第13話 女神の祝福(2)

 プアールは超貧乏である。

 女神なのに貧乏っておかしくない?


 いや、その考えは明らかに違う。


 女神と言えども最初から金持ちなどあり得ないのである。

 生まれた時は裸一貫。

 人間と同じ。

 そこから、たゆまぬ努力で金を掴むのである。

 お金があれば、勉学にも励めるというものだ。

 そして、その努力によって上級神となり、公務員になれるのだ。

 そう、女神の世界でも公務員は安定職。

 住宅ローンも即OKの超優良職業なのだ。

 しかし、その公務員、金がなければ、実力でなるしかありえない。

 世の中、金がない者にもチャンスはあるのだ。


 だが、金も実力もないものはどうすればいいのだ?

 そう、このプアールのように、お金も実力もない女神はいかにして上級神への道を歩めばいいのであろうか?

 プアールが出した答えはお金であった。


 やっぱり、お金ですかぁぁ?


 お金が一番! お金があれば何でもできる!

 この裏道を行けばどうなるものか、危ぶむなかれ。

 危ぶめば拾う神なし。


 踏み出せばその一足が一蓮托生。


 迷わず行けよ! 行けばわかる!

 いくぞぉぉぉ!

 1・2・3!

 だっぁぁぁぁ!!


 意味もなく拳をあげるプアール。


 そう、プアールは、お金を貯めて、上級神へみつぎまくり、裏工作で公務員へなろうとしていたのである。

 しかし、金をためるにしても実力のないプアールを雇ってくれる会社などあるわけはなかった。

 日々、求人情報を読み漁るプアールの目に一つの公告が目に入った。


 未経験者大歓迎!学歴不問!年齢不問!

 優しい先輩が教えるから超安心!

 若い仲間が中心のアットホームな会社です。


 お給料はあなたの頑張りを評価します!


 ――イイかも!

 そうそれが、13歳のプアール、megazon配送センターのバイトとの出会いであった。


「……ここがどれだけブラックか知らないでしょ! 一日の労働時間は残業込みで23時間。もらえる給料は職能性と言うことで固定給! 注文を受ければ5秒以内に即配達。運転免許を持たない私は、ママチャリですよ! ママチャリ! おかげで、5kgも体重がやせましたよ!」


「何が女神の祝福よ! えらそうに! 一体あなたが何をくれたというのよ!」

 優子は怒鳴る。


 しかし、それは致し方無いことなのかもしれない。


 なぜなら、プアールが優子に与えた女神の祝福は、どれも、ひどい。



 最初、この世界に連れてこられた時の祝福が『固有スキルの貧乏性』!

 1回死んで2回目のチャレンジでは『megazon初回登録プレゼント ゲームチャレンジ券5枚セット』

 3回目のチャレンジでは『旧年式型落ちスマホ』

 4回目のチャレンジに至っては『スマホのバッテリー(充電済み)』

 この前の5回目のチャレンジでは『いっぱい入るスクールバック』


「なんなのよこれ! これのどこが女神の祝福よ! 大体、スマホってネットにもつながらなかったら意味ないじゃない! 馬鹿なのバカ!」

「スマホは、あなたがいるって言ったからじゃないですか! あれ、結構高かったんですよ! あと58回も支払残ってるし……まして、バッテリーだけって、結構お金かかるんですからね! だから、わざわざ自作したんですから!」

「それに何? 『固有スキルの貧乏性』って、いやみ! 私がコツコツお金を貯めるのが好きだから、その嫌味!」


「いえ……そういうわけでは、なんというか、その、私が買えるのが、このスキルしかなかったもので……」

「あんた、女神様じゃないの! 女神さまならもっとすごい物とかくれるんじゃないの!」


「すみません。私、貧乏なものでして。そこでなんとか、一発あてようと、あなたとこのゲームにチャレンジしたのですが……余計に貧乏になって……すみません。すみません。すみません」


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