第24話 呪い(3)

「ただし、俺からの条件もある」


「何よ! 言ってみなさいよ」

「報酬から得られる経験値は、全てお前にやる。それ以外の物は全て俺によこせ」


「何、そんな条件。確かにヤドン、あなたはレベルがカンストしているから、これ以上の経験値は不要ってことよね。私は、お金とアイテムは腐るほどあるから、不要ってことね」

「まぁ、そういうことだ」


「いいわよ。その代わり裏切りは絶対に無しよ!」

「いいだろう。ここに契約成立だ」

「じゃぁ、指切りげんまんね。小指出して」


 ヤドンは、言われるまま小指を出した。

 優子はヤドンの小指に自分の小指を絡めた。


「指切りげんまん 嘘ついたら針千本のーます、指切った!」

「なんだそれ?」

「えっ? 指切りげんまんよ。約束を破らないって言う誓いの証よ」

「そうか、約束を破った時には、針千本飲むだけでいいのか。それはとても簡単だな」

「はっ? あんた……飲めるの?」

「うん? お前は飲めないのか?」

「普通、のめないわよ!」

「そうなのか、俺なら余裕だがな!」

「何言っているのよ! それじゃ、誓いにならないじゃない」

「そうか仕方ない、ならば誓いを破った時には心臓が破裂するように呪いをかけてやろう」

「ちょっと待って! 何! その本格的なのは!」

「なんだ、お前、約束を破る気なのか?」

「いや、そうじゃないけど、場合によっては、あるじゃない、そのぉ、約束を守れないことも」


「お前……口だけだな」


「そうじゃないわよ! ただ、いきなり命かけるってのはどうかなって……」

「そうか分かった。なら、こうしよう、俺が約束を破れば俺の命をやろう」

「だから、命とか重いって!」

「お前、ついさっき俺の命取りにきたんじゃなかったのか?」

「そうでございました……」

「それで、お前が約束を破ったら、そのスマホというものを俺によこせ」

「えっ! このスマホ……」

「そうだ。命をかけるよりかはいいだろう」


 ヤドンは、自分を倒す武器をもたらすこのスマホに恐怖を覚えたのだろうか。

 ならば自分の手元において我が身を守ろうといえば納得もできる。

 しかし、ヤドンの本心は違っていた。

 ヤドンの傷は自ずとそのうち治るだろう。

 すると、また、周りの生き物たちを威圧しないために、また、洞窟にこもる生活が始まる。

 いつ終わるとも判らない孤独な生活。


 嫌だ……ヤドンの心はその孤独を拒絶した。


 しかし、スマホなるものがあれば、その画面の向こうには、だれかがいるのだ。

 その時間が例え5分であったとしても。



「いやぁ、ちょっとどうかなぁ? このスマホの契約者は女神プアールさまだし……」

「お前、やっぱり、約束守る気ないだろう」

「ありますよ。ありますよ。約束守る気100%あります!」

「なら、大丈夫だろ。お前が約束さえ破らなければいいことだ」

「そりゃそうですが、旦那……」

「なら、ここに契約の呪いは成立だ」

「これって呪いだったんですかぁ!」

「指切りげんまんみたいなものだ」

「全然違うわーい!」


 ここにレベル1の優子とブリーフパンツの勇者ヤドンとのパーティが成立した。



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【お金減ったのはスプレーとマスク代ね!】

 氏名 木間暮優子

 年齢 17歳

 職業 女子高生

 レベル 1


 体力 50

 力 10

 魔力 1

 知力 2

 素早 5

 耐久 5

 器用 5

 運  7

 固有スキル 貧乏性:いらないものなら何でも引き受けます♡

 死亡回数 5


 右手装備 スマホ(ネット接続付き)

 左手装備 スクールバック

 頭装備  セーラー服リボン(赤色)

 上半身装備 セーラー服(半袖)

 下半身装備 紺のミニスカート(校則違反)

 靴装備 スニーカー(通学用)


 攻撃力 5

 守備力 5


 所持金 989,613,855,854

 パーティ なし→ヤドン

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