第14話 女神の祝福(3)

 女神プアールの世界では、異世界人を使って魔王を倒すゲームが流行っていた。

 無事、魔王を倒して生き残った最後の一人の異世界人は願いが叶えられるらしい。

 また、その異世界人を招集した女神も賞金が貰えるのであった。

 そして、このゲーム『女神と転生』は、神様の世界で一大ブームとなっていた。

 トップランカーは、もうまさにアイドル! テレビや雑誌に引っ張りだこである。

 でも、魔王を倒せば願いが叶うというのであれば、前回の世界アルガドラスにおいて優子が魔王を倒した時点でクリアーのはずであった。

 しかし、結果はゲームオーバー、なぜなら、ゲームの世界に転生された異世界人は、一人ではなかったのだ。

 そう、生き残りをかけたバトルロワイヤルそれが最後の試練であった。


「……もういいわよ。で、今度は何をくれるの?」

「えっ! 何かいるんですか?」


「あんた女神でしょ! 私に女神の祝福を与えなきゃいけないんじゃないの! じゃないとクリアーできないわよ、ずーっと!」

「そうでした……かといって、スマホの支払いもありますし……私、もうお金ないですよぉ」

「ないのぉ……」


 絶対、コイツ、貧乏神に間違いないわ。

 優子は確信した。



「あっ! 優子さん、スマホをネットにつなぎたいって言ってましたよね。それならmegazonネットの契約でどうですか。一番安い契約であれば、そんなに高くないですし! 月々の利用料、たったの450円(税込)! これだったら今の私でもなんとか大丈夫!」


「ネットにつながるの!」

「はい」

「それでいいわ!」


「では、新しい世界に行ってらっしゃいぃぃ」

 優子の体が天空の暗い闇の中へと浮かび上がっていく。


 プアールは、離れていく優子に伝えることがあったことを急に思い出した。


「あっ、そうだ! ちなみに優子さん、チャレンジ券すべて使い切ったので、次死んだら本当に死んで終わりですからね」

「はぁ? そういう事は早く言ってぇぇぇぇぇ」


 優子の意識が次の世界を求め暗い宇宙のようなところを跳んでいく。


 闇の中でひときわ大きな爆発が起こった。

 前の世界アルガドラスの星が消滅した瞬間であった。


 星と共にアルガドラスの者たちが消えていく。


 アルガドラスの者たちが持っている装備、お金、知識、スキル、そういったモノも、消えてゆこうとしていた。


 本来、人が死んでもモノはなくならない。

 父から子へと、母から娘へと引き継がれていくのである。

 それがたとえ不要な物であっても、子は自分の意思の選択で初めて放棄できるのである。

 そう、それが俗に言う相続放棄と言うものだ。


 しかし、世界が滅びると、引き継ぐ者も消滅する。

 そう、皆が一斉に消滅するのだから。


 その時、宇宙を飛ぶ優子の固有スキル『貧乏性』が発動したのだ。


 貴方のおうちに、いらないモノはございませんか?

 要らないものがあれば何でも引き受けます!

 御用の方はコチラまで!0120ユウコ引っ越しセンターへ!


 消えゆく装備、お金、知識、スキルそういった受け取り手のないモノたちが暗い宇宙へと動き出す。

 いわゆる孤独死した老人の遺品の回収の如く、優子のもとへと集まってきた。

 それは、優子が好むと好まざると、全てのモノである。


 消え去った世界アルガドラスに存在していた、犬のウ●コ、オッサンのパンツ、そして、世界が滅ぶ瞬間に使われていたであろう使用中のコンドームまでもである。



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【現在の優子のステータス】


 氏名 木間暮優子

 年齢 17歳

 職業 転生中 ……

 レベル 転生中 ……だって


 体力 転生中 ……ちょっと待ってよ。

 力 転生中 ……だから、いま書き換え中だって!

 魔力 転生中 ……もう少し待ってよね。

 知力 転生中 …………

 素早 転生中 ………………

 耐久 転生中 ……………………

 器用 転生中 …………………………

 運  転生中 ……待てって言ってるだろ!

 固有スキル 貧乏性:御用の方はコチラまで!

 死亡回数 5……ピコン! 増えたぁ!


 右手装備 スマホ(ネット接続付き)

 左手装備 スクールバック

 頭装備  転生中 …………

 上半身装備 転生中 …………そんなに見つめても何も出ないからね!

 下半身装備 転生中 ………………うん?

 靴装備 転生中 ……あれ?……優子さん、もしかして、裸?


 攻撃力 転生中 ……

 守備力 転生中 …………


 所持金 転生中 ……

 パーティ 転生中 ……そろそろ、書き換え終了だよ!


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