第5話 この物語

パタン_。


私の青春が終わったのは、まだそれが青春だったなんて気づいていなかった、夏のことだった。

結局、追いかけても届かないのは、初めからわかっていたことなのに。

私は追いかけずにはいられなかった。


世界が終わってから、ちょうど一年がたった。


私が一年前に書き終えた物語が書かれた、大学ノートの最後のページ。

最後の行に、うるさい批評家の字が残っている。

米印の後に続く、きれいじゃないけど、丁寧な字。


※ハッピーエンドで終わらせること!


あの日、新と私の世界が終わった日、私の気持ちを最後まで聞いた新は、私に一言、ごめん、とだけを残して、飛び降りた。


こんな結末望んでいなかった


止められたかもしれないのに


あの場には私しかいなかったのに


私は新を救えなかった


新自身を救う主人公は、私ではなかった


それでもよかった、一生、脇役のままでもよかった


それすらもなり切れない自分に、笑った


ふがいなくて、情けなくて、くだらない


この物語青春篇は





バッドエンドだ。





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この物語 ねくたい @sakuranohana16

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