第27話 オタンコナッシー(3)
なぜ、この町の住人たちは、ヤドンを勇者と思うのだろうか、やはり、胸に大きく『ゆうしゃ』と書いているからなのだろうか。もしかしたら、この世界では、言った者勝ちなのかもしれない。
ヤドンが我に返り、膝まづく老人に目を落した。
「はぁ? なんだって?」
「いえ……今、先ほど、あなた様は白き手紙を天に掲げ『文字』と叫ばれました」
後で知ったんだけどブリーフってドイツ語で文字ってことなんだって。私、ドイツ語、知らないから、分からなかった。テヘ。優子は心の中で舌を出す。
ていうか、ここドイツ語通じるの? ドイツなのか? 違うだろ!
「文字……俺が?」
「はい、ブリーフと……」
「あぁ! 言った! 言った!」
「やはり、それでは、天の神はなんとお告げをくださったのでしょう。ぜひ、我々に教えてくだされ」
「何も。ほれ、この通り真っ白なパンツだ」
ヤドンは老人の前で、純白のブリーフパンツを広げた。
老人は目を丸くしながら、そのフリーフを見つめた。
「やはり、私どもにはその『文字』が見えないのですね……」
「よくわからんが、ここに何か書いているのか?」
ヤドンは、純白だと思っていたブリーフが、汚れていると思い、いろいろと天に向かって透かして見た。
しかし、やはり何も見えない。
「勇者様……あなたは、そこまでして私たちのことを……よほどのことが書かれていたのでしょう……」
老人は力なく肩を落とした。
優子はその老人の肩をツンツンとつついた。
「どうしたのおじいちゃん? 私だったら、相談のるよ?」
「えぇぇい、近寄るでない! パンツを人前で脱ぐような変態娘には用がない!」
「誰が変態娘ですって」
「お主しかおるまいが、違うというのなら、今、そのスカートをめくってみい!」
くっ!
確かに、このスカートの下はノーパン! 乙女の純情が詰まっているのだ。
そうおいそれとのぞかせるわけにはいかない。
優子はスカートを押さえつけた。
「それ見てみい! この変態女が! 変態魔女ムンネディカと一緒じゃないか! いや、お主、もしかしてムンネディカの回し者か?」
「胸デカですって! デカければいいってものじゃないのよ! 程よくこんもりと、手からちょっとはみ出すぐらいのやわらかな感触……これぐらいがいいのよ!」
「お主の胸……どう見てもそれ以下、いや貧乳……無乳ではないか」
「私の胸はこれからなのよ! これから!」
「すまぬ。無乳の娘よ……確かにお前はムンネディカの回し者ではないな。ムンネディカの下僕たちはどれも巨乳ぞろい。無乳のお前が下僕のはずがない……すまぬ」
「だから……誰が無乳よ! 誰が!」
優子の拳が震えていた。
取り残されていたヤドンが、無理やり話しに割って入った。
「そのムンネディカがどうしたというのだ?」
老人はヤドンの足にすがりつく。
「勇者様、どうかこの町の少年達をお救いください。年頃の美少年たちはすべて、ムンネディカに連れ去られてしまったのです」
優子はあたりを見回した。
確かに、街には人が溢れてはいる。しかし、確かに言われてみると13歳から15歳ぐらいまでの美少年の姿が見当たらない。まぁよくよく見ないと気が付かない。だって、ブサイクなのは残っているし、そもそも、美少年ってくくりが圧倒的にその数が少ないし。
辺りを見回したヤドンは頭をかしげた。
「少年なら、そこにもいるじゃないか。何が問題なのだ?」
ヤドンは一人の少年を指さした
咄嗟に、側に膝まづきヤドンを見あがていたアラサーの女の人が叫んだ。
「不細工は嫌なのです!」
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