第40話 担当女神は貧乏神(1)
「その子アイちゃんっていうのね! だれか! アイちゃんが! アイちゃんが!」
口に手を当て人を呼ぶご婦人
――しまった……つい名前を呟いてしまった……
墓穴を掘る優子。
次々と野次馬が集まってくる。
しかも、おまわりさんまでやってきた。
あっ、この世界におまわりさんいたんだ……妙に納得した優子であった。
おまわりさんが、ご婦人に声をかける。
「どうしました?」
「この女が、この女の子アイちゃんを殺したんです!」
「えっ! それは本当ですか!?」
おまわりさんは、優子をにらんだ。
優子は懸命に首を振り否定する。
そして、懸命にアイちゃんの手を振っている。
「ほら……こんなに元気じゃないですか」
「ちょっと、その子をこちらに見せなさい!」
おまわりさんが優子へと近づいてくる。
万事休すか……
なんで私だけがこんなことになるのよ……
いつもいつも……
私、関係ないじゃん……
涙ぐんだ優子の目は、初めて異世界へと転移した時のことを思い出していた。
いつもどおりの日本の朝。
家の外からは通学の小学生たちのはしゃぎ声が聞こえてくる。
子どもたちの異常に高いテンション。
ということは、今日も、晴れか。
自分の部屋のベッドで呆けていた優子の朝は、いつも通りの目覚まし時計の音で目を覚ました。
「貧乳! 貧乳! 貧乳!」
腹に時計を抱えたカエルの声が、カーテンで遮られた薄暗い部屋に鳴り響く。
しかし、すでにこのカエルの罵声に慣れっこ優子は、ムキになることもなく、いつも通り握りこぶしでカエルの頭を押し潰した。
ムニュウ!
潰れたカエルの断末魔。
誰が無乳やねん!
優子は、カエルの時計を鷲掴みにすると壁へと投げつけた。
びたンと壁にぶつかったカエルは、ポニンと跳ね返り4回転ひねりを加えて、フローリングの上に見事着地した。
毎日、毎日の反復練習のおかげで、カエルの回転と着地に磨きがかかっている。
コレが目覚まし時計でなく、体操選手でもあれば、インターハイを目指せたかもしれない。実に残念である。
カエルがぶつかった壁の向こう側から男の怒鳴り声が響いてくる。
「優子! うるさい! 毎日! 毎日!」
その男は、どうやら優子が投げたカエルの音が気に入らなかったようである。
「オマエこそ! バカアニキ!」
優子は、その声に反発するかのようにベッドから飛び起きると壁に向かって怒鳴った。
「うるさい! 今、大事なところなんだ! 邪魔するな!」
壁に押し付けた優子の耳にいつも通りカタカタとボタンを叩く音が聞こえた。
「毎日! 毎日! ゲームばっかり! このヒキニートが!」
優子は、治まりがつかないのか壁をドカドカと蹴り始めた。
「クソ! この勇者マジつえぇ!」
すでに壁の向こう側の兄と呼ばれた男は、ゲームに熱中で優子のことなどお構いなしのようである。
いつものことなのか、優子は、最後にひときわ大きく壁を蹴ると、満足したのか、大きく背伸びをした。
窓のカーテンをさっと開ける。
窓から明るい朝日が狭い優子の部屋に差し込んでくる。
今日も天気は晴れらしい。
部屋の窓からは、すぐ隣の家の窓がよく見える。
しかし、すでに窓越しの隣の部屋には誰も見あたらない。
隣には、同級生の
ココだけの話、結構イケメンである。
だが、城野君は、サッカー部の朝練があるせいか、優子がカーテンを開けるときには、すでに部屋にはいない。
決して避けられている訳ではない。
夜な夜な城野君が、エロ本を見ながらモゾモゾしているのをカーテンの隙間から覗き見しているのはバレてないはずだ。
まぁ、いつもの光景である。
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【日本での優子のステータス】
氏名 木間暮優子
年齢 17歳
職業 女子高生
レベル ……?そんなものはないので、学年学力順位、158位/165人
体力 ……? 人間は数値化できまん!
力 ……? そこまで言うなら…………
魔力 ……? 数学 1/5段階評価
知力 ……? 国語 2/5段階評価
素早 ……? 理科 3/5段階評価
耐久 ……? 体育苦手 1/5段階評価
器用 ……? 家庭科 2/5段階評価
運 ……? 社会 2/5段階評価
固有スキル ……? 隣の城野良人の覗き見
死亡回数 0 (当然よ!)
右手装備 なし
左手装備 なし
頭装備 なし
上半身装備 パジャマ
下半身装備 パジャマ
靴装備 なし
攻撃力 ……? 異性との交際経験0
守備力 ……? 女友達の数0
所持金 500
パーティ 父:木間暮八太 母:木間暮奈美子 兄:木間暮杉太
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