第4話 破壊された町並み 直し

「優、そっちいったわよ」


彩夏は目の前を走る異形の怪物を追いかけながら、肺に残るありったけの空気を吐きだして叫んだ。


「任せて、ったあああああああ」


優は彩夏の叫びが聞こえるとすぐ、十メートルはある瓦礫の山から愛剣を振りかぶりながら飛び降りた。


「Gya」


重力を味方につけた優の一撃にバジリスクバイスは断末魔を上げることもできず、その緑色の体を一刀両断された。


「おつかれ、優・・・・・・う」


見事な怪物の二枚おろしを見せてくれた黒い少女剣士を労おうと近づいていき、その足が止まった。


「うえええ、さいさい」


「あんた、全身びちょびちょね。黒いコートだから気付かなかったわよ。」


優の体は今さっき真っ二つにした怪物の血液やら脳漿やらでべとついており、臭いもかなりきついものがあった。


「うええん。」


目を潤ませながら彩夏を見る優。


「はやく、オラクルを解きなさいよ。」


「うん、わかった。」


すると、優の体を黒い光の粒が包み込み、一瞬光ったと思うとダークヒーロー風だった優はOL風パンツスーツに衣装チェンジしていた。


「服は大丈夫だけど、髪とかに着いてないかな」


くるっとまわって全身を確認した後、髪を一束つかんで鼻に近づけた。


「うーん、大丈夫みたいだけど、お風呂入りたいな。」


「町がこんな状況なんだから我慢しなさい。」


「うう」


辺りを見渡してみるが、優の目に入るのは瓦礫の山だけだった。


「オラクルもいつまでも使えるわけじゃないし、私も自前のスーツに変えようかしらね」


優と同じく彩夏の体を赤い光が包み込み、アイドル風衣装からいつものワインレッドのスーツへ彩夏も衣装チェンジした。


「ふう、これでやっと落ち着けるわ。それにしても優の神衣は過去にトラウマを背負った戦士風なのに、なんで私のはあんなふりふりがいっぱい付いたバカっぽい衣装なのよ。私も優みたいなカッコいいいのがよかったわ。」


「ええ、さいさいのかわいいじゃん」


彩夏もかわいいものが嫌いなわけではないのだが、さすがに一人だけふりふりの付いた衣装を着るのは恥ずかしすぎた。


「優も似たような衣装だったらよかったのに」


「仕方ないよ、神衣ってその人に合わせた形で生成されるらしいし」


「だからなんでそれで、あんなふりふりがでてくるのよお」


「あはは、さいさいも乙女チックなところがあるってことじゃない・・・・・ん、さいさい携帯鳴ってるよ。」


無言でじっと睨んでいた彩夏だが、優に言われてすぐポケットから携帯を取り出した。


「ん、この番号は、秋からね。」


「あきあきから」


「もう向こうは片付いたのかしらね、ん、もしもし秋、うん、うん、そう、こっちは片付いたわ、うん、うん、わかったわ、じゃあこっちで落ち合いましょう。」


「あきあきなんだって」


「向こうは逃がしたって、で、こっちの様子を確認するために電話してみたら二人とも繋がらなかったから一人で応援に来てくれてる途中だったんだけど、こっちはもう終わったって言ったら春樹も交えて一度こっちで落ち合おうってさ。あと三十分ぐらいしたら来るんじゃない」


「ふーん、あきあきだったらビューンって来れるのにね」


「秋一人なら、ね、なんで同じようなオラクルなのにここまで性能に下がるのかしらね。」


「はるはるだって、すごいよ・・・・・・時には」


「そんな困り顔で言われてもね、まあ春樹もかわいそうっちゃ、かわいそうよねずっとあの完璧超人と一緒にコンビ汲んでるんだから。・・・まあ、私はあんまりそういう経験はないけど」


「ん、なんか言った」


「別に、それにしても本当何にもないわよね」


このまま会話を続けるのはまずいと考えた彩夏はすぐに話題を変えた。


「そうだねえ、昨日までいろんな建物が周りにいっぱいあったのにね。」


「見渡す限り瓦礫の山ね、優が落ちてきた瓦礫の山も元は金持ちしか入れないいけ好かないタワーマンションだったのに今じゃそこら辺にある瓦礫と何にも変わらないんだもんね。」


彩夏と優はそろって一際高く積まれた瓦礫の集まりを見上げた。


「こうやって見てるとなんか瓦礫の大将みたいだね」


「ま、こんな状況にもなっても態度がでかいのは人間と一緒みたいだけどね」


あはは、と困った顔で笑う優を見ている彩夏の足元に小さな石がぶつかってきた。


「ん」


一つなら偶然と思える出来事だが、続けて彩夏の足に三個の石がぶつかってきた。


「ん、これって」


「さいさい、ジャンプ」


突然の聞こえた優の焦った声に驚きながらも相棒を信じ彩夏は頭から瓦礫に突っ込む勢いで横に飛んだ。


「Gyaoooooo」


彩夏が飛んだ後すぐに彩夏が立っていた場所に大きなミミズのような化け物が地面を突き破って現れた。


「これって」


「あきあきたちが追ってたワームバイスじゃない」


「なんでこっちに来んのよ」


「Gyaooooooooooo」


青いまだら模様のバイスワームは天を仰ぐように背を反らすと、鼓膜を破裂させんばかりに大きな咆哮を上げた。

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W 英雄の君と破壊者の俺 下書き 連載版 @maow

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