もう1人の新入り
部隊のミーティングルームに向かっていると
後ろからものすごく地響きが近づいてくる。
「おい!お前……リト・ソーザンドか?」
見るからに大将の様な、ガタイのいい男性が
ガタイ相応の声で話しかけてきた。
「は、はい」
あまりにも急で大音量なもんだから思わず声
が裏がってしまった。恥ずかしい。
「これは運命か、伝説のルーモンド・ソーザン
ドさんの息子が我ら部隊に!」
「伝説?」
「そうさ!伝説でな。それは……」
男が話始めようとした時、SWCのミーティン
グルームから少しツリ目の女性が割り込んで
きた。彼女もなかなかいい勝負の声量で話し
かけてくるではないか。
「おい、お前。その事は言うなって長様に言わ
れてんだろ?あぁん?」
「ひっ!ゴメン、つい」
ひと目でわかる、この2人の上下関係。先程ま
で男を説教していたツリ目の女性はこちらを
見ると笑顔で話しかけてきた。
「ごめんねー、リトだよな!私はリーナン、こ
の隣のうるさい馬鹿はドーラガだ。歳はどっ
ちもリトの5個上だ。よろしくな」
「はい、よろしくお願いします」
あのやり取りを見る限り、リーナンはドーラ
ガと同類で勢い任せの怖い人かと思えるが、
ニカッとした笑顔はとても綺麗で多分、口は
悪いものの、根はいい人っぽい。
少しリーナンの大人な対応に釘付けになって
いると好きを狙ったドーラガが僕にこっそり
耳打ちをした。
「リーナンが優しいのは最初だけだ。だから
よ、今のうちにリーナンのお気に入りに入っ
た方がいいぞ!本当に最初だけだ……っっ
っ!」
元から声量あるドーラガは自分なりに小さな
声を出したつもりだったが、しっかりリーナ
ンに丸聞こえだったみたいだ。彼は最後まで
言葉を言うことなく耳を引っ張られていた。
「最初だけだとぉ?リトはお前と違っていい子
だからそんなことしねぇよ!馬鹿か」
そのリーナンの言葉にくそぉ、と1人ドーラガ
がむしゃくしゃしてるとミーティングルーム
から声がかかる。
「そろそろミーティングだぞー」
「「はい!」」
喧嘩してたんじゃないの?と疑うくらい綺麗
に2人の先輩は声を合わせる。どんな状況であ
れ、しっかりけじめが付けれてる所を見る
と、本当に国のトップなんだなと感じた。
SWCミーティングルームに入ると男子3人、
女子3人の計6人が待っていた。
「「ようこそ!我らがSWCへ」」
みんなが声を揃えて歓迎してくれた。が、1人
困った顔の女性がいるのを僕は見逃さなかっ
た。
「盛り上がってるのは良いけど、今年SWCに来
る子は2人って聞いたんですけど」
声を張ったのは、クールビューティーの言葉
を象徴させる美しい容姿の女性先輩だった。
「へ?」
そう、ここは知っての通り国の中で1番の入隊
難関な機関。3年に1入ってくればいい方な程
である、だからこそ、まだ1人いることに先輩
たちは驚きが隠せなかった。実際、僕も、僕
だけだと勝手に思い込んでいた。
ギィィ、ゆっくりとミーティングルームのド
アが開かれた。開いたドアの先に立っていた
のは申し訳なさそうな顔の女子だった。
一見、クールにも見えるがどこか幼く、綺麗
な金髪の女子だ。
「館内で迷ってしまって、遅れてすみません」
先程の困った顔を1ミリも崩さず、頭を下げる
彼女に対し先輩たちは、ニヤリと顔を見合わ
せると声を発した。
「「改めて!ようこそSWCへ」」
キオクが無くなるってしってても。 鴻上ロジ(kougami roji) @Kougami__ro
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