通称SWC
ドクン、ドクン、今日はやけに心臓の音が聞
こえる気がする。カーテンを開け、朝日を浴
び、深呼吸をしてみたりするものの、この鼓
動が落ち着くことはなかった。
仕方がない、今日は待ちに待った就任式の日
だからである。多分、この式が終わるまでこ
の鼓動はどうにもならないのだろう。
俺は小さい頃から父の影響で戦士になるのが
夢だった。凄くありきたりな理由かもしれな
いが、俺の心を動かす理由に変わりはない。
就任式は新入りが綺麗に1列に並び、「長」(お
さ)と呼ばれるこの国の隊のトップが1人ずつ配
属の部隊を告げ、任命をする。
司会者の声が静まり返った演説ホールに響き
渡る。
「次の者、No.10528……リト・ソーザンド」
「はい」
ちなみに、ナンバーは戦士になるための育成
学校を卒業した人に付けられる番号、つまり
は僕は10528番目に卒業した人って訳だ。
緊張で強ばった表情を無理に凛々しくみせ、1
歩ずつ長の前へ歩いていく。
そもそも、長様とこの距離で出会えるだけで
奇跡の域なのだ。"国のトップクラスの長様に
一生に一度でも会ったらその人は幸運の持ち
主"だなんてジンクスが流れているレベル。そ
れだけ国民から尊く思われてるって証拠だ。
「リトか……大きくなったな」
初対面であるはずの長様がそう口走った。
「え、っと」
「あ、すまぬ。知らんじゃろうが、私は君の父
に大変世話になった時期があった。その時お
前の父は微笑みながら小さかった君を見せて
くれたことがあったのだ」
「そうなんですね。すみません、僕は父のこと
よく知らないので……」
父が死んだのは17年前。父の噂は聞くが、記
憶はほとんどなく、噂をほぼ鵜呑みにするし
か父の姿を頭に作ることが出来なかった。
とてもあやふやな父の像である。
「君の父は偉大であった。君もそうであると私
は信じる。ルーモンド・ソーザンド、君の父の
所属していたSWCに君を推薦する。いや、任
命する」
SWCとは、この国の隊の中で最も入るのが難
関とされている特殊部隊の通称である。知能
だけでなく、身体能力共にオールA出ない限り
入れない超エリート部隊なのだ。なぜ、平凡の
象徴たる僕がSWCに選ばれるのか。さすがに
偉大であった父の血を引き継ぐものとして期
待する気持ちも分からなくもないが、あまり
にも重荷でプレッシャーでしかない。それ
に、完全に親の七光りな状況のためあまりい
い気がしなかった。
しかし、先程の長の発言からすれば、僕に拒
否権なんて存在はしなかった。
「リト・ソーザンド……これで良いか?」
「はい」
こうして僕のSWCの入隊が決まった。
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