第11話 激闘!アルガドラス!

 ほんの数分前までは、勝ち誇りヤドンを見下していた優子。

 しかし、武器を持たぬレベル1の優子では、いくら弱ったヤドンと言えども勝てる相手ではないのは分かった。

 しかも、優子は、ヤドンを倒せるような装備を一切持ってきていなかった。



 この世界に転生した優子は、まず初めの街で、ホストクラブで豪遊三昧、ついには未成年者と言うことで、追い出され、することがなく冒険に赴くことになったのである。


 何で女子高生でホストクラブ?

 大丈夫、優子が飲んでいたのは終始、オレンジジュースであったのだから。


 うん? 問題はそこではない?

 なになに、そのお金はどうしたのかって?

 それがですね、優子の持つスクールバックには、夢は詰まっていないけれど、いろいろなものが詰まっていたのです。


 装備とか、お金とか、お金とか、お金とか、すごいお金とか……もう、ウハウハ

 どうして、スクールバックの中に、そんなにいろんな物が入っているのかって?

 それをお話しするには、少々時間をさかのぼらなければなるまい。


 ちょうど17年前、優子は木間暮家の長女として生まれた。

 この時、父と母と5つ上の兄の四人の家族になったのである。

 優子が生まれて、まず最初にしたことは、母乳を求めて泣きわめくことであった。


 えっ……さかのぼりすぎ?

 しょうがないなぁ……

 じゃぁ、それでは……あんなことや、こんなことがいろいろあって、ドカン! ドキューン! とこうなって……


 5回目の優子の死、すなわち、ゲームオーバーは、優子が前にいたアルガドラスの世界消滅にもたらされた。


 巨大な山脈のような機構式兵器の鬼蜘蛛によって発せられた高熱線がアルガドラスの地面を焼き刻む。


 目の前に広がる灼熱の炎。


 全ての物が、熱で溶け落ちる。


 赤き絶望の世界が広がっていた。


 まさに、そこはこの世の地獄。



 ――なんで……魔王を倒したはずなのに……

 呆然と立ち尽くす優子は思う。



「やめてぇぇぇぇぇぇ!」

 優子は叫んだ。

 そして、考えるよりも先に体が動いた。


 鬼蜘蛛に向かって突っ走る優子。



 ――私が、この世界を救うんだ! そして、私は家に帰る!


 鬼蜘蛛の高層ビルの様な大きな足が動くたびに、激しい機械音が鳴り響く。

 絶望する人々の悲鳴を楽しむかのように、鬼蜘蛛から大きな笑い声が聞こえてくる。


 実に嫌な笑い声、不快だ。

 しかし、この笑い声、どこかで聞いたことがあるような。

 いや、今は考えまい。

 目の前の敵に集中だ。


 優子は聖剣エクスカリバーを下段に構え疾走した。


 「罪もない人々を殺すなぁぁぁぁぁあ!」


 優子のエクスカリバーが白く、そして強く輝いた。


「我が最終奥義! ゴッドスラッシュゥゥゥゥッゥ!」


 そう! 優子こそ、この世界の最後の勇者なのだ!

 踏ん張る優子の左足が、砂埃を立てて滑っていく。

 両手でエクスカリバーに力を込める。


「これでもくらえぇぇぇぇぇぇ!」


 しかし、次の瞬間、優子の視界が暗転した。


 ――えっ!?

 何もわからない優子。


 ――私はどうしたの……


 そう、優子は、エクスカリバーを振りぬくその直前、死んだのだ。

 鬼蜘蛛の足で、プチっと潰されたのである。


 そう……いとも簡単に優子は、死んだのだ。


 アルガドラスの最後の勇者優子、ココに死す。

 享年17歳。



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【ちなみに死ぬ前の優子のステータス】

 氏名 木間暮優子

 年齢 17歳

 職業 勇者

 レベル 90


 体力 897,555

 力 999

 魔力 800

 知力 20

 素早 800

 耐久 200

 器用 200

 運  7

 固有スキル ゴッドスラッシュ:どんな敵もいちころよ♡

 死亡回数 4


 右手装備 聖剣エクスカリバー

 左手装備 使えないスマホ(ネット接続、通信不可!)

 頭装備  勇者の兜(本物です)

 上半身装備 勇者の鎧(本物ったら本物)

 下半身装備 勇者のスカート(ミニよミニ!)

 靴装備 勇者のブーツ(もう、だから本物よ!)


 攻撃力 999

 守備力 999


 所持金 300

 パーティ なし


 まあ、死んじゃったから意味ないけどね。

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