第25話 オタンコナッシー(1)

 今日もアホのような快晴である。そんな青空の下、コチラもアホの優子が肩を震わせ早足で歩いていた。そこは広い一本道。その真ん中を優子が一人で、脇目もふらず、ひたすら歩いているのだ。

 その広い一本道はオタンコナッシーという町の中央を真っ直ぐに貫いていた。

 周りにはいろいろなお店が並び、人々が賑やかに行きかっている。

 女子高生の優子好みの可愛いお店も並んでいる。色とりどりのチョコレートが並んだお店。かわいいクマのぬいぐるみを並べた店など色々だ。

 いつもなら、キャァ! 何コレ! かわいい! とか言いながら、いろいろな店をのぞき見し、気づいたら夜だってことも。


 しかし、今日の優子は違っていた。


 むすっとした顔でひたすら早足で歩いているのである。

 その優子の影をヤドンが、ガシャガシャとプレートメイルを鳴らしながら追いかける。

 その音が気になったのか、人々がヤドンを見つめると、急に動かなくなっていく。

 それもそのはず、勇者のプレートメイルを身にまとった男の下半身は、純白のブリーフ一丁で広場を闊歩しているのである。

 変態勇者!?

 人々はその勇者らしき男の姿を沈黙をもって出迎えた。


「優子! ちょっと待てよ!」

 その声を無視するかのように優子の足が早まった。

「聞こえているのか! 優子! ちょっと待てって!」

 ヤドンの手が優子の肩を掴んだ。

 優子は咄嗟にその手を振り払う。


「はなしてよ!」

「さっき、俺たちはパーティだって言ったよな」

「それは、冒険での話! 街中では声かけないで」

「どうしてだよ?」

「あんたと一緒にいると、私も変態にみられるのよ!」

「変態? いいではないか」

「いやよ! 私は女子高生! キラキラの女子高生よ!」

「なんだ、お前、不変態ふへんたいかよ……俺なんか見てみろドラゴンから人間への不完全変態ふかんぜんへんたいだぜ」

「どこが不完全変態よ! 完全変態かんぜんへんたいじゃない!」

「そうかぁ? おれって不完全変態だと思ってたんだけどな。だってさ、臓器とか特に変わってないし……見た目もそんなに変わってないだろ?」

「アンタね……自分の姿を鏡で見てからモノ言いなさいよ! そのどこが変わってないのよ!」

「え⁉ ドラゴンと人間ってそんなに見た目変わらないだろ? だって、目だって二つだし、口だって一つだしさ」

「目とか口の話じゃないわよ! パンツよ! パンツ! パンツ一丁で外、出歩いていたら変態でしょうが! どこからどう見ても完全変態よ!」

「いまいちよく分からないなぁ……なぁ、ところで、今日のブリーフを寄こせよ」

「何言っているのよ! なんでこんな道の真ん中で! しかも、みんなが見ている前でパンツをあげなきゃいけないのよ!」

「約束だろ……お前、約束破るのかよ、ならスマホ寄こせ」

「何言っているのよ、約束は報酬の分け方でしょ!」

「馬鹿だな! ブリーフの約束はパーティを組む上での前提条件だ。それが守られなければ、報酬の約束も守られない。したがって前提条件を破るということは、報酬の約束を破るという事にもなる! ドゥー・ユー・アンダスタァン?」

「あんた何人なにじんよ? 本当に!……いいわよ分かったわよ。渡せばいいんでしょ! 渡せば!」

「分かればいいんだ」

 ヤドンは嬉しそうに何度もうなづく。


 優子は肩にかけるスクールバックに手を突っ込むと、おもむろに一枚のブリーフを取り出した。

 そして、ヤドンに渡した。本当に適当にポイって。

 ヤドンは嬉しそうに受け取る。

 次の瞬間、感極まったヤドンは叫んだ


「ブリーーーーーーフ!!」

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