■027――プリムム村、最後の戦い

 ベース帝国主導連合によるフィン王国包囲網瓦解の報を受けて、俺たちは臨戦態勢に入った。

 オクルスとコミットの斥候により、その規模が明らかになる。

 屍人兵による軍、その数およそ十万。

 それに加えて、エルス族率いる傭兵部隊。

 他にも隠し球があるのだろう。

「前回より規模は大きくなったけど、龍王国軍を相手にする程ではない。絶対切り札は隠し持ってるさ」

 側防塔に立つゲンマは険しい顔で地平線を睨んだ。

 前回の襲撃でも人間領域の王国にしては強力な使い魔を惜しげなく使っていた。

 今回はエルダーエルスの協力もある。

 何が出てきてもおかしくない。

「こっちの手札で対処できればいいけどな……」

「はは、みんなで力を合わせれば乗り越えられるよ」

 ゲンマは不敵に笑って、アニソンの鼻歌を歌いながら去っていった。



 この日のために集まった強力な人員。

 この中から誰をスタメンにするか。

 クロードたちとコミットの傭兵組は当然含めるとして、問題は残りだな……。

 オクルスの能力は軍が相手でも通用する強力なモノだが、諜報としての機能を維持したいので表舞台には出したくない。


 森川は自分から参加を志願してきた。

「私は、エルス共和国で討伐・暗殺任務の参加経験があります。実戦でも遠慮せずに使ってください」

 森川は俺の大事なファンでスタッフだし、危険な前線には出したくはないが……。

「彼の重力系エンチャントは有用だから参加してほしいな」

 ゲンマの要請と本人がやる気満々で参加が余儀無くされる。


 年少組は当然待機だな。

「オレっちも戦えるよ!」

 トオルはアピールしているが、相手の出方も見ずに、いきなり白兵戦をする予定はない。

 ましてや相手は屍人兵が主力だ。

「今回は防衛戦がメインだ。遠距離攻撃ができない者と実戦経験がない者は非戦闘員の護衛に回ってくれ」

「じゃあ、私も護衛ですか……」

 モモちゃんはうなだれているが、護衛も大切な任務だ。


「私たちは実戦経験があります」

 意外なことにデンとジュンは条件を満たしていた。

「メキシコや南米で反政府組織と遭遇して銃撃戦になった事があります」

「私も密猟者とは何度もやりあったわ」

 マジか……アメリカのティーンって物騒だな……。

「いや、この二人はフツーじゃないって!一般化すんなし!」

 トオルは必死に訴えかけてる。

 いや、分かってるって……自分の弟が規格外という事実から目を背けたかったんだよ……。


「僕は戦うよ」

 出来ればオルトには前線に出て欲しくなかった。

 個人的感情を抜きにしても、村の物資の補給と管理を一手担っている彼は村にとって重要な人物だ。

「ここは僕の村だ。ずっと自警団の一員として守ってきたんだ。この日のために足手まといになるまいと冬の間頑張ってきた。誰がなんと言おうと戦うよ」

 オルトの決意は固かった。

 ジョイスを始めとする自警団のメンバーのほとんどが待機組に回ったのもあり、オルトはその代表代理として参加することになった。

「俺たちの分まで、頼むぞ」

 ジョイスたちの激励を受けてオルトは胸を張った。

「今度はちゃんと守るよ!カンナヅキ」

 気持ちは嬉しいが、無茶はしないでほしい。


 サリシスの参戦にはジョイスは最後まで難色を示した。

 もっとも、モナ先生を含む治療師は全員参加している以上、サリシスを後詰に待機させることは不可能だろう。

 ましてや聖女と呼ぶ者も多い、高レベルの聖剣使いの治療師である。

 屍人兵相手に有効な聖属性攻撃を加えられる人材は貴重な存在だ。

「もう、みんなに迷惑かけるのは嫌。あたしもできる限りのことがしたい!」

 村を出た時に比べて明らかに凛々しくなったサリシス。

 その背後には後光すら見える。

 ジョイスは遠い目で虚空を見つめた後、俺に視線を向ける。

「……どうしてこうなった?」

 ……俺も聞きたいよ……ジョイス。



 屍人兵の大軍がいよいよ接近してきた。

 遠くの林の合間から悍ましい影と怨嗟の呻き声が響く。

 それに呼応するように暗雲が立ち込め、雨が降り注いだ。

「本日、雨が降る気配はありませんでした……これは人為的なものです」

 モジュローはテラブランチを握りしめ、顔を顰めた。

 前回の襲撃で、俺が屍人兵を全体魔法で燃やし尽くしたのを踏まえて対策したか。

「へぇー、敵も学習するんだー。面白いねぇ」

 ゲンマは呑気にコメントした。

「……笑い事じゃありません。敵の弱点属性を一つ封じられたのですよ」

「ふふん。準備をしてきたのはこっちも同じさ。司令官!用意はできてるかい?」

「はっ!第一魔術師隊!前へ!」

 司令官の号令で城壁上部に軍属の魔術師たちが指定の配置についた。

 屍人の群れが掘りの手前まで迫ってきた。

「第一波到来!第一陣、詠唱!」

 先頭の魔術師は手に持った巻物を広げ、背後で手を繋いだ魔術師共々、一斉にカスタムエンチャントを唱えた。

「《 パレス・カテドラルの聖なる調律よ・彷徨う不浄を清め給え 》!!」

 詠唱と共に光の波紋が城壁を中心に辺り一面に広がり、それに触れた屍人は生の世界への執着を手放し、朽ち果て、浄化された。

 これは龍王国の秘宝で対アンデッドに最大威力の巻物だ。

 古代の大賢者によって記されたもので、龍族の宝物庫に一つしかない貴重な使い切りアイテムだ。

「第二波到来!第二陣、詠唱!」

 もっとも、今使われているのは俺のスクリーバで増殖した複製品だ。

 テルさんが夜なべしてコピーした巻物で、ゾンビども、成仏しやがれ。


 第五波まで対処して、ようやく屍人兵が疎らになり、ホッとしたのもつかの間、敵側に異変が起きた。

 地響きと共に現れた三体の異形は、死体を積み重ねたような巨人だった。

「死体の肉と骨で作った、腐肉のゴレムだよ、悪趣味だなぁ……」

 ゲンマはうんざりした風に言った。

 第六陣による巻物が放つ光の波紋は緩慢に近づいてくるゴレムに当たったが、光のエフェクトは直前で打ち消したように見えた。

「どうやら、耐性を付与されてるようです。耐久値は……うわぁ……」

 モジュローは思いっきり嫌な顔をした。

「弱点は無いのか?」

「ゴレムには違いないのでコアを破壊すれば機能を停止しますが……屍肉に覆われている上に魔法耐性があるのでダメージを与えるのは困難です」


「魔法がダメなら、物理で殴ればいいんですよ」

 デンはそう言ってタブレットを取り出し、数回タップした。

「モジュロー先生、コアの位置は分かりますか?」

「普通のゴレムなら胸に有る筈ですが……」

「うん、胸の中心にエネルギーの塊が視えるよ」

 ゲンマは虹彩を赤く光らせてゴレムを視ている。

 デンが持っているタブレットを覗き込むとゴレムがこちらに接近する映像が映っている。

 角度から推察すると隣の塔だろうかと、何気なくそちらを見ると、いつの間にか長い銃身の大型の武器が設置されていた。

「へっ?」

 俺が疑問を口にする間も無く、銃身の側面で光が素早く明滅したかと思うと、轟音の後に衝撃波が来た。


 ――ドゴォォォォォオーーー


「な、なんだー!!」

 その場にいた全員その場に座り込んでしまった。

 崩れた体勢を持ち直して目に入ったのは、胸に大穴を開けて立っているゴレムだった。

「デン君……何かする前に、一言声かけてくれないかな……」

 ゲンマは珍しく苦言を呈した。

「武器の説明はしましたよね?」

 溶けるように崩壊しているゴレムを見て、司令官と魔術師たちは呆然としていた。

「まさか……あれは、レールガンか?」

 俺の言葉にデンはニヤリ、と笑った。

「分かります?兄さん。地球で試作品をいくつか作ってたんですが、材質の強度と電力がネックで完成度がイマイチだったんです。この世界でやっと納得出来るレベルのものが出来ましたよ。試し撃ちが出来て満足です!」

 デンは早口で目をキラキラさせながら説明している。

 電磁力を利用して超高速に弾丸を撃ち出すレールガンは米軍も開発している実在の超兵器だが、その原理は有名で、動画投稿サイトでも理系の学生が作ってみた動画をあげている。

 といっても、あんなヤバい性能ではなかったが……。

「デン君。今のヤツ、あと何発撃てる?」

 周囲が唖然としている中、いち早く立ち直ったゲンマはデンに聞く。

「この出力だと二発か三発ですね」

「ふーん。じゃあ、見えてる奴やっちゃって」

「分かりました」

 俺たちは耳を抑えて衝撃に備えた。


 腐肉のゴレムが三体とも無力化した後、城壁を攻撃する敵が出現する。

 魔術師の屍人兵の連隊が手前まで来ていて魔法を撃ってきた。

 攻撃の大半は城壁の結界に阻まれたが、数が数なので少しずつ結界の耐久値が減っているようだ。

「魔法もしくは飛び道具で応戦せよ!弓隊は前へ!」

 司令官は冷静に指示を出した。

「カンナヅキ君、攻撃力上昇のマギアを頼むよ」

 ゲンマの指示を受けて、俺はマギアを唱えた。

「《 マサ・パルマ 》 《 キャロール 》 !!」

 城壁にいる全員が赤いオーラに包まれた。

「弓隊!構え!……撃て!」

 城壁の上から聖属性が付与された白く輝く矢が雨のように降り注ぐ。

 死せる魔術師たちの大半は、矢で射られ、無言で浄化されたが、撃ち漏らした少数は接近してきた。

「《 マシンガン 》!」

「《 マシンガン・改 》!」

「《 マシンガン・フル 》!」

 俺と森川とオルトのカスタムエンチャントが火を吹いた。

 無数に注がれる魔法の銃弾で屍人たちは踊るように細切れに成り果てた。

「僕の村に近づくなぁぁあああ!!」

 オルトのマシンガンは森川の協力で強化され、得意の雷魔法を付与した結果、雨によってずぶ濡れの敵に凶悪な威力を発揮していた。


 敵の連隊の数を順調に減らしていると、降り注いでいた雨が止む。

「危ない!みんな、伏せて!」

 ゲンマの突然の警告を聞き、俺は硬直していたオルトの肩を掴んで無理やり城壁の影に屈ませた。

 その直後、城壁の至近距離で何かが爆発したような熱と衝撃が襲いかかった。

「新手か!」

 城壁のスリットから覗くと、弓矢が届かない木々の隙間から魔法を放っている者がいるようだ。

「あれはエルス族だよ。プロークシーの配下だろうね……魔法対策はしているだろうし……さて、どうしようか」

 ゲンマは顎に手を当てて考えている。

「俺らが行ってくるか?」

 クロード達、傭兵組が手を上げる。

「うーん……陽動の可能性がありそうでね……ここからなんとか出来ないかな?」

「じゃあ、コレ、試してみる?」

 いつの間にかジュンが狙撃用ライフルを手に持って立っている。

 ……この子は一体どういう人生を過ごしてきたんだ……。

「そうだね。試すだけやってみてよ」


 彼女は城壁に銃口を乗せスコープを覗いた。

「見つけた」

 そう呟いた彼女は息を止め、二三十秒ほど集中した後、引き金を引いた。

 ――ポスッ

 前方の林から葉っぱが擦れる音と何かが地面に落ちる音が聞こえた。

「命中したようだね。お見事」

 ジュンは大きく息を吐いた。

「あっちの方にも一人いるけど……狙えるかな?」

 ゲンマは森の左端の方を指差した。

 彼女はライフルのボルトを操作して、薬莢を排出し、再び構えた。

 銃口はターゲットの移動の軌跡をなぞるように動き、引き金は不意に引かれた。

「命中、大したものだね」

 ゲンマはジュンの射撃の腕を称えた。

「どうってことないわ」

 彼女は普段通り淡々と応えた。

「こいつらは敵に回したくねぇな……」

 クロード先輩が実感を込めて呟いたが、その場にいた全員同感だったろう。

 司令官も思わず頷いていた。


 敵の出現が途切れ、周囲に少し気が緩み掛けた空気が漂う。

「うわっ、面倒なのが来た!」

 ゲンマは唐突に空を仰いだ。

「骨古龍!それも複数!!」


 ――キシャァアァァァァーー!!


 遥か上空から巨大な古龍のゾンビが二体飛来して結界を打ち破らんと体当たりを繰り返した。

 こちらも飛び道具と魔法で対処したが、強い耐性と耐久力を持っているようで効いているようには見えなかった。

「生半可な威力のダメージを無効にする敵だ。なんとか地面に引きずり落とすのが先だよ」

「《 アル・グラビタ 》!!」

 森川は両手を骨古龍に向け、重力魔法を唱えた。

「落ちろ――!!!」

 骨古龍は見えないプレス機に挟まれたかのように地面に叩きつけられた。

 《 ウィーティス 》 

 地下帝国の女魔術師ロータスがエンチャントを唱えると地面から意思を持った蔦が伸び、死せる龍を拘束した。

「後は任せろ!」

 クロード先輩が城壁から跳躍し、光り輝く刀で斬りかかった。

 さすがの骨古龍も動きを封じられた上に、聖属性が付与された名刀を持つ剣豪の攻撃にはなすすべなく耐久値を減らされていた。


 ――ガァアアァァァァアアーー!!


 その様を見たもう一体は激昂した咆哮を発しながら降下して来る。


「させません!」


 モジュローは素早く城壁の上を走り、その勢いで塔の壁を駆け上がり、その屋根の上から古龍めがけてジャンプして、黄金の紐――フェイムス・フィルムを放った。


 輝く紐に拘束されて飛び回ることができなくなり、もがきながら落下する骨古龍を背後に、モジュローは空中で叫んだ。

「サリシス様!クロード様!胸の赤い魔石を斬るのです!」

「わかった!」

 サリシスは骨古龍めがけてジャンプして、聖剣を抜き、禍々しく光る赤い魔石を一刀のもとに両断する。

 クロードも骨古龍の胸に刀を突き立てて、赤い魔石を粉々に砕く。


 ――ォォオオオォォォォォーーン……


 骨古龍たちは無念に満ちた残響音を残しながら朽ち果てていった。


 骨古龍の断末魔が消え去る間際、森の奥から軍勢が迫って来た。

 エルス族の魔法騎士に率いられた、人間の騎馬兵からなる軍団が地響きとともに突撃してきた。

「おう、やっと戦争らしくなってきたな!」

 クロードは刀を鞘に納めて構え直した。

 司令官は新たな号令をかける。

「第一師団、第二師団、城門前に集結!」

 城門の両翼から待機していた騎馬兵たちが隊列を組んで駆け寄り、正面の守りを固めた。

 両軍を比較すると、練度と装備の差は明らかだった。

 相手方は数だけは上回っているが、見た目の印象は山賊まがいの雑多な傭兵集団という感じで、エルス族の隊長格は人間領域の荒ぶる戦士の扱いに苦慮しているようだ。

「死にたい奴からかかってこいっ!!」

 クロードが鞘から刀を見えない速度で引き抜き、横に払うと、半径数メートル内の戦士たちが真っ二つになった。

 剣豪の容赦ない初撃に呆気にとられていると、

「いやっほーーーーーい!!」

 反対方向から甲高い奇声が響いた。

「あの子……いつの間に……」

 ゲンマが渋い顔で見ているのは、ドサクサに紛れて乱闘に飛び込んだコミットだった。

 龍王国軍からせしめたと思われる、高そうな剣を両手に持って、ニッコニコで暴れまわっている。

「あーもう……戦闘には加わらないでねって、口を酸っぱくして念を押したのにさぁー……」

 そうは言うけど……この陣営にあのイカれエルスを押さえられる人材はいないだろう……。

「まぁ、いいや。カンナヅキ君、魔剣を抜いてよ」

 アッ、ハイ。


 俺は魔剣を抜いて高々と掲げた。

 魔剣の歌声が木霊を伴って輪唱で響き渡る。


 敵の半数はその場に崩れ落ち、残りの者も大半は目に見えて動きが鈍くなった。

「くそっ!お前たち、それでも歴戦の戦士か!――ひぃー!」

 馬の上から必死に檄を飛ばす隊長は、スピードを増したコミットに襲い掛けられ早くも逃げ腰になってた。

「おっじさーん、ねぇ、遊ぼうよっ!あっははははは」

 隊長は火炎魔法で炎の壁を作って彼女を引き離した後、手綱を引いて反転、逃げ出した。

 コミットは反射的に追いかけようとするが……

「待て!深追いするな!」

 クロードの叱責で足を止めた。

「ちょっとくらい楽しんでも、いーじゃん!」

「相手はまだ切り札を出してない、油断するな。後片付けは軍に任せろ。引くぞ!」

「ちぇー」

 二人は引き返そうとした。その時、辺りが急に暗くなり、森の奥の空間が歪んだ。

「やばい、急げ!」


 二人が城壁の近くまで下がった瞬間、異形の巨体が森の中に出現する。


 つるりとした白いボディに無数に蠢く腕と能面のような顔を貼り付けた、悪夢に出て来そうな人外で、これまでの敵で一番巨大だった。


「あれはヘカトンケイル……かろうじて上位存在ってとこかな」

「不味くないか、それ」

「んー、この世界のことわりにギリギリ干渉しない中では強敵の部類で、割といいチョイスだね。これ以上強力だと、この前みたいに管理者が出て来て問答無用でボッシュートだし。考えたモノだよ」

「感心してる場合か!どーすんだよ?」

「司令官、攻撃が来る前に結界を強化して」

「はっ!」

 司令官の号令で魔術師たちは結界の巻物を詠唱する。

 敵の無数にある腕、その手が前に突き出して、それぞれに多彩な術式が浮かび上がり、それらが組み合わさって一つの魔法となり襲いかかった。

 こちらの詠唱はギリギリ間に合ったが、城壁全体が激しい衝撃で大きく振動して俺たちは立っていられない。

 直撃だったら無事じゃ済まなかっただろう。


「ふははははは、見たか!愚か者ども!これが上位存在の力よ!」

 聞き覚えのある声がしたので敵をよく見ると、ヘカトンケイルの肩にプロークシーが乗っていた。

「ゲンマ、貴様が龍に変化するのに時間がかかるのは調査済みだ!最初から龍の姿で来れば良いものよ!変化する前に結界なぞひっぺがしてやる!」

 ゲンマは半目でプロークシーを見て、ゆっくりとその場から上昇し、上空で一瞬にして龍形態に戻った。


 敵味方双方からどよめきが起こった。


『ボクだって日々努力して、成長してるんだよ』

 ゲンマは何気にドヤ顔だが、それは、お館様のおかげだろ、と思った。

 俺の内心のツッコミを感知したのか、ゲンマはムッとした顔でコッチを見て、おもむろに俺を掴んで胸の印に押し込んだ。

「はぁ!?」

『君に楽はさせないよ。さぁ、一緒に戦ってもらうよ!』


 押し込まれた先はいつものファーストクラスではなく、戦闘機のコックピットのような狭い空間の一人乗りのシートに座らされていて……あ、嫌な予感がする。

「まさか……」

『アレ、言ってよ』

「……嫌だ」

『早く言わないと結界が持たないよ?』

「……マジで勘弁してくれ……」

 ヘカトンケイルは再び術式を展開し始めている。

『早く!』

「り……『龍装一体』!」

 俺が無理やりキーワードを叫ぶとコックピッドからシナプスコードが接続、何かのプロセスが展開して、俺とゲンマの感覚が共有される。


 プロークシーは口を開けて唖然としている。背後の味方たちも呆然としている気配を感じる。


「な……なんの真似だ……それは……」

 驚愕の表情のプロークシーは訊いた。

 ……いや、それは俺も知りたい。

「うおーーーー!!」

 城壁の内側から子供たちの歓声が聞こえる。

「ロボットだーー!!」

 セツ少年が珍しく興奮した声をあげてる。

「ドラッカンだよ!オレ、見たことある!カッケー!!」

 トオルは知ってるのか……生まれる前だろうから、ネット配信かな……。

 今、ゲンマは十三年前に放映されていたロボットアニメの主役機に形態変化しているのだろう……何考えてるんだよ……。


『……』

 ゲンマは無言の圧を俺に掛けてくる。

 期待に沿わないと始まらないし終わらない気配がビンビンに漂っている。

 俺は羞恥で悶絶したい気持ちを抑えて叫んだ。


「勇気百万倍――!!」


 頼むから、サッサと終わってくれー!


 ……十三年前の俺だとしてもキツイのに、アラサーのおっさんに、衆人環視下でのロールプレイは拷問の一種だ。


『悪の死霊使いと手を組んで、邪なるものを召喚し、平和な村を荒らすエルダーエルス・プロークシー!君の命運もここまでだ!正義の鉄槌を受けてみろ!』

 ゲンマは楽しそうだなー……ノリノリだ。

 味方の割れんばかりの歓声に包まれて、ご満悦のようだ。

 俺たちは城壁の手前に立ちはだかる。

『ボーとしてないで、こっちも魔法で応戦だよ。今は戦争中で遊びじゃないんだから!』

 前振りなしで散々ふざけといて急に正論言うな!という言葉を飲み込んだ俺はゲンマの指示通りバリアを重ねがけする。

 一連の出来事は何の意味のない演出でもないようで、俺の魔法の威力は普段より底上げされて何倍にも増していた。

 ヘカトンケイルの術式は城壁の結界の手前にいる俺たちのバリアに阻まれ、次第に、確実に、押し返されていた。

「ば、バカな!いくら支配種族でも、上位存在には勝てないはず!何故だ!!」

 プロークシーは目に見えて動揺して辺りをキョロキョロ見渡し始めた。

『ふん!自らの傲慢さを改めもせずに、システムを傷つけ、人の運命を私利私欲で弄んだ罪人に、我々、管理者の祝福を持つものが、敗れる訳がない!』

 傲慢さに関してはお前もどっこいどっこいだろ……。

「くっ……話が違うではないか……圧勝どころか、相手方はほぼ無傷ではないか……」

 ヘカトンケイルの術式の威力は次第に弱まりだした。

『よーし、一気に畳み掛けるよ!』

 俺は攻撃上昇のマギアを掛けた。

『剣を抜いて!』


 背中に背負った剣を抜き、高らかに天に向けて掲げた。


 輝くプラズマソードは天の霊気エーテルを、地の精霊エレメントを、人々の信奉アストラルを吸収して、ソウルモンガーのように闇に染まった。


 俺たちは展開したバリアを盾のように掲げてヘカトンケイルに突進した。


『「うおおおおおぉぉぉぉぉ――!!」』


 ヘカトンケイルは生命の危機を感知して、展開していた術式を消して、弱々しく結界を貼る。


『これが龍と人の究極の力!――イデア・アナムネーシス!!』


 闇の魔剣が結界を突き破り、白い巨体に音もなく沈み、完全に貫いた。


 しばしの静寂の後、そこから光が溢れ、ヘカトンケイルはジワジワとドットに還っていく。

 頭頂部の仮面が一つずり落ち、整った能面のような顔の瞳から涙が零れた。


 望まぬ召喚から解き放たれた異形は、歓喜の不協和音と共に浄化されたかのように消えていった。



 元に戻った俺たちは味方の歓声に包まれ、仲間に揉みくちゃにされた。

「若様――!!ご無事ですかぁ――?!」

 超スピードで駆けつけたモジュローは俺にしがみ付いて泣きじゃくる。

「カンナヅキ、大丈夫?」

 サリシスとオルトも心配そうに駆けつけてきた。

「俺は大丈夫だけど……」

 どっちかというと俺よりゲンマの方がぐったりしている。

 地面に座り込んで、胡座をかいている。

「あー、疲れた……ちょっと無理しちゃったかも……」

 サプライズで無茶振りしてきたのもあって、あまり同情する気にならない。

「ひどいなぁ……結構危ない状況だったんだよ?」

「おいたわしや……ゲンマ様……」

 司令官たちは感極まった風に泣いている。

「あー、ボクのことより、今すぐ敵の残存勢力の確認と残党狩りを……」


 ゲンマが司令官に指示を出そうとした瞬間、背後の岩と倒れた樹々から何かが飛び出してきた。

「ま、まだだー!!!まだ終わらんぞーーー!!!」

 生きてたんか、プロークシー。しぶといぞ。

「私の策はまだ尽きていない!!オーラ=クー!!出てこい!!」

 そういえばいたなー。そんなの。

 俺たちは自然と身構えた、が、俺たちと相手の間に沈黙だけが横たわった。

「何をしてるのだ!オーラ=クー!!は、はやくしろ!!」

 プロークシーは何故か慌てている。

 その時、奴の目の前に何かが落下してきた。

「ひぃー!!?!!?」

 それはボロボロになった瀕死のオーラ=クーだった。

「先生ー!」

 空からグリフェンに乗ったモモちゃんが降りてきた。何があった?

「先生たちが戦っている最中にこの人が城壁内に潜入してきたんですよ。サリシスさんを人質にしようとしてたみたいですけど、代わりに子供達を誘拐しようとしたので、ジョイスさんとシグレさんと協力してやっつけました!!」

 どうも姿を見かけないなと思ったら、そんな狡い事を企んでいたのか……。

 コイツ、マジで卑怯な小物だな。


「エ、エルダーエルスをバカにするな!!まだ私の魔力は温存しているぞ!今から貴様らを私自ら討ち取って……」

 見るからに虚勢を張っている奴の背後から誰かが肩を叩く。


「どなたか、お忘れじゃーありません?プロークシーのクソ野郎様?」


 奴は錆びついた蝶番のようにコマ送りで振り向き時間が静止した。


 そこにいるのは、青筋を立てて微笑み、仁王立ちをするテルさんだった。


「げぇーーーー!!ガルム!!」


「……あー、そろそろ帰ろうか?」

 これから始まる惨劇を確信した俺は何とはなしに呟いた。

「そうだね……じゃあ、後は頼むよ?司令官」

 ゲンマも俺に同調して締めのフェーズに入った。

「……あ、はい!ゲンマ様、勇士様方、お疲れ様でした!!」

 司令官も敬礼し、部下にテキパキ指示を出した。

 俺たちは城壁の中に帰って行った。

 背後では一方的な私刑が容赦なく執り行われていた。


「ぎゃーーー毒が全然効かぬではないかーー!!」

「いい加減やることがワンパターンですわよ?!システム怒りの鉄拳をくらいやがれ!!!ですよ?!」

「うぎゃあああああ――!!!!」

 静寂を取り戻した森にプロークシーの悲鳴が響きわたった。



 後処理を終えた司令官の報告で、後詰で待機していた屍人兵の半数はプロークシーの敗北を確認して速やかに撤退したようだ。


 しばらくは向こうから攻め込んでくることはないだろう。


 テルさんは捕獲したプロークシーとオーラ=クーをタルタロスに“納品”したようだが、あきれたことに、二人はまだ魂を分割していたようだ。

 ただ、二人が本来の力を取り戻すには千年単位の時間を要するとのことで、もはや放置しても問題ないレベルにまで弱体化してるらしい。


 今回の防衛戦は龍王国側の完全勝利といってもいいだろう。


「だが、俺はまだ納得してないからな?」

 俺はゲンマを厳しく問い詰めた。

「えー……大きな犠牲もなく勝ったからいいじゃん」

「よくない!なんなんだよあの唐突な巨大ロボットは?あんなことする必然性ないだろ!」

「必然性は一応あるよ?」

「ほー?どんな?」

「君は王都に住んでいる市民……特に官僚たちを見て思うところはなかったかい?」

「……」

 ゲンマが何を言いたいか、おぼろげに見えてきた。

「姉さんは、検閲もソルラエダも問題の根は同じと見ているんだ。支配種族と人間は協調するどころか互いを侮っている。どっちも問題から目を背け、異なる種族間の溝を自分たちの都合で広げてきたツケが、今になって辺境や弱い人間に回ってきた。この状況はこれ以上、放置出来ないんだ」

「……みんなで力をあわせて、か」

 俺は自分にとって都合が悪いことを見て見ぬ振りをする傾向を省みて、反論できなかった。

「そう。この戦いはただ勝つだけじゃダメで、龍と人が力を合わせて敵を打ち破る、そういう象徴を持つことが、これからのためにも必要だったんだ」


 必然性については理解できた。

 だが、俺はまだ納得できなかった。

「わかった。理念が有ってやったってのは理解した。でも、なんで事前に一言も相談しなかった?」

「だって、言ったら反対したでしょ?」

「あのなぁ、ちゃんとした考えがあるんなら頭ごなしに反対しないぞ!俺が怒ってるのは騙し討ちみたいにしたことだ、俺は友達なんだろ?」

 ゲンマは真顔になった。

「前もって言ってくれたら、みんなと協力して凄いことができたかもしれないんだぞ?あんなパチモンじゃなくって、オリジナルのもっとカッコいいものがさ。俺はそれが残念なんだよ」


 これは創作者クリエーターの端くれとして、どうしても譲れない一線だ。

 借り物の表現で良しとすることに、作家としての自分の矜持が許さなかった。


 ゲンマはしばらく黙りこくった後、神妙に「ごめん……」と呟いた。

 素直に謝られて俺は逆にたじろいだ。

「こ、今回は準備期間も短かったからしょうがないとして、次からはちゃんと相談してくれよな!」

「……うん。わかったよ……ふふふ。協力かぁ……」

 ゲンマは嬉しそうに頷いた。



「ああ、そうそう。姉さんが戦争が終わったらカンナヅキ君と話がしたいってさ」

 ゲンマがそう言い、ジョイスの宿で個室を借りた。

 以前のアブストラクトとの緊急面談の時と同じ空間が展開された。

 向こう側に龍王ガーラとエラト・ムーサ、こちらは俺とテルさんとゲンマだ。


「まずは我が龍王国に勝利をもたらしてくれたことに礼を言いたい。この度の戦いぶり、真に見事であった」

 俺たちはガーラに臣下の礼を取った。

「……と、堅苦しい話はここまで。中々大変な戦いだったようだな」

「楽には勝たせてくれない、って予想は当たってたけどね」

 確かに傭兵組やMTPの誰か一人欠けても苦戦しただろう。

 結界を一度でも破られていたら、多くの犠牲者が出ていたのは確実だ。

「全員がベストを尽くしたおかげで最善の結果が出せた、これ以上の成果はない……カンナヅキ殿、我々は其方がもたらしてくれた勝利に相応しい褒賞を与えようと思う」

 俺は自然と身構え続く言葉を待った。


「このプリムム村を龍王国特別自治区に制定し、エンダー・ル・フィンことカンナヅキ・リョウをその長に任命する」


 俺はきっかり三十秒間、口を開けて呆けてしまった。

「は?」

 マジで?なんかの間違いじゃ……?

「これはもう決まったことだ」

 ガーラはキッパリ言い放った。

「いや、いや、村長を差し置いて、そんな……」

「村長は辞退した。完全に我が身に余る、とな」

「でも、村長には息子さんだっているのに……」

「彼らも同意した。なにより龍族の意向には逆らわぬ、とな」

「何で俺が……」

「他に適任者がいないのだ」

 どういう理由で俺が適任なんだ……だいたいなんで急に自治区の制定なんてするんだ。

「表向きの理由は最大功労者であることだ。其方が引き寄せた優れた人材がこの勝利をもたらしたのは誰の目にも明らかである。防衛の最前線で戦う者には最大の恩賞を与えねばならない」

 正直、俺も驚いたがな。彼らがここまでしてくれるとは思わなかった。

「表向きってことは裏もあるということですか?」

「当然……というよりこっちの方が重要だが。まず、新しく見つかったダンジョンが産み出す富を龍王国に直接流し込みたくないのだ。現状このままだと中央の官僚を太らせるだけの餌になるのが目に見えている。今後を見越して国境警備に予算が行き渡るようにしたい」

 あー、それは納得した……。

 都市部と辺境の格差には埋めがたいものがある上に、防衛で金がかかるのは辺境の方だもんな。

「それと龍王国の制度改革を色々考えているのだが、そのテストをそこで行いたい」

 実験場ってことだな。

 エルス共和国と比較しても、国民のポテンシャルを活かしきれていない現状を考えるとこれも必要なことだろう。

「さらに我が弟ゲンマを共同統治者にして支配者としての経験を積ませて欲しい。最終的に私の代理を任せられれば、と思っている」

 そうか……ゲンマの友達でいてくれってそういう意味か。なるほど。

 まぁ、めんどくさいことは研修にかこつけて丸投げすればいいか。

「何とか自分だけ楽しようと考えてるみたいだけど、そうはいかないからね?」

 ゲンマは満面の笑みで言った。

「ちっ……」

「自治区と銘打った以上、龍王国のしきたりに囚われず、其方の知識と叡智でこの地を采配して欲しい。ともあれ、しばしの間、ゆっくり休むがいい。テル・ムーサよ、これからも、この二人をよろしく頼むぞ」

「はい!お任せください。ガーラ様!」

「……大丈夫でしょうか?……本当に事の重大さを分かっているの?テル姉さん?」

 ご機嫌なテルさんとは対照的に不安そうなエラト・ムーサだった。



 ガーラの勅令をみんなに伝えると、後始末そっちのけで大議論が巻き起こった。


 オルトが興奮した面持ちで、

「じゃあ、この村に新しい名前をつけなきゃ!」

 と、言ったのがキッカケだった。

 俺としては、別にプリムム自治区でいいだろ、と思うのだが……。

「良くないよ!カンナヅキが領主になるんだから、それにふさわしい名前が必要だよ!」

 この意見に森川は深く頷いた。

「その通りです。新たな神話の歴史がここから始まるのですから、その第一歩である名付けはとても重要です」

 おい、風呂敷広げるなよ。

 俺が過ごしたい人生は日常系ほのぼのスローライフ全年齢版なんだ!

 このメンツだと無理そうだけど!

「うーん……はい!神聖神無月帝国がいいと思います!」

 モモちゃんは元気が良くてよろしいが、そのセンスは戴けない。

「……俺の名前を使うのは却下」

 そういうとその場にいた全員が衝撃を受けた顔をした。なんでだよ。

 ていうか、お飾りの神輿として定期的にコスプレする以上の羞恥プレイはなんとか回避したい。

「ダメに決まってるだろ。ここはあくまでもガーラ様から預かった土地であって俺のものじゃないんだ」

「固いなぁ……別にいいのに」

 ゲンマはニヤニヤしながらなんか言ってるけど、お前も当事者だろ。

「じゃあ、ゲンマ自治区にするか?」

「えー?やだよー。それに筆頭統治者は一応君なんだから、ボクの名前つけるのはダメでしょ」


 それから命名会議はグダリにグダッた。

 俺はホワイトボードに書かれたリストを眺める。


『神龍ファンクラブ』『エンダー&ドラゴン』『龍王国推理小説協会』『暗黒の夜明け団』『百合十字団』『青い地獄の火クラブ』『大森林自然保護の会』『北方守護龍騎士団』『偉大なる龍族及び北ミステリーファンクラブ連合』……etc.

 ……お前ら、もしかして、ちょっとふざけてないか?


 会議は行き詰まり、沈黙が小一時間支配した。

 全員が疲労と頭痛でグッタリしてボーッとしている時、俺は何気にジュンの着ているTシャツが目に入った。

 そこには地球のイラストの下に手書き風フォントで“GUARD”と書かれている。

 俺は無意識に小声で呟いた。

「アースガード……」

 ジュンは俺の視線と言葉に気がつき、改めて、自分が着ているシャツの絵をマジマジと見て「ああ……なるほど」と言った。

「いいんじゃない?もう、それで」

 ジュンがそういうと、俯きがちだった全員がハッとした風で顔を上げた。


「簡潔で神話の雰囲気もあってよろしいのでは?」

「名前を考えるのって難しいね。僕はカンナヅキ自治区も捨てがたいけど……」

「先生のアイデアなら文句ありません!」

「兄さんがそれでいいなら異論はないよ」

「ふわぁあああ……眠い。もう寝ましょう……」

「じゃあ、姉さんにそれで伝えておくよ」


 活動限界だったのもあって、その日はそれ以上深く考えずに解散して就寝した。


 こうしてこの地はプリムム村改め、アースガード自治区と命名された。


 全ての人民が支配種族である龍族の元に平等という建前があるこの国で、人間である俺に自治を委ねられた事は、支配者側の都合によるものが大きいとはいえ、この世界の歴史書に載るレベルの事件だとは頭では理解している。

 しかし、その実感が襲いかかってくるのはまだ先――少なくとも、フィン王国の問題を解決した後のことだろう。


 今はまだ、仲間たちとの安寧な時間を堪能したい。

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