子ちゃんがいるからだ。実はまだあまり話したことないため、花子ちゃんにいい印象を持ってもらおうとあがいている最中なのだ。だからとてもじゃないが、


「う○こに行ってきます。」


なんて言って、花子ちゃんの楽しい自由時間を奪えるような状態じゃない。

「言わずに行けばいいじゃん」と思うかもしれないが、この便意は強烈であり、長い戦いが予想される。「丸尾くんトイレ長かったね・・・」なんて苦笑交じりに花子ちゃんに言われでもしたときには赤面ではすまないだろう。


「おい、優希。もしかしてお前、腹壊したか?」


俺の不調に気がついた同じグループで親友の秋山が小声で話しかけてくれた。


「ああ、そのようだ。」


「ほーれ、言わんこっちゃない。正露丸、あるけど飲むか?」


「なに!そんな物を持っているのか。なぜ?」


「旅にトラブルはつきものだからな。正露丸とバファリンは必携だ。」


「さすが秋山だ。ぜひ、後でくれ。」


「なんで後なんだよ。今飲めばいいじゃないか。」


「いや、流石に花子ちゃんの前で正露丸を飲むってのは恥ずかしい。。。」


「別に正露丸くらいいいだろ。」


「わ、私は紳士だから気にするのだよ。あいつ必死にう○こ我慢してるよ。薬まで飲んじゃってさぁ〜wwなんて言われたらどうするんだ」


秋山の準備周到なところに助けられ、ようやくこの危機を乗り越えられそうだと思ったその時だった。前を女子3人で歩いていた花子ちゃんが振り返って言った。


「う〜、お昼ごはん食べすぎてお腹痛くなってきた。ねえ、トイレ行ってきていい?」



爆弾発言だ。えっ嘘だろ花子ちゃん。



「いいよー行っといでー。」



と応じる他の女生徒。


まじかよ。私のこの強烈な悩みってそんな軽く解決できたもんなの?そんな軽いノリで言えることだったのかよ。


いや、こんなことで恥ずかしがってた私がおかしいのか?



ふと、花子ちゃんがこっちを向いた。



「あっ秋山君、それ正露丸?私ちょっとお腹痛くなっちゃって、悪いんだけど、その正露丸一個くれない?」



あっ。なんかふっきれたわ。後で普通にう○こに行こ。



「いっいいよ、、、」



私の苦悩を知る秋山は苦笑い。


秋山から正露丸を受け取った花子ちゃんはそれはもう堂々とスタイリッシュに正露丸を飲んだ。







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