第03話 考古学と遺品 (※BL要素有り)

 姉ちゃんが、いつからそう思っていたかは知らない。

 だが、姉ちゃんが高校3年生の時、

「私、考古学を専攻する!」

 と言って、その分野のある大学を受験しようとしていた。

 しかし、残念ながら、共通一次で落ちた。


 姉ちゃんの名誉の為に言っておくが、試験の問題の方が間違えていたのだ。


 最も、問題文が間違えている問題に食い下がるより、とっととその問題を飛ばして次を問けばいいものを…と、僕は思ったが、それが姉ちゃんの性格なのだろう。




 それはそうと、僕は、どうやらゲイだったらしい。

 僕のパートナーは、やもめになった先輩だ。


 先輩が、その奥さんだった女性と夫婦であった頃、僕は、御飯を御馳走になったり、時には泊めてもらったりと、本当によくしてもらっていた。

 だから、彼女が不慮の事故で亡くなった時は、本当に哀しかった。

 脱殻ぬけがらの様になった先輩を支えている内に、一緒に暮らす事になった。


 さて、先輩の奥さん──朱里さんは、所謂いわゆるキャラクター物が好きな女性だった。


「あんた、こういうのを芽衣にあげようとするの、やめて」


 僕が、朱里さんの持っていた某キャラクターを象った小銭入れを持っていった時の事だ。

 芽衣というのは、僕の姪っ子だ。

 姪の芽衣…フッ。ああ、駄目だ。今は、そんな事を考えてる場合じゃない。


「なんで? 女の子は、こういうのが好きなんじゃないの?」


「だって、それ…朱里さんの、でしょ」


「うん、まあ。そうだけど?」


「言ちゃあなんだけど、やっぱり、亡くなった人の…っていうのは…」


「え? でも。朱里さんだって、捨てられるより、大事に使ってもらう方が喜ぶと思うけど…」


「でも、ねぇ。ほら、“念”とか…」


「いや。そんな人じゃないし…」


 もし、朱里さんがそんな女性なら、先ず、僕が、呪い殺されているだろうよ。


「だって、私、朱里さんと会った事ないもん。知り合いだったら、そんな事言わないけどさぁ」


 あれ?

 姉ちゃんってそんな事を気にするタイプだったっけ?


 そして、僕は、姉ちゃんが、考古学を専攻したがっていた事を思い出した。


「ちょっと待て、姉ちゃん。確か、姉ちゃん、考古学志望だったよな。考古学なんて、モロそういう物を発掘とかするんじゃないか?」


そう言った僕に、姉ちゃんは、


「一緒にしないで」


と、言った。



僕には解らない。

姉ちゃんにとっての発掘物と遺品の違いが。

“念”というなら、発掘物の方がこもってる気がするんだ。


だが、姉ちゃんに口で敵うわけがないので、もう、いっか。

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