第26話 オタンコナッシー(2)
周囲の町の住人たちの視線が一斉にヤドンに向いた。いや、ある程度はすでに変態ヤドンに目を向けてはいたのだけど、それ以外の人々の視線もヤドンへと集まったのだ。
視線の先には、天空の太陽に向けて純白のブリーフを広げ仁王立ちのヤドンがいた。
もう、何なのこの光景!
優子は、早くこの場から離れたいと思っていたはずである。
しかし、優子には、それができなかった。
なぜなら、ヤドンの近くにいたアラサーの女の人が涙を流しながら、膝まづいたのである。
ただそれだけで? いやいや、その変な行動をしたのは、その女の人、一人だけではなかったのだ。
女に呼応するかのように周囲の人々が、次々とひざまずいていく。
ヤドンの周りには、膝まづいた人々で大きな円ができていた。
人々が静かに厳かに首を垂れる先には、天にブリーフをかかげるヤドンの神々しい姿。
なにこれ?
ヤドンの横で周囲をきょろきょろと見る優子には、この状況が全く訳が分からない……
この町は、もしかしたら変態をあがめる町なのかしら?
ちょっとまずくない……このままだと、私、目立たないじゃない!
キラキラの女子高生は商品価値が低いっていうの……そんなことはない! 女子高生の価値はプライスレス!
私も何かした方がいいのかしら?
女子高生の変態ならヤドンを超えられるかもしれない。
優子はおもむろにスカートの中に手を突っ込むと、自分の下着をずり降ろし始めた。
そして、足をあげ、パンツを掴むと。
天に掲げる。
「女子高生の生パーーーーン!」
どうだと言わんばかりに、優子はほほ笑んでいた。
脱ぎたててである。
その筋に売れば、おそらく数万の価値はするだろう。
まっさらなブリーフなどその足元にも及ばない。
優子は自分の勝利を確信した。
ヤドン……ごめんね。あぁ、私って、罪深い女。
自分に酔いしれている優子の後頭部に何かが当たった。
それは次第に数を増してくる。
優子は自分の額に手を当てた。
手にはべったりと赤い血が。
「なんじゃこりゃぁぁぁぁ!」
どうやら、投げられた石で、額にケガを負ったようである。
優子めがけて石が飛ぶ。
四方八方から石が飛ぶ。
「この変態女!」
「勇者様の神との交信を邪魔するな!」
「この年増! パンツは女子中学生までだ!」
いわれもない罵詈雑言が、優子を襲う。
なんでよ! なんで、私の生パンはダメなのよ。
高校生はダメなの、中学生じゃないと。
やっぱり、ここは変態の町なのね……
優子は力なくその場に崩れ落ちた。
「だけど、涙が出ちゃう、女の子だもん……」
優子の頬を一筋涙が伝っていく。
そんな優子を無視するかのように、一人の老人がヤドンの前へと歩み寄ってきた。
ヤドンの前で膝まづくと、声をかけた。
「勇者様……天の神はなんと申されておりますでしょうか?」
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